第40話  エルドラン要塞決戦準備

               シンカ


 エルドラン山には、世界中から人々が集まっていた・・・でも少ない、せいぜい10万人ってところだろうか。もうこれだけしか人間が残ってないということではなくて、ほとんどの人間は見捨てられたってことだろう。ワタシ達だって可能な限り人をかき集めたけれど5000人を下回るくらいだ。

 それぞれにエルドランの牙と呼ばれる各堡塁に陣を張った。

エクセから逃げ出して来た人々が、鹵獲したエスツーを持ってきていた、エスツーにはアサルトライフル程度の火力では通用しない。

 エスツーの構造はゴムのような新素材の外皮、アラミドの防弾外殻、その内部にまたゴム素材、その内部に機械が埋め込まれていた。とにかくやたらめったら頑丈だということははっきりした、確かにこれじゃバルカン砲か徹甲弾でも打ち込まない限りぶっ壊せそうにない。

 機械は非常にシンプルで明らかに大量に複製することを優先している構造をしていた。肝心の回路とプログラムはまったく見たことも聞いたこともないシンタックスと文法構造を持った未知の言語で記述されていて短時間では到底解読不能だ。

 そしてこいつは驚くべきことに通信機能を持ってなかった、本当に動いてる者、熱を持っているものを無差別に攻撃するだけなんだ。でもやっぱり何か止める方法があるはずだ、そうでなければ、やがてディヴァインランドの人間だってこれに殺されてしまうじゃないか・・・、もう殺されてしまったのではないか?と思うとゾッとした、世界を道連れにするつもりか?


 災厄の白き炎、燎原の野の放たれ・・・


ワタシ達はコトバを失ってしまった、こんなのに勝てるんだろうか・・・

nano「つまり携行銃程度ではストッピングパワーにもならないしゴムが電磁波とかを吸収するから、回路を焼き切ることも困難、電磁波兵器も効かない、もちろん刀でぶった切るなども問題外、レーザー、チェーンソーもゴム素材にはかかりが悪いから駄目。海も泳げるくらい水にも強い。

 ならば取るべき作戦は一つ、沿岸の軍艦はありったけ徹甲弾で牽制したあと自爆して少しでも数を減らす、第三外壁はすべてケロシンで燃やしてファイアーウォールを作り第2外壁の星型堡塁の各銃座に攻撃型ヘリからぶんどってきたバルカン砲を二機ずつ設置、十字砲火で牽制しつつ、ギアは遊撃軍としてハンマー装備でエスツーをぶっ叩く、これで決まりね。人型ギアの乗り手は何人いる?」

nanoがペロキャンを舐めながらスラスラと作戦を建てた。

エクスからの脱出者「・・・あの、この人は何者ですか?モルトケ将軍の生まれ変わりかなにかですか?」

nano「言いたくないけど仕方あるまい、ワタシが幻のプレイヤーnanoちゃんだよ」

集まっていた人間が、うぉうわ~~~!!!と波を起こした。場の雰囲気が一変してワイワイと胴上げが始まりそうな雰囲気だ、もう勝ったとでも言わんばかり。ギアのワールドチャンプのタイトルは一国の王族などよりも重要なタイトルらしい。そうか、こういう反応をしなきゃいけなかったのか。

nano「はしゃいでる場合じゃないよ、一秒も無駄にしないで準備にかかれ、あと化学が得意な人たちを集めてこのゴムの素材を硬質化出来ないか色々試して、衝撃に弱くなるように」

シンカ「・・すごいね、なんなのその指揮能力」

nano「あのねぇ、ゲーマーってのはΩだけやってるだけじゃないのよ、RTSから海戦ゲーム、ボードゲーム一通りはこなしている。

 歴史上のすべての戦場もファンタジーの戦場も、宇宙戦争みたいなSFの戦争も一回は顔出してるんだから、エルドラン要塞の籠城戦なんて十八番よ。

 前線で暴れるだけの脳筋プレイじゃ戦争は勝てないことくらいわかりきってる、アホはゲーマーにはなれんよ。シンカは化学部の統率、コタンは非戦闘員を中央内部殻に誘導して、はいさっさと動く!

 はい、ギアのプレイヤーは集まってください!この作戦の肝はバルカンの機銃にある、エイムが得意な人間から順番に配置するよ・・・」


 nano指揮官のもとに着々と決戦準備が整えられていった・・・、エスツーの外皮のゴムは、王水で弱体化出来ることがわかり、第三外殻の外に王水の放水車を配置して、いざござんなれ、と決戦準備は整った。


 

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