第30話 ネオ・リベレーターズ

               シンカ


 イタタ・・体中引き裂かれるくらいイタい、もう二度とギアにおんぶされて飛ぶのはごめんだ・・・、ネオリベの基地は、廃線になった地下鉄にあった。ワタシもそうだろうとは思った、ギアの唯一の弱点は電波の届かない地下深くでは使えないってことだ。Matrixの電波が通らないところは少ないけれどこの地下鉄は絶好の隠れ家だ。

コタン「お久しぶりですシンカ先輩」

シンカ「あぁ、うん」

ワタシは全然覚えてない、こんな子だったっけ。コタンはグレージュのおさげ髪のメガネっ娘、地味な感じの子だ。

コタン「紹介します、めっちゃ強いギアのプレイヤーのnanoさんです、ワタシ達に協力してくれてます」

nano「ちっぴ~♪」

nanoと紹介された女の子はセーラー服を着たオレンジ色の髪の長髪をポニーテールにした女の子で、ガムをくちゃくちゃ食べてながらピースサインで挨拶した。ギアのプレイヤーっていうのはみんなこういう感じなのだろうか。プロのゲーマーは反射神経が最重要だからピークは普通のスポーツよりもさらに短く、14~17才って言われてる。

nano「その反応ってことはまさかまたnanoちのこと知らないやつじゃん、ワタシワールドギアの第四回チャンプだよ、経歴一切不明の幻のプレイヤー、こんな激カワJKだったのぉ!ってぶったまげて白目むいて失禁するくらいしてほしいものだけど、情報分析官のクセに常識が全然無いのな~」

シンカ「知ってはいるよ、でも第四回は優勝大本命が事故的に負けて、たなぼた的な優勝だったんじゃなかった?」

nano「・・・あ~ぁこのおばさん絶対言ってはいけないこと言ってしもたなぁ・・」

コタン「ちょっとちょっと!喧嘩はやめてください!そんなことしてる場合じゃないんです、シンカさん、端末持ってます?」

シンカ「3つあるよ」

コタン「3っつも!?やったぜ、でも全然足りません、とにかくMatrixにつながる端末をたくさん集めて情報を共有していかないと、電脳OSの端末をMatrixにつながるようには出来ないんですよね?」

シンカ「うん、3万回くらい同じこと言ったけれどMatrixは量子暗号通信だから、端末側からハッキングは出来ない、それは時間を巻き戻すくらい物理的に無理、あと一個ずつの端末にセキュリティナンバーが割当られてるから、認証端末を増やすことも出来ないよ」

コタン「じゃあどうすりゃいいんですか?」

シンカ「Matrixから認証されたSaintOSの端末を使うしかない・・、ただ認証された端末のスレーヴにして、画面を同期させることくらいなら出来ると思う、電脳OSのOSを換装して、一方通行だけれど伝言板には出来るかな、何も無いよりマシでしょ」

コタン「すごい!じゃあ早速おねがいします、電脳OSの端末は腐るほどありますから、発電機もいくつか借りて来ました」

シンカ「借りてきたのね・・・ちなみにネオリベには何人くらい人がいるの?」

コタン「えっと・・・、3人です」

シンカ「3人!じゃああと1人ってこと?」

コタン「いや、先輩を入れて三人です」

シンカ「まぢか・・・」

nano「三人いりゃたいていのことはなんとかなるっしょ、兵隊、メカニック、ロジ担、完全なデルタ構造じゃん、デルタ構造は一番完全な構造と言われておる」

シンカ「そやね・・あと衛生兵がいれば完璧ね」

なんだかこの子はやけにポジティブだし的を得たこといいよる、強いな

シンカ「とにかく情報を発信することが大事ね、情報こそが最強の兵器」

コタン「水を確保したいです、水を配ってるってことを発信できれば人を集められると思うから、今は借りてきた自販機のミネラルウォーターとソフトドリンクでなんとかしのいでますけど」

シンカ「体制側にみつからずにね、難しい話だ、なにか暗号処理したメッセージにしないとね、下水処理場は?」

nano「げぇっ・・・下水飲むの?」

シンカ「下水処理した水は飲んでも問題ない、普通の人はこの人みたいに嫌がるから誰も確保してないと思う」

nano「ワタシはコークでいいや、あとこの人じゃなくてnanoちゃんね、呼び捨てでいいよ」

シンカ「ちなみになんだけどnanoはギアをどうやって手に入れたの?もともとSaintにいて裏切ったの?」

nano「買った、優勝賞金、500億で」

シンカ「500億!?あれって一体そんなにするの?」

nano「そんな驚くこと?ガイスト(操作コンソール)とセットだからお買い得だよ。戦闘機だって1機100億くらいするでしょ?」

シンカ「じゃあ無限にスペアがあるってわけじゃないんだね、わかった、部品を借りてきて、簡易的浄水装置を作ってみる。部品を集めて来て、必要なリストは後で転送する、ワタシは端末の改造をやっておくから」

コタン「了解です!さすがうちの学校1の秀才!頼りになります!」

ひさびさにそれを言われたな、今まで一度も役に立った感じはなかったけど初めて誰かの役に立った気がする・・・普通に嬉しい。



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