第27話 軍学校

               アルカ


 エクセとオレはインペリアに移住し、軍学校へ入学した。軍学校は移民を受け入れてくれる数少ない選択肢の一つだった。軍学校というのはどこでも結局そうなのだが、いぢめの総本山といった場所で、もちろん移民なんていうものは、典型的な差別といぢめのターゲットで、エクセもオレも、最初はこてんぱんにボコボコにされた。そして上級生のホモのマッチョからもどうやって逃げ回るかに知恵を絞らないといけなかった


 いぢめから脱出する方法はたった一つ、徹底的に復讐することだ。3倍返しなどでは足りない、千倍返しくらいだ。ようするに拷問にかけるわけだ、短時間ぶちのめしたくらいではまた反撃されることになる、もう二度と反抗しようという気持ちが起こらないくらい、少しずつ念入りに徹底的にやらなくてはならない。人間は短時間の苦痛には結構どんなことでも耐えられる、耐えられないのはそれが終わらないことなのだ。

 どうして拷問というものが生まれて、長い間続けられたのかその意味がわかる、拷問は敵意を持つ人間を殺さずに大人しくさせる唯一の方法なのだ。簀巻きにして逆さ吊りにし、溺死寸前まで何度も何度も追い込む、最初の一時間くらいは抵抗する、しかし夜中中それを繰り返せば、発狂するか心が折れる、そうした人間は不思議なくらい、もう二度とこちらにちょっかいを出そうとしなくなる。

 最初にオレをいぢめた奴らを片っ端からトーチェ(拷問のこと)にかけ、ホモの先輩を何人か性転換させると、もはや誰もちょっかいを出そうとはしなくなった。そうすると軍学校からは大人しくなんでも言うことをきく目の死んだ理想的兵隊と、とりあえず誰でも監禁して拷問にかけて言うことをきかせようとし、人をハエみたいに殺す理想的下士官が卒業すると言うわけだ。


 軍学校は刑務所と似ている、なめられたらもう死んだも同然、力がすべてだといやってほど叩き込まれる。こんなところからまともな人間が輩出されるわけがない。

 オレは軍学校を卒業して、エリート(鬼畜野郎)のコースとされる、SNAKEに所属することになった。SNAKEはインペリアの軍事技術研究所のDARC直属の部隊で、ようするに秘密警察だ。エクセは外人傭兵部隊の下士官になったらしいが、SNAKEは秘密組織なので存在を抹消されるし行動も自由にならない、その後のエクセについての情報はほとんどなかった。

 オレの仕事はコミュニティアの情報スパイだった。要するにコミュニティアが開発している核融合炉の技術を盗んでこいという仕事だった。核融合炉なんてものは、コールドスリープ技術などと同じで、できるできると科学者は研究費目的に言いはするものの、結局永久に出来ない代物だと思われていたが、コミュニティアにはニーナ・ルーエル・ネイピアという天才科学者がいて、噂ではすでに完成間近になっているという情報だった。

 ニーナというやつは本当に天才らしく、さんざん手を尽くしてみたが、ついに一度も顔を見ることも出来なかった。本当にニーナという人物が存在しているのかどうかすら怪しいものだった。但し核融合炉の研究が進んでる、これは確実に確かなことだった。

 そのうちに三大陸間核融合技術提携条約なるものが締結されて、エクス、コミュニティア、インペリアが共同で核融合炉を開発することに決まり、オレの仕事は表面上無くなった。しかしなんの因果かその核融合炉の建設場所は、オレたちの故郷の殉教者島の地下だった。

 このプロジェクトは最初から最後まできな臭いことだらけだった、技術提携するといいつつ、コミュニティアは核融合炉の技術を一切公開せずに、施設の建設だけを他の国にやらせ、インペリアもエクスもキレそうになっていた。そしてようやく施設が完成し、コミュニティアから核融合炉の炉心が輸送されるという段になって、事件が起こった。

 

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