第14話 レムの革命ノート 正義について



ボクは違和感をずっと感じている。物事を論理的に考えることの出来る人間は、オトナになる過程で、何か違和感を感じるだろう。


全ての人間が、嘘をついてるんじゃないのか?という奇妙な感覚


全ての人間が間違っているという感覚


全ての人間が悪だという、直感


 でもそれはおかしい、全ての人間が悪ならば、それはもう悪ではない。それを悪だとするなら、野生動物は全て悪だと言ってるのと同じだ。

悪というのは寄生虫だ、単独では存在出来ない。他人の努力などで得られたものを掠め取るのが悪だ。1人だけしかいなければ悪は宿主を失って滅びるだろう。


 ともかく、全ての人間の言っていることがめちゃくちゃだと感じられる。めちゃくちゃなバカがめちゃくちゃなことを言ってるなら当然だ、と思うけれど、賢そうにしてる人間、あるいはこのヒトは正しいと一般的に認められてる人間の言うことも、支離滅裂だ。


 その疑問はあるコトに気づけば突然氷塊する


 国家、というのは規模の大きな暴力団に過ぎない。勝手な言いがかりをつけて、不当に権利を主張して、暴力的にそれを押し付ける。


 土地、というものが論理的に誰かに独占的に支配されるべきだということを誰一人説明出来ない。


 だから領土問題というものは話し合いでは絶対に解決しない、あらゆる人間が、何の根拠もなく暴力によって土地を支配してるにすぎないからである。

双方ともに何の根拠も無いのに、何も話し合うことなど出来るはずがない。

 国際協力などもうまく行くわけがない、いくつかのギャングが取り決めを作ったとして、ギャングの作った取り決めなど、すぐに反故にされるものと始めから決まっている。

 全ての人間は国家というマフィアに生まれつき強制的に所属させられてしまう。国家という暴力団体に支配されていない土地がこの星には無いからだ。南極北極も実質は国家に支配されている。


 そして暴力団体の指導者に、規律やルールを教えられる。けれどどこまで言ってもそれは暴力団のルールだ。どこまで規律が重んじられようと海賊のルールでしかない。

 ヒトを殺してはいけない!というルールを作っても、海賊はヒトから略奪するための組織だ。海賊の内部では、略奪を禁止する、他の海賊からは、略奪して良い。

というのが海賊のルールだ。その論理は当然破綻している。つまりは国家の決めるルールはすべてダブルスタンダードだ。

 それが違和感の正体だ、全ての人間が海賊や暴力団やマフィアに所属してるのに、平和だとか暴力反対だとか言っている。

 国家から離脱、することはできない、これも国家がマフィアだと考えればすぐに理解出来る。暴力団体は離反者を許さない

 なぜなら、離反者は必ず別のマフィアに所属し敵対することになるからだ。


ボクらが感じる、違和感の正体は、正義、が存在しないことへの違和感だ

 子供に将来の夢を聞くと、正義の味方、と答える子供が常に一定の割合存在する、なぜ正義の味方ってものが人気かといえば、現実には、正義が存在しないからだ。正義というものはファンタジーでしか登場しない。

 けれど正義は切望されている、それは間違いない。どこを探してもないこの正義ってものを、喉から手が出るほど求めているのだ。


 正義がなくたって死にはしない。ただどうあがいても、どれだけ努力をしても、何をしても、所詮自分はギャングでしかない、正しいことは何一つできないという認識は、消えない無力感と虚無感として、常に全ての人間に重くのしかかっている。常に略奪し、騙し、盗むことで生きていかねばならない。

 もちろんそれが好ましいと考える人間もいる、死ぬほど略奪し、宝を溜め込み、贅沢の限りを尽くして面白おかしく死ぬのだ、という者もいる。

 けれど一体なんでこんな殺戮や詐欺行為をずっと続けないといけないのだ?クソ面白くもない、うんざりだ。と感じている人間もいるだろう。



 唯一の正しき道は、国家を全て否定する殉教者としての道、つまり自殺だ。

国家を否定すれば、全ての人間を敵に回すことになる。たった一人でセカイの全てと戦わないといけない、普通に考えればそんなことは不可能だ、不可能だった・・・それを可能にしたらどうなるだろうか?

 

 国家の無いセカイとはどんなセカイなのだろう?

国家がギャングだとするならば、国家の無いセカイとはつまり、ギャングの無い世界なのだ、それほど荒唐無稽なことではない。

 けれどもっと突き詰めれば、ギャングのいないセカイは暴力の無いセカイなのだ。暴力の無いセカイ?想像することもできない。言ってしまえば生存すること、が暴力ではないのか?

 その昔共産主義者が平等な世界を作ると言って、革命を起こした。けれど平等な世界とは一体どんな世界なのか?誰も詳しくは知らなかった、考えてもみなかった・・・、考える手がかりすらもみつからなかった・・・あまりにも前例がなさ過ぎて研究材料が0だったから・・・



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