第8話 世界革命号
イズナ
なんだかキモいオタクがねっとりとこちらを見ていた、まぁオタクってみんなこういう目線か、普通に見てるだけなのかもしれない。レムは何を考えてるんだろう、情報を裏流しして、こういう噂とか陰謀好きな連中ににおわせをやってたけれど、まさか本当にこのオタクみたいな連中がこの革命に何らかの役割を果たすと考えてるんだろうか?事前に少しずつ情報を流してクッションを作ることで、何か良いことが起こるんだろうか?天才の考えることはわかりません。
カオルン東地区の軍事基地にあるジェロニモ戦闘ヘリはあと二機、同じコースを取るだろうか?ワタシの任務はとにかく派手に暴れることと、人材の回収。暴れるにしたって敵がいないのでは暴れようがない。なるべく派手になるように繁華街のほうを通ってくれるといいんだけど。
ローランで暴れるのは難易度が高い、平和ボケしていて、首都が攻撃にさらされてるというのになんの反応も出来ていない、戦車を通す道路も無ければ戦闘機のスクランブルもおそすぎる。原発のテロ対策もザルだし、換気システム的に毒ガスを流されたら全滅だ。
とりあえず屋上に上がって索敵をしてみるけれど何も目に入らない。
イズナ「ネル!敵が全然いない!暴れられないよ!後続のヘリはどこ?」
ネル「ヘリは整備不良で飛び立ててないようです」
イズナ「まぢか!なめてんな、インペリアに頼りすぎてるからこの体たらく、だめだこの国は、本当に危機になったらインペリアが助けてくれるとでも思ってるの?」
ネル「陽動作戦は切り上げて人材の回収に向かってください」
イズナ「せっかく武器もってきた意味が全然なかった!テストしたいのがいっぱいあったのに!」
「世界革命号」 右舷ソナー
ゴウゴウゴウ・・・
かすかだが機械的連続音が聞こえる、近くに別の船影は・・・?無い。デシベル計はだんだんとその機械音が近づいてきていることを示していた。
右舷ソナー「右舷ソナー、接近する機械音を確認、左舷ソナー確認願う、272度」
左舷ソナー「左舷ソナー、こちらも機械音を確認、音紋データベースに一致なし!司令部!本機に接近する正体不明の物体があります、接触まで残り2分14秒!」
カウントダウンが始まった、司令部からはなんの応答もない。この潜水艦が受ける初めての攻撃だ。この世界最大の核潜水艦に攻撃するというのは一体どういうことか、敵は理解しているのか?この南極海域は当然南極条約によって非武装地帯だ、それを承知で公然とこの船はそれを犯している。どうせ条約を犯したところでそれを罰する方法が何もないからだ。
司令部「・・・こちら司令部、本当か?なにかの間違いではないのか?」
右舷ソナー「確実に人工物です!水面から水中へ発射されました。対潜水艦魚雷かどうかは確認できません」
司令部「・・・、第一種警戒態勢!迎撃魚雷発射用意」
魚雷係「第一種警戒態勢了解!迎撃魚雷発射まで、3、2、1、発射!」
ソナーレーダーに迎撃魚雷と向かってくる正体不明の何かの影が映し出される、どんどんその距離が近づき・・・そして・・・ぶつか・・・ら・・・ない!!
右舷「!?外れました!というより」
左舷「避けた?どういうことだ?魚雷じゃないのか?小型潜水艦?本艦と接触まで残り47秒!」
司令部「急速潜航開始!」
操舵部「急速潜航開始します!」
魚雷のタイプがわからない、いや、本当に魚雷か?あんな動き方は不自然だった、まるでリモコンで操作してるような動きだ、しかし潜水艦にしては小さすぎる、人が乗っているような・・?人間魚雷?そんな馬鹿げた兵器が現代に存在するだろうか?
左舷「追尾してきます!避けられません!」
司令部「急速浮上!バラスト解放!衝撃に備えろ!」
ガオン!というバラスト投棄の衝撃がひびく、この時初めて死ぬかもしれないということを意識した、死ぬってのはこういうことなのか、なんて呆気ない。なんの感動も味気もない、ただドスンと真っ黒いもので体中が満たされたような感覚だ。
死のような沈黙が数十秒続いた、みんな放心状態だったのだろう、目には何か映っているのだがそれを情報として処理出来ない。やっと、正体不明の何かがレーダーから消えたことを脳が処理した
右舷「・・魚雷消失しました」
左舷「・・・こちらも消失を確認」
司令官「外れたのか?」
外れたならまだ影が残ってるはずだ、しかしレーダーのどこにも反応は無かった、デシベル計にもなんの反応もない、無音だ。
右舷「・・・わかりません、爆発しなかったのでは?」
司令官「わからないとはどういうことだ!」
どういうことだと言われてもこっちも困る、理解不能だ。幽霊だったとでも言えというのか?
司令部「各部被害状況を報告せよ!」
「機関部異常なし」
「操舵部異常なし」
「兵器庫異常なし」
「メインポンプ、バラスト展開により浮上しています・・・、なっなんだ!?なんだ!?がっ!?」
司令部「どうした!?応答しろ!副艦長確認へ行け!」
副艦長
メインポンプ室に行くと何か焼け焦げたような臭いがした、機械のショートする音というよりは肉の焼け焦げたような臭い。
バラストのほうに何人か倒れているのが見えた、その時黒で全身を覆った人間が階段からジャンプして飛び蹴りをしてきた。
それは人間じゃなかった、6Mほどジャンプしてワタシをドアに叩きつけたからだ、それは見たこともない武器を持っていた。刀身の無い剣みたいなものだ、それをワタシに突きつけた。
次の瞬間、紫色の光の奔流に襲われた。外からの光というより、眼球の裏から重たい光が飛び出していくような初めての感覚、やがてすべてが真っ白な光に溶けていった・・・
艦長
あっという間にそれはメインポンプ室から操舵室までやってきた。どうやら解放したバラストから船の中に侵入したようだ。そしてレーザーのようなもので操舵室のドアを焼き切った。
黒いフードを目深にかぶっている。全身黒っぽいゴムみたいな素材の服を着ている
艦長「何者だ!何が目的だ!核戦争になるぞ!必ず核で報復する!」
ところがまだ核による報復の連絡はしていない、何しろ敵が何者かわからないのだ、どこへミサイルを向けていいのかわからない。
一瞬の出来事だった、ワタシは床にぶっ倒れて身動きが出来なくなった、自分が死ぬというのを確実に理解した。なんてことだ、ワタシがこの船の艦長になるのにどれだけの努力をしたと思っているんだ、軍での階級を一つずつあげていくのに一体どれだけの時間、賄賂、接待、裏回し、膨大な努力が必要だったのかわかっているのか?それを!それをこいつは一瞬ですべて破壊しようというのか?無性に腹が立った、怒りは恐怖を凌駕する・・
ソアラ「制圧完了」
ネル「了解しました、GEARコントロールをこちらに移します、ソアラのオペレーションは完了、待機に入ってください」
くそ、どうにか最後に仕返ししてやりたい、ワタシがゴソゴソ動いているとそいつはワタシの方を見た、その時初めてそいつの目を見た。目が光ってるように見えた、ティール色のその切れ長の目を見た時、怒りがすべて消えて、ただ恐怖だけになった。なんという怒り、なんていう憎悪、ワタシの怒りなどくらべものにならないほど、その目には地獄の炎のような憤怒が宿っていた。
ワタシは死ぬことにした、ただただ子供のように怒られたくないと願って・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます