願わくば、俺の死が無駄にならん事を

さっさん

第1話

 俺はブタだ。ブタと言うらしい。

「らしい」というのは、自分でもよく分かっていないからだ。

 二本足で歩行している、あのニンゲンという動物達が俺達の事をブタと呼んでいるから、俺もそう呼称すると決めた。


 客観的に現状を述べるならば、たまたま人語を理解し、森羅万象に対しての意見、感想、すなわち思考を持つブタが現れたのだ。

 そのブタが俺。そう、俺……。

 突然変異なのか、遺伝的に得た能力なのかは分からない。

 多くの同胞は俯いたままで、俺の言葉に応じる事はない。

 あのニンゲンに喋りかけようにも、俺の声帯は彼らとは作りが異なるようだ。何を発しようにも「ブー」という音しか出ない。全く、癪なものである。


 これは、ブタの俺が殺されるまでを描いた物語である。

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