自動筆記 vol.1

タムラ ユウイチロウ

第1話

・病気


膵臓に空いた風穴を埋めるために一週間煮込んだ梅干しを詰めて東名高速道路で天日干ししたので、チョウザメ目に属する街灯ダンスを踊る輩にDNA鑑定を行う前に、帳尻の弾丸を確認し装填しておいてください。


叩き潰した炊飯器で麦芽を育ててここ数日でビールになった人は雁字搦めの膀胱を町内心理科で診てもらってください。


僕は誘拐犯。おうちが嫌なこおいでなさい、ナマコの心臓食べさせてあげる。

僕は僕の国に帰るので……逃げ出すのです。


何にも転嫁することなく。散らかった頭のままで、付箋を貼って。扁平足のように。


想像すらしなかったよね、三等身の群れだった頃には。それはそれは大きかった杉の木ももう花粉になって。登るなんてこと考えもしない。

そんでもってお腹が鳴っている。


腸内細菌が疼いている。


蹲って脳細胞を見上げては逆立ちの時を待っている。不安とあらば、サイコメトリー。


先生、私は上昇気流の甲状腺を股間に挟んだまま宇宙空間に放り出されたとしても死なない自信があります。


だからどうかその鼠色の拳銃を猛獣使いのムチのように振り回さないでください。


軌道と弾道は違いますから。


司法解剖は待ってはくれないのですから。


どうか先生自身の臓腑を今のうちに母方の祖母の家の納屋にある業務用冷蔵庫に閉まっておいてください。数日後には近所に住む傴僂の酒浸りの息子が嫌になって納屋に隠れて。そしたら冷蔵庫を見つけて中の先生の臓腑を取り上げて観察し始めるのです。

陽の下でまずは肝臓、次に腎臓、膵臓という順に干からびていって、それを男のツマミに家に持ちかえるでしょう。


そうしたら男はピッタリと酒をやめて、息子と共にその臓腑の干物を売り歩く行商になるのです。


どうですか先生。貴方の中枢はやがて雨になり、父子行商の臨むがままに全土を救うのです.......。


・残酷


三日三晩の攻勢により、城はついに陥落した。バームクーヘンのように天守はすっぽりなくなり、城郭だけが残った。


──夢だったんです、城を落すのが。瓦礫の瓦解によって重い甲冑の兵士が潰れていくさまは圧巻で。路地裏の中空を高速ダビングする一座のようでした。ともかく殻になった城兵を確認するために城郭の一角に登った私は奇妙なものを目にしました。というか、見なかったというか。天守が消えていたのです。すっぽりと。5寸から8寸くらいでしょうか。ボロボロに崩れてそれが赤く染っている様を想像していたのに。


・不安


なにとはなく不安なことがある。満たされれば満たされるほど、根拠のない空虚が幸福のそばに寄ってくる。普段から想像する余地を持ち合わせているとは言えないのですけど。エビがダンスするのです。私は唐墨を食っていました。家族は水道水を嫌っています。事実が触ったことも無い鋼鉄のように冷たく体を殴ります。どうしてか殴られたところからは、血液が流れるのではなく、季節感のない部屋の空気が入っていくのです。今、母親の声が聞こえたのでそれも入りました。「ご飯できてる」が身体中を反芻しています。今晩のおかず内容はなんでしょうか。エビでしょうか。それともいなくなった私の血液でしょうか。また、不安が襲ってきました。


・生前


二言目には、象の繁殖について語るのはもしかして既に一生を全うしているからではないだろうか。唐変木はなりを潜め、荒唐無稽が支配しているここ2分ほどの人格形成について、生真面目に論じようという不動産屋はいないだろう。


(1400字)

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