中学生のひとりごと

甘夏みかん

第1話

クラス替えの時。

セリナは席が隣だったスズカと仲良くなった。

「セリナ、よろしくね。」「セリナ、かわいすぎるー!!」「セリナ、一緒に行こう!」中学二年生。まだ化粧もオシャレもそんなに分からないけど、スズカはオシャレに見えた。

顔立ちのせいだろうか、肩を超えるくらいのストレートヘアーのせいだろうか。

中学二年生にしては、大人っぽい雰囲気がある。

始めは2人だったが、サエ、サエともともと同じクラスだったチハルが加わって4人になった。気が付いたら、アヤ、ノゾミたちも加わって6人グループになっていた。違和感を感じ始めたのはこの頃からだった。チハルがつまんないことを言っちゃったとき。スズカは「お前それ全然笑えねーから。」と言って、叩く。なんだかそれがキツく感じても、セリナは何も言えなかった。気が付いたらセリナはあまりしゃべらなくなっていた。


スズカは持ってきた雑誌を机に広げた。セブンティーンだ。セリナも同じのを買った。でも、言わない。


スズカは雑誌に映っている女の子の一人を指さしていう。

「この子、かわいくない?」

サエは「わかるー!うちもかわいいなって思ってた!リンちゃんだよね!」と言う。

すると、集まっている他の女子たちも、うんうん、と頷く。

スズカは、「セリナはどう思うー?」と聞いてくる。


「私は、、こっちの子がかわいいと思う。」


セリナの声は自信なさげに小さく響いた。

スズカ、の時と違って、誰も、わかるー!とは言わない。

スズカはひとこと、ふーん、と呟いた。

わかってる、そんなのわかってる。

ここではスズカが言うことが正しい。

悔しいのをぐっとこらえて、平気なふりをした。

スズカはかわいい女の子が好きだ。


セリナは一年生の時に同じクラスで仲の良かった、モモコと帰っている。

モモコとはいろんな話をする。

「なんか、いまのクラス、楽しくなくって。一年生の頃は良かったな。なんか、自由だったし。」とセリナは言った。

ため息交じりだ。


モモコは「分かる、皆仲良かったよね。」という。

「実はさ、」とモモコが口を開いた。

「私にだけ嫌がらせしてくる奴がいて。ほんとムカついて。同じグループの子、仲間にして言い返してやった。

そしたら、反省したっぽい。そいつ、大人しくなって。私のほうがグループで強い立場になってるんだよね。」

そういうと、モモコは、鼻で笑った。

「ほんと、ざまーみろって感じ。」


セリナは「そうなんだあ。」と呟いた。


いいなあ。私に、できるだろうか。誰かを味方につけて、スズカを言い負かすなんて。

「私には、無理だなあ。」とセリナは言った。

モモコは「セリナは優しいし心がキレイだから。そのままで良いと思う。私は、心が濁ってるから。」

と言って笑った。


私って優しい、のかな。

ただ、度胸がないだけだよ、そう思った。

私だって悔しくて歯を食いしばるときもあるし。

悔しくて悔しくて泣きたい時もあって。

ただ、言わないだけで。


スズカは「やっばー!!!次教室移動じゃん!行こう~、チハル、はやく!」と大きな声で言う。

たまに、「セリナ~一緒に行こう?」と優しく声をかけてくれる。

本当に、たまに、だけど。

準備に時間がかかるセリナはみんなのあとを追いかける方が多い。


みんな、きゃー!とかやばいー!!とか、大げさに騒ぎながら移動の準備をしている。

皆、きゃー!!とか言いながら、スズカに置いてかれないように必死なんだと思うと、悲しくなってくる。


セリナは、今日も一番最後だ。

教科書や筆箱を持って、廊下を走る。みんなの背中を見ながら、走る。走っても、何もない。分かってる。私がいてもいなくても、誰も気にしない。追いついたところでちらっと、こちらを見るだけだ。

みんな自分のことで必死なんだ。分かってる。


でも、もう、疲れた。



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