第54話 帰還


 そして……


 バチバチバチ……バチィン!


 青い稲光を伴ってタイムマシンが未来へと戻ってきた!


 プシュ……


 空気音がして中からツギオが出てくる。


「ふぅ……危なかった……」


 少しだけ焦りながらも帰れたことにほっとするツギオ。

 そして、自分の姿を見て苦笑する。


「法被貰ったまま来ちゃったな……ま、いっか」


 祭り衣装を着て戻ったことを後悔するツギオ。

 

「さっさと帰って着替えよっと」


 そう言って、タイムマシンを置いてツギオが帰ろうとしたその時だった!


「このドス坊ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 ガシィ!


 木の棒で思いっきりなぐられるツギオ!


「痛ぇぇぇぇぇ!!!!」


 思いっきり叫びながらもツギオは殴ってきた相手の顔を見る。

 ツギオを殴ったのはお茶の水博士みたいな頭をした爺さんだった。

 それを見て顔を青くするツギオ。


「ジンゴロウ爺さん!」

「勝手にタイムマシン持っていきやがって! 何してた!」

「いや、ちょっと大昔に行って祭りを見てきた」

「嘘吐け!」

「嘘じゃないって!」

「その恰好は明らかに参加してるだろ!」

「バレたか……」


 変なやり取りをするツギオとジンゴロウ爺さん。

 爺さんは少しだけ怒りを鎮めて尋ねた。


「ほんで。どの時代のどこに行ったんだ?」

「200X年の金剣町」

「……久世将軍か?」

「うん」


 あっさりと答えるツギオに渋面になるジンゴロウ爺さん。


「あんまり歴史を変えるようなことは慎んでほしいんだがなぁ……」

「だったら、こんなもの作るなよ……どう頑張っても歴史を変える機械なんだから」

「そこはそれ。これはこれ」

「そう言えば何でも許されると思うなよ?」


 ジト目で爺さんを睨むツギオ。

 爺さんは話を逸らすように尋ねる。


「久世将軍はどんな人じゃった?」


 それを聞いてツギオが少しだけ苦笑して言った。


「何か尖ってたよ。祭りを嫌ってたけど……英雄も高校生の頃は普通の高校生だったよ」

「そんなもんじゃろ……」


 爺さんが感慨深げにうなずく。

 そしてぽんっと手を打つ。


「久世将軍と言えば、今日は『千年箱』の日じゃないか。みんな食堂で集まってる頃じゃないか」

「……『千年箱』?」


 聞きなれない言葉に訝しむツギオだが、爺さんはパンパンと手を叩く。


「まあいい。とりあえずタイムマシンは車庫に……っておい!」

「なに?……ってえっ?」


 思わず振り向いてキョトンとするツギオ。

 そこにはタイムマシンに乗り込もうとする大男が居た。

 そしてその姿には凄く身に覚えがあった。


 目の前にあるタイムマシンに隆幸を襲った怪人が乗り込んでいるのだ。


 あまりのことに混乱するツギオ。


「えっ? 何で? さっき隆幸に倒されたはずなのに……」

「まてぇい! そりゃワシのもんじゃぁ!」


 慌てて取り返そうとタイムマシンに向かう爺さんだが、もはや手遅れだった。

 怪人が乗り込んだタイムマシンはそのまま宙を浮いて走りだし……


 バチバチバチ……バチィン!


 あっという間に時空転移してしまった。

 あまりのことに呆然とするツギオ。


「……どういうこと?」

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