第24話 ミッション開始


 一方、その様子を見ていた男たちが居た。


「工作員Hがターゲットに接触。ミッション始動」

「いつの間に工作員になったんですか? と言うかミッションって何?」

「細かいこと気にするな」


 建物の陰に隠れて静かに言う羅護に突っ込みを入れるツギオ。

 そこには数人の同級生たちが集まっていた。

 さらっと楢樫団長までが混ざっており、彼は全員に言った。


「これよりプロジェクトLを決行する。内容の復唱!」

「へいへい。タカとハルカちゃんがくっつくようにムードのある曲を流すってことだね」


 嬉しそうに篠笛を取りだすツギオ。

 団長がニヤニヤ笑いながら言った


「あいつらは早くくっついた方が良いからな。お前は篠笛吹けるんやろ?」

「一応……」


 そう言って困り顔になるツギオ。

 それを見ていた太っちょの少年……名前は万代と言うのだが……彼が言った


「でも良かったっすね。都合よく篠笛で色んな曲出来る子が居て」 


 万代のおっとりとした声に困り顔のまま笑うツギオ。


(ほとんどが未来の曲なんだよなぁ……)


 当り前だがツギオが出来る曲のほとんどは未来で習った曲である。

 この時代の人には知るわけがない。


(えーと……この時代でもわかる曲は何があったかな?)


 そんなことを考えて悩んでいると、羅護は言った。


「何かこう……手を繋ぎたくなるような曲は無い?」

「手を繋ぎたくなるような……あるよ!」


 思いついて即座に笛を口につけるツギオ。

 そこから流れてきた曲は……


ぴぴ~♪ ぴぴ♪ ぴ~ぴ~♪(君を乗せて)


 唐突に流れた音楽を聞いた瞬間、団長は突然サングラスをかけた。

 そして、近くに置いてあったおもちゃ箱から水鉄砲を取りだして羅護と万代の方に向ける。


「三分間待ってやる」


 それを聞いた瞬間、羅護はその辺に落ちてた石を拾って万代の手を取り、一緒に石を握った。

 そして二人で「せ~の」と声を合わせ……


「「バルス!」」

「やかましい!」


パパン!


 横から隆幸に頭をはたかれる羅護と万代。


「後ろで何やっとれんて(何をやっている)! 今、相談に乗っとるんやから静かにしてくれや!」

「「ごめんごめん」」

「……まったく……」


 そう言って遥華の相談に戻る隆幸。

 隆幸が行ってから、全員で話し合う。


「ラピ〇タはアカンかったな」

「でも手を繋ぎたくなるような曲って言うとこれが一番かなぁって……」

「確かに手を繋ぎたくなったね」

「意味が全く違うけどな」


 羅護たちが口々に意見を述べるのだが、ツギオは困り顔になる。


「と言っても、そこまでレパートリーがあるわけじゃないから……」

「そしたら、こう抱きしめたくなる曲は無い?」

「うーん……あ、あった!」

「じゃあ、それで行こう」


 ツギオは再び笛を手に取る。


ぴ~♪ ぴ~ぴ~ぴ~ぴ♪ ぴ~ぴぴぴ~♪(残酷な天使のテーゼ)


 すると、団長はそのままサングラスに指を当てて、万代は身体にトイレットペーパーを撒きつけ始めた!

 万代はそのまま地べたに寝転がり、彼を抱きしめるように座る羅護。


「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……」


 目を瞑ったまま同じ言葉を唱え始める羅護はぱっと頭を上げてこう言った。


「やります」

「何をだ!」


ゲシッ!


 隆幸のケリが羅護の頭に当たる。


「だから何やっとれんて! その状況で何をやろうって言いたいんや!」

「何と言うか雰囲気的に……」

「変なことするな!」


 そう言って隆幸が再び遥華との話に戻る。

 再び作戦会議を始める4人。


「おいどうする?」

「やっぱ、こういう曲だと難しいな」

「他にいい曲出来んの?」

「そう言われても……」


 言われて困惑するツギオ。

 すると、羅護がぽんっと手を叩こう……として空振りしてからやり直して手を叩いてから言った。


「エロい曲とか流せん?」

「うーん……それならある! やってみるね!」


 ツギオは意気揚々と笛に口をつけた。

 そして……


ぴっぴぴぴっぴ♪ ぴっぴっぴ♪(ちょっとだけよのテーマ)


 それを聞いた瞬間、小太りの少年と団長がしゃがみ始め、その前で羅護が踊りだした!


「ちょっとだけよ♡」

「良いぞ! 良いぞ!」

「もっと脱げよ!」


 しゃがみながら、わざとらしく囃し立てる二人にストリップっぽい踊りを踊る羅護。

 ガードレールなんかに乗りながらアホな踊りをやりながら彼は言った。

 

「あんたも好きね♡」

「やかましいわ!」


 ゲシ!


 隆幸の蹴りを受けてガードレールから落ちる羅護。


「さっきから何やってんだよ! お前らは何がやりたいん?」

「「「「ちょっと雰囲気造りを……」」」」

「もういい! 俺は帰る!」


 そう言って、隆幸は立ち去って行った。

 それを見て困った顔になるツギオ。


「上手く行かなかったねぇー」

「むぅ……」

「どうすれば良いのやら」

「何とかならんかなぁ……」


 口々に唸る面々。

 すると……


ガシィ!


 ツギオと羅護の頭をがっしりと掴む者が居た。


「あんたらにちょっと話があるんだけど?」


 般若の顔になった遥華が二人の頭を掴んだまま、物陰へと引きずりこんでいく。


「待て遥華! これはお前達のことを思ってだな!」

「何て握力なんだ! 振りほどけない!」

「良いから黙って来い!」

「「嫌だぁ!」」

 

 泣いて嫌がる二人はそのまま物陰に引きずり込まれていって……


ベキグシャ! ゲシッ! ゴキッ!


 色んな音を立てていた。

 すると、いつの間にか来ていた副団長が不思議そうに団長に尋ねた。


「……団長。あそこで何が起きてんの?」

「羅護とツギオが調子こいて遥華の折檻食らっとるわ」

「アホな真似やったな……」


 団長と副団長は二人に向かって手を合わせて「チーン」と言った。


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