第22話 原因
そして夜……
「何だ? 今日はタカが来ないのか?」
「うん……」
羅護の言葉に困り顔のツギオ。
あの後、ご飯食べて祭りの練習に行こうと誘ったのだが、「ひとりで行け」と言われて仕方なく一人で来たツギオは教えてもらった事を練習していた。
(誰が誰だかわからないから困るんだよなぁ……)
双方の事情が分かっているのは隆幸だけなので、やりにくいことこの上ない。
すると、一人の女の子がツギオに近寄ってきた。
「羅護……タカは居る?」
羅護と隆幸の幼馴染でもある遥華が不安そうに尋ねるのだが、羅護は困り顔だ。
「あーごめん。タカは居ないや。今日は来ないって」
「そう……明日は?」
「あーわかんねーんだわ」
「……そっか」
悲しそうにとぼとぼと去る遥華。
それを見て微妙な顔になる羅護。
「……あのさ、何とかアイツ連れて来れんけ?」
「う~ん……何か嫌がってるみたいなんだけど、ひょっとしてあの子と何かあったの?」
「……あ~……まあそうなんだが……」
歯切れ悪く答える羅護。
「あの子もタカも頭が良いんだけど、高校受験の時に『一緒に小泉に行こう』って約束してたみたいなんだわ」
「……小泉?」
「小泉高校。I県で一番頭良い奴が行く高校」
「なるほど……それでどうしたの?」
「遥華が受かって、タカだけが落ちた」
「あちゃぁ~……」
思わず顔を覆うツギオ。
頭をポリポリとかく羅護。
「まあ、それだけだったら良いんだが……」
「他に何があるの?」
ツギオが困り顔で居ると羅護はそっと耳を貸せと合図する。
素直に従うツギオだが……
「わぁぁぁぁぁぁ!」
「どわぁぁぁぁぁ!」
耳元でいきなりデカい声を出されて驚くツギオ。
思わず笑いながら持っていたタオルで羅護を叩くツギオ。
「てい! てい!」
「悪い悪い! ついやっちゃった」
「鼓膜やぶれるかと思ったぞ!」
半笑いで怒るツギオ。
羅護は笑いながら言った。
「じゃあ改めて。実はあいつら高校に行ってから付き合おうって約束してたみたいなんだわ」
「Oh……………………」
思わず英語でかぶりを振るツギオ。
「何と言うか……痛い状況だね」
「だろ? だからどうしていいかわからんのやと思う」
「確かに難しいね……」
確かに微妙な状態である。
ツギオが微妙な顔でぼやく。
「だとしたら原因はあの子だけど……居なくなったら良いって話しでも無いよね?」
「当たり前だよ」
「一番良いのは……」
「あの二人が付き合っちまうって所だが……」
羅護も困り顔になる。
一度こじれた人間関係は修復不可能と言える。
特に恋愛の破綻は難しい。
「時間が経てば上手く行くような気がするけど……」
ツギオがそう頭を捻っていると、楢樫団長さんが声を掛けた。
「おっ? がんばっとるやん。タカはどうした?」
「いえ、ちょっと今日は……と言うか今年は来ないみたいで……」
「……何?」
強面髭の楢樫団長さんが少しだけイラッとした声を出す。
「羅護。タカを呼んで来い」
「えっ?」
「良いから行ってこい」
「はい!」
慌てて隆幸を呼びに行く羅護。
不思議そうな顔をするツギオ。
「どうしたんですか? 何か問題でも?」
「あー……何というか……お前がこっちに来てるのに、あいつが来んのはイカンやろ?」
「……えっ?」
「お前を紹介した奴が面倒見ないのはイカン。紹介した以上は責任があるし、知っとる人が少ないのにほったらかしはダメや」
団長が若干イラッとしながらぼやく。
ほどなくして隆幸が羅護に連れられてやってきた。
「どうしました?」
「どうしましたじゃないやろ!」
団長が怒鳴ってから説教が始まった。
「そんな不義理な真似すんなや! かわいそうやろ!」
「すんません……」
平謝りする隆幸。
しばらくは怒られたのだが、終始黙る隆幸。
「お前が紹介したんに面倒見んといかんやろが!」
「……すんません」
団長さんに怒られて平謝りする隆幸。
団長が大声で叫んだ。
「お前もちゃんと毎日来い! 良いな!」
「……はい」
不貞腐れながらも答える隆幸。
だが、ツギオは羅護と笑いあった。
「流石団長さん。何とかなりそうだね」
「だな」
そう言って笑う二人をジト目で睨む隆幸であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます