第20話 関係ない?
「ふーん……」
不思議そうに首を捻るツギオと同じく不思議そうに首を捻る隆幸。
「『答え教えろ』って言ったんだが、最後まで教えてくれなかったから謎のままだ」
「何と言うか……タカのおじいさんって感じだね」
「どういう意味だ?」
「別にぃ……」
じろりと睨む隆幸を見ないように明後日の方を見るツギオ。
隆幸はため息を吐いてツギオに尋ねる。
「この刀がどうかしたのか?」
「いや、バルドーが持つ軍刀に似てるから、何でこんなものがあるのかなぁって思って」
「……バルドー?」
ツギオの言葉に訝し気な顔になる隆幸。
「バルドーってのは未来の兵隊さんのことで、こんな感じの軍刀を携行武器として装備してたから……何でこんなものがあるのかなぁって思って」
「ふーん……こんな振れないような刀がねぇ……」
「えっと……この刀って振れないの?」
「おう。重すぎてオヤジでも振れないぐらいらしい。だから飾る時にしか使わん」
「意味が無さすぎる……」
あきれ顔のツギオと興味なさげな隆幸。
どうやら未来の兵隊さんの軍刀に似ているようだ。
ツギオは不思議操に呟く。
「名刀を作ろうとしたのかな?」
「あほ。名刀ってのは鎌倉期の刀に多いんだよ。今でも製法がわからなくて再現を試みようとしてるぐらいだからな」
「ふーん……なんで製法がわからないんだろ?」
「何だったっけか……確か生産性が悪いから今の作り方に変わったらしい」
「そうなの?」
不思議そうに首を傾げるツギオ。
実は鎌倉期の作り方は名刀を作りやすかったがコストがかかりやすく、難しいものだった。
隆幸は説明する。
「出来は少し落ちるけど、より多く作れるやり方が出来てからは、そっちに変わったらしい」
「勿体ない……」
「全くだ」
ツギオの残念そうな声に同じく残念そうに答える隆幸。
そしてパンパンと手を叩いて隆幸は静かに言った。
「どうでも良いけど早く片付けろよ。夜から祭りの練習もあるだろ?」
「はーい」
そのまま自分の部屋へと戻ろうとする隆幸だが、玄関から別の声が聞こえた。
「ただいまー。ツギオは居るかー」
「はーい居ますよー」
そう言ってくるりときびすを返すツギオだが……久世父は帰るなり、大きな声で言った。
「ちょうどいい。隆幸も聞け。ちょっと来い」
「何だよ」
「良いからカバンを置いてちょっと来い」
「わかったよ」
いつになく厳しい声の父親に訝しく感じつつ、カバンを置いてくる隆幸。
彼が居間に着いた頃にはすでにツギオが久世父からある動画を見せられているところだった。
「これがなんだかわかるか?」
「うーん……わかると言えばわかるけど……」
久世父の言葉に首を傾げるツギオ。
動画は父親が警察のPCからダウンロードしたテレビの動画で、それを見たツギオは首をかしげる。
隆幸が覗き込むとお昼に見た謎の殺人鬼の姿であった。
「これって……」
「お前も知ってたか? 東京で起きた謎の殺人事件だ。ひょっとして何か知ってるかと思ったんだが……」
「うーん……知ってはいるけど……関係ないって感じかな?」
歯切れ悪く答えるツギオ。
「これは怪人だよ」
「……怪人? 特撮で出てくる悪役の事か?」
「そういう意味でもあるけど……ちょっと待って」
慌てて自分の携帯を開くツギオ。
電子辞書らしきもので検索をかけてから、少し考えて答えた。
「一言で言えばテロリストとか工作員かな?」
「……随分不穏当な言葉だな」
険しい顔になる久世父だが、ツギオはそのまま続ける。
「傷痍軍人ってわかるかな? 戦争で怪我した軍人さんなんだけど、中には怪我しても軍属で居たいって人が居て、そういう人が無くした腕や足の代わりに遺伝子強化された手足を付けるんだ」
「……なんだと?」
もっと不穏当な言葉に顔を顰める久世父。
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