ネームドは序盤の序盤から!? ①

 さて…、今の私は魔法型なんだけど、序盤じょばんのフィールドで魔法攻撃をされることはないと思う。

 逆に考えると魔法型の敵がいないなら【魔防】は低いのでは?と考えます。

 何故なぜ、考えていたかというと、スタート地点の【マルク領】までの間に深い森が広がっているから。


 (まず、街に行くまでに戦う必要があるのか。)


『あそこに見えるもモンスターだよね』


 右上の小さなマップを見ると、10メートル以内のモンスターは青点で分かる。距離が近くなると赤くなっていくみたいね。


『目の前のこいつしかいないみたいだし、練習台になってもらおう!』


 本来なら【女神のチュートリアル ①~⑩】というクエストで平原での戦闘の講習こうしゅうやプレイをしていく上で主要な店への説明から始まると鈴奈が言っていた。

 だけど、私自身が【女神】だからチュートリアルは自分でやれっということなのね? 


 なんと鬼畜きちくな。



 アリとの距離が3メートルになる。

 近づいたら【アーミー・アント】Lv.16と表示された。


 結構強いな。

 ためしに【呪言じゅごん】を発動させてみる。


 ヨミは一気に【アーミー・アント】に近づいて、


『【呪言】!』


と声に出す。



≪このスキルは使えません≫



『やっぱり、ダメね…』


『!、キシャァァ!』


 近づいたために【アーミー・アント】に気づかれてしまった。


 ヨミは【アーミー・アント】の右腕からのがれつつ、後ろに回り込む。


『回避成功。そして、1発』


 脚での攻撃が空振りになった【アーミー・アント】の背にパンチしてみる。


 固っ!?


 痛く

 だけど、固い感触かんしょくと腕に伝わる衝撃。なにより、【アーミー・アント】のHPゲージが全体の1%くらいしかけずれてないからして私の攻撃力が足りてない。


 【アーミー・アント】が後ろに振り替えるために身体を回すがそこにヨミはいない。


『固いけど、遅い。

 背後さえ取ればいけるわ!』


 ヨミは1発2発…と【アーミー・アント】に殴りかかる!




ーーー約4分後。


『キシャァァ………』


『よっしゃぁぁあ!倒した!』


 初めの敵にしてはLv.16と高かったけど、行動に変化がなかったから、あとは作業だったわね!


≪スキル【連打】を覚えました≫


≪スキル【回避】を覚えました≫

≪【回避】がLv.2になりました≫


≪【アーミー・アント】が倒される前にを呼びました≫


 スキルが増えた♪増えたった♪ーーーうん?

 ……【アーミー・アント】が仲間を呼んだ?


 マップを見てみると、わくはしから青点が現れ続ける。それは、私に集まってくるように見える…。

 すでに赤色になりかけている個体もいるわ。


『私って、今、ピンチ?』


 周りを見渡すと見覚えのあるシルエットたちが近づいてくる。


『【ポーン・アント】、【ルーク・アント】、【ビショップ・アント】、【ナイト・アント】……まるで、ね』


 現れたアリ達は一律いちりつでLv.16と出ている。

 キングとクイーンはいなさそうねっと考えていたら…、私の周りが影になり、マップの私のアイコンにかぶさるように青点が現れた!?


『!?……上!』


 空を見ると、ただでさえ人と同じ大きさのアリを、人の3倍は大きくしたかのようなアリが落ちてきた。


『ギジャァアァァア』


『うるさっ!』



 【クイーン・アント】Lv.30



 強っ!?


『なんで序盤でレベルが3倍の相手が出るのよっ!』


 なげいているヨミと【クイーン・アント】の周りを14体のアリたちが囲み始める!


 チッ、逃がさないか…。

 いいわよ!やってやろうじゃない!


 目の前の【クイーン・アント】が、両腕についた大きな鉤爪かぎづめを光らせて交差するように振り下ろす!


 私は大きく後ろにけ、観察する。


『まだ…避けられる!』


 ……周りのアリたちは【クイーン・アント】の戦いに邪魔をしないように威嚇いかくしているだけみたいね?


『なら、いける』


 【クイーン・アント】が空振りしたのに腹を立てたのか、その場で大きく腕を振った。


『なっ!?』


 瞬間、


 振るった軌道上に斬撃が放たれる。


 すんでのところで避けた私に向かって【クイーン・アント】は腕を振り続けているので、いくつもの斬撃が襲いかかってきた!


『ふぅぅぅ……、


 ヨミは予想外の攻撃のせいでバランスを崩して避けたので片足が浮いていた。

 

 …………次に来るのは横薙よこなぎの斬撃、片足だけで斬撃を跳び越える。次は右斜め、着いた瞬間に軸足でスピンしながら距離をめる。次は左斜め、身体を少しだけ反らす。


 次は…避ける、次は…近づく、次は……


 ヨミはる斬撃を避け続け、ついに手を伸ばせば触れられる位置まで【クイーン・アント】に近づいた!

 【クイーン・アント】が再び腕を振るが、1度見てるヨミは、腰にけた剣で腕より早くを狙う。


 剣を使うのは苦手だけど、ここまで近づいたらあとは突き刺すだけ。



『ギャ!?……ギッ』


 【クイーン・アント】は首を動かして避けようとするが、私にはそれが見えているので動かした位置を突き刺さす。


『よし!』


 無事に剣が刺さるとつかをひねり、回し蹴りをもって剣を押した。

 

『ギェァァァアアア!!!』


 悲鳴を上げた【クイーン・アント】が剣を抜こうともがくが奥まで通した剣は外れはせず、その間にヨミは離れた。


『戦闘中に目を刺されたくらいで相手から目を離すなんて……ダメね』

  

 見ると、【クイーン・アント】のHPがやっと5%減っている。

 私は片目で【クイーン・アント】を見ながら、ステータス画面で新たに手に入れたスキルを確認した。


[スキル]

【連打】技

 同じ敵に5回、武器または手足を連続して攻撃をするアーツ。


[条件]

・戦闘中に武器を使わずに10回以上の攻撃を行う。


【回避】技

 敵の攻撃を素早く避けられるアーツ。


[条件]

・戦闘中に20回以上、敵の背後に回る。



 今、【クイーン・アント】に攻撃されているけど、片目を失って冷静さを失っている攻撃なんて余裕よゆうで避けられる。


『【回避】、少しは使わないとスキルレベルが上がらないし、クールタイムがなくなったら使うか。【連打】!』


 【連打】を使用したけど、【アーミー・アント】の約2倍のレベルの【クイーン・アント】のHPは1%も削れていない。


 うーん。固い。


『やっぱ、剣も刺さったままだし、素手での攻撃力は10なのかな?』


 刺してから3秒後に、


≪武器を戻しますか? 【Yes】/【No】≫


とログに出てはいるけど、今は保留。

ーーーだって、剣が戻ったら目が回復しそうだもん。


『素手かぁ…』

『【裁きの千雷】は範囲攻撃ぽいし、ここで使うと私まで巻きこまれるだろうし~』


 もし自分のスキルでダメージが入らないなら、範囲攻撃を自分に向けて放つだけで勝つという、ヌルゲーになってしまう。


 【OTW】は、。ちゃんと、自分にもダメージがあるし、フレンドリーファイアもあるのだ。


『あぁ!そういえば【神気解放】ってスキルがあったわね!』


 【神気解放】とは、最大HP、または、最大MPの5%をステータスの一番低い値に振り分けるスキル。……正直、序盤のプレーヤーじゃあ、このスキルはゴミに近いだろう。

 でも、私にはり余るMPがある。

 そして、魔法型の私が1番低いステータスは【攻撃】!


 【神気解放】を使うと決めると詠唱文が出た。


 うわぁ…、厨二病ちゅうにびょうぽいなぁ。まぁ、嫌いじゃない。


『我がかせを解き放つ。今こそ、真価しんかの時』

『【】!!!』


 叫ぶ必要は無いけど……ノリだよ!


 ヨミの首や手足にあわい金色の模様が流れる。

 続いて、背中に教会の像でありそうな後光ごこうした光のエフェクトが展開され、目が金色になり、金色のオーラのようなものが少しだけ目から空気中に漏れていた。

 

『これが、【神気解放】…!』

『ステータスはどうなってるのかしら?』


ヨミ Lv.10

種族【神族】

職業【女神】Lv.10

HP 1200/1200

MP 7125/7125 (375↓)《解放中》

攻撃 395 (375↑)《解放中》

防御 30

魔攻 360

魔防 110

速さ 70


『攻撃が魔攻を上回ったわね……』


 ゴリラ女神……。




ーーーここからは、一方的な戦いだったわ。


 攻撃力が上がった私が避けて殴る、ヒット&ウェイを中盤にかけてり返し、戻さずに目に刺さった剣を左右に殴ることで痛みを与え、【クイーン・アント】が痛がって出来た隙を見逃さずに横腹に【連打】をお見舞いする。

 終盤になって残りのHPが2割になると、羽を広げ空を飛ぼうとするが、私は剣を一気に抜いて片方の羽根を剣で切り捨てる。

 今度は口から酸を吐いてきたが、剣で受けて、すぐに剣を捨てる。


『うわぁ、完全に溶けちゃった』


『ギ、ギャ、ギジャアアアア!!!』


 【クイーン・アント】は剣を使えなくなった私を見て好機こうきと思ったのか酸を飛ばしまくってきた。


『だけど、それもからのよ?』


 避け続けてふとこに入り、あごに【連打】する。

 さすがに固いが、【クイーン・アント】の顔を上に向かせることができたため、【クイーン・アント】の腕を下から抱え込む。

 【クイーン・アント】はすかさずいている腕を使って攻撃しようとするが、その前に私が


 そう、背負い投げだ。


 ひっくり返った【クイーン・アント】が起き上がろうとするが私は丁寧ていねいに1本ずつあし


『これで、やっと1割』

『ここまで何分かかったのかしらね?まったく』


 【クイーン・アント】はもがくが、脚は治ると同時にヨミに折られていく悪循環あくじゅんかんになっていた。


『あと、3%』


『キッ、ギジャアアアア』


 【クイーン・アント】が身体を大きく揺らし、回復した羽根で反動をつけて起き上がった!

 そして、さっきまで威嚇していただけのアリたちがヨミに襲い始める!


『ウソ!ここで!?』


 あくまでタイマンで戦うか、HPが10%未満になるか、【クイーン・アント】を倒した時に残りの雑魚が襲いかかる、3つのパターンを予測してヨミに鉤爪や酸が降りかかる。


『さ、すが…にこれは……えええっ!?』


 よく見ると、ヨミの近くにいないアリたちは【クイーン・アント】に


 そして【クイーン・アント】が1匹のアリに噛みつくと、アリは中身を吸われたようにしぼみ、倒れてポリゴンになる光景が見えた。


『(共食い?)…HPがぁ!?』


【クイーン・アント】がアリを吸うたびにHPがし、10匹目で【クイーン・アント】の身体にひびが入る!


 どう考えてもまずいよね!


 ヨミが残りの4匹を倒した時には【クイーン・アント】の身体が粉々に砕けた。


『なっ!?』


 砕けた身体の中から【クイーン・アント】より、さらに黒く光ったアリが現れた。


 現れたアリは、こちらに振り向いた。

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