自転車の後輪
「ねぇ、後輪さん!あなた自転車って不平等だと思わない?」
と、上から
私は約半年前に主のものとなった。それから登下校の足として主を支えてきた。彼女は普段、というかこれまで一度も空気入れすらしていない。別にこれに不満はない。街で赤茶色にさび付いたチェーンで頑張って走る同胞を見かけるなんてよくあることだ。今そんな主が私に興味を持ったかと思えば、なかなか面白いことを言い出したのだった。
さて、自転車は不平等か。言われてみればそうかもしれない。でも私はそれで構わない。後輪の方が負担がかかっていても、これが私のスタンダードだからだ。
主に言われるまで平等か不平等かなんて考えたこともなく、今も別にどちらでもいいと思っている。そもそも、私の属するこの自転車は後輪に体重がかかるように設計されている。なんなら大抵の自転車はそうでなかろうか。言ってしまえば、はなから不平等は承知なのだ。そしてそれを受け入れるどうこうの話もない。それが後輪の役割なのだから。
と、ここまではあくまでいち後輪の考えである。他の自転車には常日頃から不平等だと思っている
それはそれで面白いかもしれない。自転車の後輪たちの大反乱が始まったら、主を乗せて見に行こうか。きっと彼女は、「大丈夫?混ざってくる?」なんて言う気がする。
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