自転車の後輪

旗 ユウ

わたしの自転車

 自転車。わたしが登下校に使っているそれは、いわゆるママチャリだ。入学前にイオンで買ってもらった、どこにでもあるような自転車。


 学校生活ももう半年が経ち、朝夕が涼しくなってきた今日この頃。今まで何のメンテナンスもしてこなかったわたしの相棒(?)に違和感を覚えた。


 “進みが遅い”


 あぁそっか。タイヤの空気減ってきたんだ。気温が下がってタイヤの内圧が下がったからかな。それに、ろくに空気も入れずに毎日乗っていたのだからなおさら。仕方ないとは思いつつ、少しムッとしながら足に力を入れる。漕いだら漕いだ分だけ進むのが自転車でしょ?



 空気がどれくらい残っているのか気になって足元前方を覗いた。ん~、あ~、まぁ言われてみれば空気減ってるかもね、って感じ。そのまま自分の真下も覗き込んでみる。そしてこの世の真理に気づいた。


 …あれ?なんか違くない?こっちの方が空気少ないじゃん!


 そう。後輪の方がつぶれ具合が大きい。考えたことすらなかったから知らなかったが、どうやらわたしの相棒は前後で体力に差があるらしい。そしてわたしはこの発見から新たな境地に辿り着いた。


 後輪かわいそう。


 前輪も後輪も同じ距離を走っている。なのに後輪の方が負担が大きい。なんて不平等なの!負担の大きい分だけ何かボーナスでもあるならまだいい。前輪より休暇を増やすだとか(いや無理)、質の良い空気を入れてもらえるだとか(なにそれ)。当然そんなものはない。まったく、後輪に人権はないのか?“平等・公平”がセオリーの今じゃ訴訟もんよ。



「ねぇ、後輪さん!あなた自転車って不平等だと思わない?」

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