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アメリカ独立戦争(北部戦線)

　1777年10月、サラトガの戦い後、ジョン・バーゴイン将軍の率いていたイギリス軍が降伏した。そして、フランスが参戦し、アメリカ合衆国を認知して軍事同盟を結んだ。

　フランスは、独立のために戦うアメリカを支援するため、大西洋を越えて艦隊と陸軍を派遣した。更にカリブ海や東インドでも軍事行動を行っている。

　フランスは、スペインにも参戦する様に圧力を掛けたが、スペインはすぐには応じなかった。1779年になって、ようやくスペインが参戦する。こうして、他の戦域におけるスペインの行動によって、イギリス軍は軍事資源を分散せざるを得なくなった。

　イギリスは国際情勢の変化によって、北アメリカにだけ注力する訳にはいかなくなる。西インド諸島、インドなど他の植民地の防衛も考えなければならなくなったのだ。

　更に、フランスによるイギリス本土侵攻の脅威に対する防衛などに、陸軍や艦船などの軍事資源を振り分けざるを得なくなったのである。

　北アメリカでは、イギリス軍が1778年にフィラデルフィアから撤退していた。そのため、戦争の残り期間はニューヨーク市を北アメリカの本部としている。

　そして、南部戦略を開始し、ジョージア、ノースカロライナ、サウスカロライナおよびヴァージニアの各植民地を支配しようとしていた。イギリスでは、南部地域のロイヤリスト的感情が強いと信じられていたのだ。

　戦争の残り期間で、北アメリカの軍事行動は南部における作戦によって集中された。しかし、イギリスの強固な基盤であるケベック、ニューヨーク、ロードアイランド、及びノバスコシアでも戦闘や襲撃が起こっている。

　イギリス軍は、サラトガの惨劇の後に部隊を統合させ、アメリカのロイヤリストや同盟インディアンを多数徴募した。徴募によって軍の不足分を補い、フロンティアにあるパトリオット開拓地の襲撃に向かわせたのである。

　イギリスの海軍力は、アメリカに対して勝っていたので、ニューイングランドの海岸線に対する襲撃や水陸両用作戦を展開させた。

　アメリカの軍事戦略は、フランスの参戦によってある程度広がっている。アメリカの国土は、大軍であるイギリス軍によって、まだ支配されていた。そのため、大陸軍はフィラデルフィアやニューヨーク市の郊外で防御的姿勢を採り続けていたのだ。

　1778年初期にイギリス軍がフィラデルフィアからの撤退を始めている。7月、フランス海軍がフィラデルフィア沖に到着したことで攻勢に出る見込みが立ったのだ。

　大陸軍が大規模な行動に出る一方で、ニューヨークとペンシルベニアの北部や西部のフロンティアにいる民兵や開拓者は、イギリス軍がケベックの拠点から組織したインディアンやロイヤリストによる襲撃に対応する必要があった。

　アメリカとイギリスの両軍は、敵をイライラさせたり、自軍の意図を悟られないようにするために工夫した探りや陽動の行動を採っている。

　イギリス軍のヘンリー・クリントン将軍は、ニュージャージーのリトルエッグハーバーにあった「反乱軍の海賊の巣を掃討する」ために軍隊を派遣した。1778年10月の襲撃（チェスナットネックの戦い）では、カジミエシュ・プワスキの軍団を急襲している（リトルエッグハーバー虐殺）。

　クリントンは、この襲撃から注意を逸らす目的で、ニュージャージー北部にも軍隊を派遣していたのだ。この行動の最中の9月27日に、チャールズ・グレイに率いられたイギリス兵1個中隊が、ジョージ・ワシントン軍の睡眠中の1個中隊を銃剣襲撃している（ベイラー虐殺）。

　1779年5月、クリントンはハドソン川の主要渡河点の片側を守っていたニューヨーク植民地のストーニーポイントの前哨基地を占領した。その後、クリントンは部隊から兵力を割いて、ウィリアム・タイロンの海岸部襲撃に向わせている。

　タイロンが海岸部襲撃に向かっている間に、ワシントンはストーニーポイントを取り返す攻撃を行わせた。7月16日、アメリカ軍はストーニーポイントを取り返すことに成功している（ストーニーポイントの戦い）。

　クリントンは、南部戦線侵攻のための作戦の一部として、部隊をニューヨークに撤退させた。1779年の後半、ライトホース・ハリーがアメリカ軍を率いて、現在のニュージャージー州ジャージーシティにあったイギリス軍の基地を急襲する（ポーラスフックの戦い）。その結果、ニュージャージー北部のイギリス軍支配は弱まったのであった。

　1780年初期、イギリス軍はニューヨーク植民地ウェストチェスター郡のアメリカ軍前哨基地を攻撃している。そして、アメリカ軍に損失50名を出させ、75名を捕虜にした（ヤングズハウスの戦い）。

　ニューヨーク地域での最後の注目すべき戦闘は、1780年6月にイギリス軍がニュージャージー植民地モリスタウンにあった大陸軍宿営地を攻撃である。そこで、ニュージャージー北部の支配権を再度得ようとした企図していたのであった。

　そこでは、緒戦にコネチカット農園の戦いが起こっている。その後、大陸軍ナサニエル・グリーン将軍が指揮する約2000名の部隊が、2500名以上のイギリス正規兵に対して宿営地守り抜いている（スプリングフィールドの戦い）。こうして、イギリス軍のニュージャージー北部に対する野望は潰えたのであった。

　1777年以降、アメリカ北部の海岸では大きな軍事行動は無かった。ただし、イギリス軍はコネチカットやマサチューセッツの海岸部にある地域社会に対して、一連の襲撃を敢行している。

　1778年5月、ロードアイランド植民地のブリストルとウォーレンを襲撃した。更にマサチューセッツ植民地のフリータウンでの小戦闘（マウントホープ湾襲撃）が起こっている。

　同年9月、同じくマサチューセッツ植民地のニューベッドフォードとマーサズ・ヴィニヤードに対して、グレイ将軍が部隊を率いて襲撃（グレイの襲撃）をした。

　1779年、ウィリアム・タイロンが率いた部隊によって、コネチカット海岸への一連の襲撃が行われている。

　最も激しかった襲撃は、1781年のニューロンドンに対するもの（グロトンハイツの戦い）であり、イギリス軍に寝返ったベネディクト・アーノルド将軍が率いたものだった。

　ロードアイランドとマサチューセッツ植民地のメイン地区でも、数少ない大規模戦闘が起こっている。その最初のものは、アメリカ軍とフランス軍が連合でロードアイランド植民地ニューポートから、イギリス軍を追い出そうとした作戦だった。

　1778年8月、この作戦は悪天候と意思疎通のお粗末さに災いされ、フランス軍が上陸を果たすことが叶わなかった。そのため、目的を果たさずに終わっている（ロードアイランドの戦い）。

　1778年の夏、ロンドンのイギリス軍参謀は、ペノブスコット湾に新しくロイヤリストの開拓地を建設する作戦を立て始めた。そのための遠征隊として、1779年5月30日に軍隊と物資を積んだ艦隊がノバスコシアのハリファックスを出港している。

　イギリス軍は2週間後に目的地に到着し、湾の東側に一連の防御施設を構築した。マサチューセッツ植民地は、大陸会議からの支援がほとんど無いまま、イギリス軍を追い出すための遠征隊を編成することとなる。

　アメリカ軍の遠征隊は、艦隊が全て破壊され、遠征隊の半数は戦死、捕虜または負傷するという悲惨な結果に終わった（ペノブスコット遠征）。この結果は20世紀に入るまで、アメリカ海軍にとって、最悪の敗北となる。

　アメリカ軍の遠征の失敗は、陸軍と海軍の間の命令体系がうまく取り決められていなかったことに原因があった。また、救援のために到着したイギリス艦隊と戦ったダドリー・サルトンストール代将の失敗も1つの要因となっている。

　サラトガの後から終戦まで、北米のフロンティアでは残忍な小競り合いが続いていた。

　それらの戦いは、主にロイヤリストのウォルター・バトラーとジョン・バトラー及びモホーク族のジョセフ・ブラントたちの指揮下にあったロイヤリストやイロコイ族によって遂行されていたのだ。そして、彼らの部隊は、ケベックのイギリス軍から支援されていたのであった。

　1779年、ワシントンはインディアンの攻撃を鎮圧するため、ジョン・サリバン将軍を懲罰的遠征に派遣した（サリバン遠征）。

　サリバンとその部隊は、体系的にイロコイ族の集落を破壊して行く。そして、イロコイ族をケベックにまで追い出すことに成功した。

　この遠征における唯一の大きな戦闘は、ニュータウンの戦いである。そこで、バトラーとブラントの部隊をサリバン軍が破ったことだった。

　ブラントはその後も、アメリカ側に立ったオナイダ族やタスカローラ族の集落を標的にした襲撃を率いている。アメリカとイギリスの両軍によって、インディアン集落は破壊されていく。それまでのイロコイ族の領土からは実質的に人が居なくなり、襲撃の生存者たちは難民になっていった。

　バトラーたちは、ニューヨークのフロンティア地域への攻撃を続けていく。一方、ブラントは西部戦線でより活発に活動した。

　1782年4月初旬、ショーニー族インディアンの攻撃に対して、ミラーのブロックハウスの砦にいたアン・ハップは、砦を24時間以上も守り続けている。アンは妊娠8ヶ月の身重であり、夫は殺されて頭皮を剥がれたにもかかわらずだ。

　休戦の予備合意がなされた後も、ブラントは戦争を続けようとした。しかし、イギリス軍が補給を止めたため、ブラントも継戦を諦めざるを得なくなった。