第16話 はじめてのほばく
「馬車が、見えて来ました!」
あの後が、大変だった。襲撃されてた連中を振り切って、『第一戦闘形態』『影化』『保護色』を解除し、森から飛び出す俺。
「あっちに、馬車1台と、けが人が沢山いる。」
そう言う意味合いで、馬久兵衛さんを説得し、例の馬車の所まで、馬車3台でやって来た訳だ。が……
「あー、手を貸して貰えませんかね。ついでに、縄も。」
スキンヘッドの男が、話しかけて来る。その間、黙々と粛々と淡々と賊共を縛り上げる二人の女。よく見れば、双子の様に瓜二つだ。
ここで、『素晴(すうぱあ)』と名乗ったスキンヘッドだった。素晴は、ここで起こった事を、かいつまんで説明する。
「兎に角、俺っちも、不意討ちで襲われて、何が何だか。兎に角、こいつらを官憲に、突き出さないと。ご協力お願い致します。」
礼をする素晴。快諾する馬久兵衛だった。
”分かっておるか。”
【賊共から、漂う臭いの事か。】
”左様。あれは、『魔族』共が、使う魔法ぢゃ。”
【『魔族』……そう言ったって、誰だか分からねぇーっつーの。『人間』って言ってんのと、変わらねぇーよ。】
”ふん! 熟練の術者であれば、左様な事すぐ分かるであろう。修行不足ぢゃ。”
【つまり、魔法に関する知識の足りないお前には、さっぱりと言う訳か。】
”ぢゃかあしい! わらわは、左様に些末な事など知らぬわ! 但し……。”
「但し?」
”この魔法をかけた術者と、相見(あいまみ)える事あらば、分かるであろう。”
【何だ。直接顔を視ないと分からないのか。それより、どんな魔法なんだ。それくらい分かるだろう。】
「相見える(あいまみえる)の意味を正確に知ってるって、何処の中学一年生だよぉっ!」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。
”あ奴らは、『操られて』おるのぢゃろうて。恐らく、此度の事、覚えておるまい。”
「おひおひ……言うに事欠いて、駄洒落かよ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。
【だとすると、長引くかもな。……】
縄の使い方も、満足に知らない俺は、雑用から除外されていた。むしろ、邪魔にならない様、馬車の中で大人しくしていた。そこに……
「そう言えば、馬久兵衛さんの所には、黒い全身鎧を着こんだ人物は、いませんか?」
馬車の外から、ス……素晴の声が、聞こえてきた。
「は? いません。誰なんです?」
「実は、多勢に無勢のうちらを、助けてくれたんですよ。お礼を言う前に、立ち去ってしまったんで、何かご存じなら、そう思った次第です。」
「……うーん、申し訳ありませんが、見ていません。もし、見掛ける事があれば、伝言をしておきましょう。」
「お世話になります。」
そんなこんなで、賊共を全員捕らえる事が、できたのだった。しかし……
「龍一様、先程馬車から離れた時にも、言いましたが、『くれぐれも、無茶無謀無策な事は、おやめください。』分かりましたね。」
「もっ……モチロンダヨ……。」
「もし、あなたに、何かあったら、ごんぞうさんに、申し訳ありませんから。」
馬車の中で、馬久兵衛さんかた刺された釘に、頷くしかなかった。
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