伝説の彼氏。それを見守る幽霊彼女

渋谷かな

第2話 伝説1

人間界。

「俺は彼女を生き返らせてみせる!」

 大好きな彼女は世界的に流行したロナ・ウイルスに感染して死んでしまった。

「渋谷に行けば死んだ人間が生き返るという伝説があるんだってよ。」

 誰かが言っていた。あり得ないはずの死んだ人が行きかえる伝説。

「よし! 俺は渋谷に行く! 行って彼女を生き返らせるんだ!」

 彼氏は彼女を生き返らせるために渋谷に向かう。


邪界。

「なんてアホなんだー! そんな伝説がある訳ないだろうが!」

 邪女は彼氏を愚かに思った。

「でも純粋で美味しそうな魂だ。おまえたち、あいつの魂を取ってこい。」

「はい!」

 邪女の手下が彼氏の魂を求めて人間界に向かう。

「愛されるなんて許さない! ・・・・・・だって私も愛されたいもん。アハッ!」

 ただの女の嫉妬であった。


人間界。

「レッツ! 渋谷!」

 彼氏は彼女を生き返らせるために渋谷に向かう。

(私のために危険を冒すなんて! 感動しちゃう! 私が彼を守らなくっちゃ!)

 死んだ彼女は幽霊となって彼氏を見守っているのだった。



「伝説の彼氏。それを見守る彼女。」



 少し前の人間界。

「うえ~ん! どうしてだ!? どうして俺を残して死んだんだ!?」

 彼氏は彼女が死んで泣いていた。

(え? 私はここにいますけど?)

 しかし彼女は彼氏の側でピンピンしていた。

(あれ? 聞こえないのかな? それにあそこで寝ているのは私?)

 彼女は新型ロナ・ウイルスに感染して死んだので、彼女の体は二度と動くことはなかった。

(そうです。あなたは死んだんですよ。)

 そこに黒服が現れる。

(ええー!? 私って死んじゃったの!?)

 彼女は初めて自分が死んだことを知った。

(はい。そうです。もう彼氏にはあなたの声も姿も見えません。)

(これでも?)

 彼女は服を脱いで見せる。

(ほれほれ。)

 彼女は裸で彼氏の目の前に立つが彼氏はまったく反応しない。

(・・・・・・本当に私って死んだんだ。ガックシ。)

 初めて彼女は自分が死んだことを自覚した。

(落ち込んでばかりはいられませんよ。)

(そういえば、あなた誰? 私をあの世に連れていく死神なの?)

(いいえ。自己紹介が遅れました。私は神様の使いの天使です。)

 現れたのは天使だった。

(紛らわしいから黒服なんか着るな!)

(オシャレは自由です!?)

 初対面だが意外と気が合っている彼女と天使。

(で、天使が私に何の用なのよ? 私を天国に連れていってくれるの?)

(その前に一言。生きた人間にはあなたの姿は見えませんが。生きた人間でない者にはあなたの姿は丸見えですよ。)

(え?)

 彼女は自身の姿を見返して顔が真っ赤になる。

(キャアー! 痴漢! 変態! 死ね!)

(アベシー!?)

 彼女は天使に左アッパーを食らわせる。

(ブレイク!? ブレイク!? 殺さないで!? 神様のお言葉を伝えますから!?)

(神様の言葉?)

 怯えて震える天使。

(あなたの彼氏はあなたを愛する純粋で美しい一途な心を持っています。)

(そうそう。私って愛されてます。アハッ!)

 彼氏が褒められると自分が褒められているみたいで嬉しい彼女。

(ですが、その純粋な魂が稀なので、あなたの激レア彼氏は邪神の女神、邪女から狙われています。)

(ぬわんですって!?)

 激レア彼氏の危機である。

(そこで神様があなたの彼氏を守る為に神の使途である私を派遣されたのです。私はこういう者です。)

(これはご丁寧にどうも。)

 天使は彼女に一枚の名刺を渡す。

(幽霊の家庭教師?)

(はい。私は幽霊のあなたが彼氏を守れるように教育する幽霊の家庭教師です!)

 天使は彼女を戦える幽霊にする家庭教師だった。

(私は死んだばかりですが何をすればいいんですか?)

 彼女は新米の幽霊。

(大丈夫です。あなたから膨大な霊気が溢れています。)

(え!? 私、漏らしてないわよ!?)

 彼女は自分の下半身を見回す。

(そういう意味ではありません。霊気は目では見えないものです。分かりやすくいうと、あなたの霊力が高いということです。)

(知らなかった!? 私って優秀な幽霊なのね!? 死んで良かった! アハッ!)

 恐ろしく前向きな彼女。

(これよりあなたが彼氏を悪い奴らから守れるように特訓します!)

(おお! 絶対に私の彼氏は誰にも渡さないんだから!)

 彼氏への未練が幽霊彼女が地縛霊に変わる瞬間である。

(あれ? この人から妖気を感じるような?)

 妖気とは妖怪の放つ気である。

 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る