第7話 光の騎士団

 ◇◇◇◇◇


 王宮で皇太子クラウスがヴェルナー対策会議をしていた、ちょうどその頃。

 ラインフェルデン皇国王都の一角で、別の会議が開かれていた。


 七人の者たちが険しい顔を付き合わせている。

 いや、七人というのは正確ではない。人族だけではないのだから。


 彼らは「光の騎士団」を名乗る秘密結社の最高幹部達だ。


「目障りなケイがいなくなった今がチャンスではあるのだが……」

「ケイには弟子がいるだろう? あいつが邪魔だ」

「あの弟子はクビにした」

「仕事がはやいな」

「ああ、こういう時のために、ゲラルド商会を通じて、学院長や魔導具学部長に金を握らせていたんだからな」


 幹部たちが順調に計画が進んでいることに邪悪な笑みを浮かべる。



 光の騎士団は、非合法な秘密結社である。

 だが、合法的な公然部門もしっかりと存在していた。


 それは「神光教団」という名の急成長中の新興宗教である。

 光の騎士団は、神光教団の秘密の最高指導部でもあるのだ。


 その「神光教団」には予言があった。予言の内容は、


『悪しき者たちが跳梁跋扈し、この世界は戦乱や災害、疫病によって覆われる。

 だが、心配してはいけない。

 近いうちに神の光が世の中を包み、信者は救われるのだ』


 その予言を実現させるため「光の騎士団」は、この世の中に戦乱を巻き起こそうとしていた。


 その目的のためには、凶悪な魔物とも手を結ぶし、井戸に毒をまくこともある。

 非常に危険な集団だった。


「ケイの指導下の研究室にて、開発中だった魔導具の全ては魔導具学部長が手に入れた」

「おお、これでケイの魔導具が、我らが手に入れられると言うものだな」


 幹部の一人が、ぽつりと言った。


「だが懸念点がある」

「なんのことだ」

「近年、ケイは魔導具を作っていないらしいという話を聞いた」

「それはないだろう? 実際に八年前の戦争で使われた爆弾が……」

「作ったのが誰かはわからぬ。だがケイではないらしい。確度の高い情報だ」


 そして幹部の一人がぽつりと言う。


「私は爆弾の開発者のことを『隠者』と呼んでいる」


 凄まじい魔導具を開発しているのに、名前が出てこない。

 ケイに近しいらしいことはわかっているが、正体が掴めない。


「ケイの弟子が作っていた可能性はないか?」

「それはない。弟子はまだ二十歳。爆弾が作られたとき、まだ十二歳の子供だぞ」

「そうだな。さすがにそれはあり得ぬか」

「ケイがどこに行ったかつかめていない以上、弟子を調べるしかなかろう」

「『隠者』に繋がる手がかりを手に入れるには、それしかないな」


 そして光の騎士団の者たちは、会議を続ける。


「隠者」の正体を探るため、ヴェルナーの動きを見張る。

 同時に、魔導具学部長の手によってケイ研究室の魔導具を完成させる。


 その二つを同時に実行することにした。



「隠者を自由にさせている限り、光の神の国は訪れぬであろう」


 光の騎士団の最高幹部たちは、隠者の正体を暴き、抹殺することに全力を尽くすことを決めた。


「神の国のために!」

「「「神の国のために!」」」


 高らかに宣言されて、会議は終わった。

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