僕はレイジ。魔導体術(魔法+武術)の学院に通う、16歳。学院長の息子にいじめられ、学院から追放。その後なぜか、最強無双の道が開けた! 学院長の息子よ、今の僕は、君を一撃で倒せるけど、試合する?
第20話 修学旅行で、きれいな女の子に告白された!
第20話 修学旅行で、きれいな女の子に告白された!
十一月のある日の朝。僕、レイジ・ターゼットと、エースリート学院の生徒たちは隣国カガミラにある「宮廷保養訓練施設」に旅立つことになった。グラントール王国の魔導体術養成学校では、十一月は修学旅行のシーズンだ。
エースリート学院は千人もいるので、今回の修学旅行は、三グループに分けて旅行する。初回は僕ら4年B組を含めた、約三百人だ。
「おいっ、レイジ。修学旅行、楽しみだなー。最近、ずっと練習漬けだったからよぉ」
ケビンは駅まで歩いていく最中、目を輝かせてつぶやいた。
僕らエースリート学院の生徒たちは、ランダーリア駅から
どうもルイーズ学院長はうかない顔だが……。
僕たちは整列して
「おい、あんたレイジってんだろ」
振り向くと、制服のポケットに手を突っ込んだ少年が僕をにらみつけている。刈り込んだ金髪で、制服を着崩している。間違いなく不良だ。うわぁ……僕の超苦手なタイプ。彼の胸のバッジを見ると、「3」と書かれているので、三年生。下級生だ。
「この間の試合、勝ったんだって? オレ、観てねーんだわ。あんたが強いっての、とても信じられないんだけどよ」
「えーっと……」
「あ? 何、ボソボソ言ってんの? 俺に勝てんの?」
彼は身構える。うわ、こいつ、駅のホームで闘う気まんまんだ! 冗談じゃない。
「おい、バーニー。よせよ。もう汽車がくるってよ」
後ろから、彼の仲間が笑いながら彼に言う。ボーラスに勝ったのに、下級生にすごまれる僕。情けない……。
僕らは
敷地面積は百ヘクタール。僕は数学は苦手だが、とんでもなく広いってのは分かる。
「うわぁ、すげえ」
「豪華~」
生徒たちは歓声をあげる。
全面ガラス張りの美しい玄関に入ると、中は豪華ホテルのようなロビーだった。
「最高だぜ、なあ」
ケビンがつぶやく。
「大金持ちになったような気分だぜ」
部屋は何と一人一部屋。ベランダ付きで、風呂とプールもついている。
さっそく僕らは食堂に昼食を食べに行く。
カガミラ若鶏の香草焼き、塩ドレッシングをかけた野菜サラダ、アンギラス(川魚)のスパイス焼き、粗びき小麦のパン、カガミラ牛のコンソメスープ、特製プリン。
カロリーや脂肪分も計算に入れたメニューだ。しかも美味い。
「うむ、まろやかな味わいだ」
ベクターが上品に口をぬぐった。
「しかも栄養価も高いし、カロリーも調整されている。言うこと無しだな」
昼食を食べ終わると、若い女性係員に、訓練所を案内された。まずは訓練所の裏手に案内された。
「う、うわああー」
生徒たち全員が声を上げた。目の前は海が広がっていたのだ。生徒たちは裸足になって、海に入ったりしている。皆、大はしゃぎだ。
ケビンは、「ぬおおおー」と叫んで、砂浜ダッシュを始めた。
「ケビン、初日で疲れるって……」
僕は苦笑いしてケビンに注意した。アリサは友達のミーナと砂遊びをしている。小学部の子みたいだなあ……。
訓練所の練習施設も最新式の鍛錬器具でいっぱいだった。
特にウエイトトレーニング機器は、魔導の知能が機器に入っており、その人に合った重量を自動で計算してくれる。
シャワー、風呂も当然完備。百種類の石鹸、五十種類のバスソルトや三十種類の入浴剤が取り揃えてある。これは女子たちに大好評だった。
さて、訓練所の奥には体術用試合リングがある。練習試合をやっているみたいだから、見せてもらおうかな。僕は練習試合なんか、誘われてもしたくないけど……。
「なあ、レイジ先輩」
ん? 聞き覚えのある嫌な声がした。後ろを振り返ると、さっき駅のホームで絡んできたバーニーという下級生がいた。こいつかぁ……。
こんな時にケビンやベクターがいない。土産物でも見てるのか?
「いっちょ、勝負しましょうや。リングに上がらなくてもいいっしょ。今、ここで。和やかな練習試合ってことでさ」
バーニーは僕をにらみながら言った。何が和やかだ。
「や、やめとく」
「は? オレ、十五歳の部の大会、八位入賞だよ?」
「練習試合の気分じゃない」
「は? ナメてんの? やっぱ弱ぇんじゃねえの?」
彼の取り巻きが、後ろのベンチの方でゲラゲラ笑っている。
「先輩、体術グローブ、つけてくれよ。ここ、新品を貸し出してるんで」
バーニーは、僕に体術グローブを放った。やるつもりか……。僕は渋々、体術グローブを拳にはめた。バーニーといえば、もうすでに体術グローブをつけている。
「で、いつ
バーニーはなんて言いながら、いきなり殴りかかってきた。
僕は彼のパンチの右手の平で押さえた。パンチにスピードが出る前に、彼の拳を受け止めた。
「なっ……」
バーニーは驚いた様子で、右手を引っ込め、今度は左フックを打ち込んできた。
――ここだ!
パンッ
鋭い音が響いた。
「ゴベッ」
バーニーはうめき、腹を押さえて床に倒れ込んだ。床は木の板でできているので硬い。僕は彼が頭を打たないように、素早く頭を手で支えてやった。
うおおおっ……。
周囲の野次馬は声を上げた。僕のカウンターの右ボディーブローが、バーニーの腹に、完全に決まった。
「なん……でそんなことが……できるんだ? 速ぇ……」
バーニーは立ち上がろうとしたが、よやよたと腹を押さえてまた床にしゃがみ込んだ。
「フックは挙動が大きい」
僕は説明してやった。
「ボディーブローの方が早く相手に届くってわけだ」
「そ、それにしたって……急所を……完全に……。人間……技じゃねえ……。あんた一体……?」
「大丈夫か? 医務室に行くか?」
「う、うるせえ、お、覚えてろ!」
バーニーは再び立ち上り、腹を押さえてヨタヨタと通路の方に逃げていった。彼の仲間たちが、僕をにらんでいる。
はあ、勝手にしてくれ。挑んできたのはそっちだろ。
「あ、あのー」
こ、今度は何だ?
右の方を見ると、そこにはスラリとして美しい女の子が立っていた。ん? 誰だ? 見たことのない女の子だ。
「レイジ君……ですね?」
「そ、そうだけど」
僕は女の子を見やった。黒髪のロングヘアで前髪はおかっぱ。身長は165~167センチくらいだが、とてもスリムだ。僕と同じくらいの年齢、十六、七歳くらいか。美人なので、野次馬たちが皆、その子のことを見ている。
でも、彼女が羽織っている
「好きです」
「は、はい?」
「レイジ君……好きです」
い、いきなり告白ぅうう!
反対の左の方を見ると、アリサが腕組みをして、ふくれっ面で僕を見ている。しかも、さっきの騒ぎで、野次馬はまだ僕の周囲にたくさんいる。
皆、僕と女の子を見て、色々、噂をし始めた。
「ほう」
「告白か」
「いいねえ」
こ、これ、公開告白状態じゃないか!
え、えらいことになった。
この女の子、一体、誰なんだ? 女の子は恥ずかしいのか、顔が真っ赤だった……。
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