僕はレイジ。魔導体術(魔法+武術)の学院に通う、16歳。学院長の息子にいじめられ、学院から追放。その後なぜか、最強無双の道が開けた! 学院長の息子よ、今の僕は、君を一撃で倒せるけど、試合する?
第18話 僕、学院の英雄に! & ルイーズ学院長の会議①
第18話 僕、学院の英雄に! & ルイーズ学院長の会議①
僕がボーラスに勝利した二日後。エースリート学院全校生徒は、校庭での朝礼に呼び出された。ケビン、ベクター、アリサ、そして僕――レイジ・ターゼットは壇上に立っている。
全校生徒約千名が、皆、僕らの方を見ているのだ。すごい光景だ。
生徒指導長であり六十代の中年男、マダール・ピムは壇上に上がり、全校生徒の前で、
「おとといの我がエースリート学院とドルゼック学院の試合、諸君は客席で応援していたと思う。我々、エースリートの代表メンバーは、見事、勝利をおさめた!」
全校生徒は大拍手。ピム先生は横にいる僕を指差した。
「中でも、エースリートNO1の実力を誇るレイジ・ターゼット君は、あの巨漢、ボーラス・ダイラント選手を一撃で倒してしまったのだ!」
また大拍手。僕は頭をかいた。
「さあ皆さん、ご一緒に! 万歳三唱! バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!」
げええ? ば、万歳三唱? やりすぎじゃないの? 僕はそう思ったが、生徒たちも一緒になって、万歳三唱している。ノリがいいなー、皆。
僕は恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。ケビンとベクターは苦笑いしている。
一方、僕のセコンドについてくれたアリサといえば、目をうるませている。やがてハンカチを取り出して、涙をふいた。
「お、おい」
僕は驚いてアリサに聞いた。
「ど、どうしてアリサが泣いているんだよ」
「だって……。レイジ、頑張ったもん。あたし、誇らしくて……」
まいったなあ、本当に。生徒たちは、僕たちに声援を送ってくれている。ピム先生は拍手や万歳を手でおさめ、言った。
「さて、ドルゼック学院を打倒した記念だ。我々は何と、『宮廷保養訓練施設』に、二週間宿泊できることになった!」
ドオオオオッ
今日、最も強い、生徒のどよめきが起きた。整列した生徒たちの声が聞こえてくる。
「マジかよ……『宮廷保養訓練施設』といえば、超豪華な王立の保養施設だぜ」
「ああ。温泉、遊園地、プール、遊び場……。すごい施設が何でもあるって聞くぜ」
「すげえ、すげえよ!」
生徒指導長の言葉に、僕も驚いた。「宮廷保養訓練施設」は、グラントール王国国王の護衛隊、「宮廷護衛隊」のための保養、訓練施設だ。すさまじいお金がかけられた豪華な宿泊施設で、一般人は立ち入ることすらできない。
しかし今回、どうやら特別に許可が出たらしい。
すると、僕の横に立っていたケビンが首を傾げながらつぶやいた。
「でも、何で急に、そんなすげぇ場所に宿泊できることになったんだ?」
「事情を推理すればだな」
ベクターが眼鏡を擦り上げながら言った。
「エースリートは六年前から、ずっとドルゼックに負け越していた。今回の勝利を観戦したエースリートの後援会の老人連中が、それはもう喜んだらしい。エースリートの後援会が、僕たち生徒をねぎらおうと、宮廷にかけあったんだと思う。なぜ宮廷がOKを出してくれたのかは、知らんが」
僕はため息をついた。それにしても、こんなに大騒ぎになるとは。ちょっと恥ずかしい。
整列したクラスメートから、僕たちに声がかかる。
「レイジー! お前らは学園の英雄だ!」
「二月の、グラントール学生大会の個人戦も頼むぞ!」
そ、そうだった。学生大会の個人戦が、来年二月にある。エースリート学院は、今年の十二月の冬期団体戦は出場しないことになったから、個人戦に集中しているんだった。はああ……。プレッシャーかかるなあ。
あれ? ところでルイーズ学院長がどこに行ったんだ? 姿が見えないようだけど。
しかしその時ちょうど、このエースリート学院がとんでもない事態に陥っていることを、僕は知らなかった……。
◇ ◇ ◇
その頃、ルイーズ学院長は、「宮廷直属バルフェス学院」の前にいた。目の前にそびえるのは、七階建ての巨大な校舎だ。校舎の横には、とてつもなく広い体育館がある。その横にはバルフェス学院が勝ちとった賞状や盾、トロフィーを展示してある博物館もある。
「まったく……何から何まで、エースリートとは比べ物にならないくらい豪華ね」
ルイーズ学院長はため息をつきながら、校舎の玄関に入った。
生徒数はたった三百人。しかし、その生徒一人一人に、大人の指導者がつく。
まさに「宮廷護衛隊」を目指す学生のための魔導体術のエリート養成学校だ。
ルイーズ学院長は、一階の会議室に入った。
机の前に、体のでかい中年の男と、白いローブを羽織った十六、七歳くらいの目の鋭い、賢そうな少年が座っていた。
中年男は、髪形をオールバックにした筋骨隆々の男。身長は192~193センチ、体重は88キロ前後あるだろう。
「久しぶりね、デルゲス」
ルイーズ学院長は、彼の手前に座った。この中年男こそ、第九十代
彼は座っているだけで、すさまじい威圧感がある。
ルイーズ学院長は聞いた。
「あなた、おとといの学生対抗団体戦には来ていなかったようだけど……。どうしてあなたまで、ここにいるの?」
「俺は、
デルゲスは、ルイーズ学院長をにらみつけた。
「ルイーズ、おとといは、恥をかかせてくれたな。俺は仕事で見に行けなかったが、息子が泣いて帰ってきやがったぜ」
「私たちを――エースリートをナメてるからよ、デルゲス。息子は拳に『
「何?」
デルゲスが立ち上がろうとした時、隣に座っていた白ローブの少年が、「話し合いをしましょう」と言った。
「ルイーズ学院長、僕は宮廷直属バルデス学院、指導長のディーボ・アルフェウスです。生徒ですが、三ヶ月前、魔導体術指導長に就任しました。よろしく」
「えっ、何ですって?」
ルイーズ学院長は驚きの表情で、このディーボという少年を見やった。身長は160センチ前後くらい。体重は、58キロから60キロ? レイジと同じくらい小柄。目が鋭い少年だ。
この少年が、学院の
「どういうこと? あなた、生徒じゃないの?」
ルイーズ学院長は目を丸くして、少年を見た。
「十七歳ですから、バルフェスの生徒ですよ。生徒としては午前中まで。午後からは
「は、はあ……」
ちなみに、エースリート学院の魔導体術指導長は、ルイーズ学院長が兼任している。ディーボは口を開いた。
「僕は、
ルイーズ学院長は、眉をひそめてデルゲスを見た。
「ディーボの言っていることは本当だ」
デルゲス・ダイラントは真面目な顔で言った。
「グラントール王国最高の
デルゲスは笑って言った。
ルイーズ学院長は注意深く、このディーボという少年を見た。
「例えば、指導用の
ディーボはすずしい顔で言った。
「生徒の食事に関してもカロリー、脂肪分、すべてチェックして管理。個々の能力は数値化しています」
恐るべき少年がいたものだ、とルイーズ学院長は思った。
「も、もう分かったわ、ディーボ。さて、今日は、大切なご用があるとか……?」
ルイーズ学院長は、丁寧に、ディーボに言った。
「宮廷は、私たちエースリートの生徒を、宮廷の保養施設に誘ってくださいました。感謝しているわ。話は、そのことかしら?」
「そんなにのんびりした話ではありません」
ディーボの目がギラリと光ったようだった。
「魔王が復活するかもしれないのです」
「何ですって?」
ルイーズ学院長は驚きの表情で、それでいて眉をひそめて、ディーボを見た。
ディーボは話を続ける。
「もちろん、魔王はまだ復活などしていません。でも、復活するかもしれないと言い出したのは、宮廷の
魔王が復活するかもしれない。この言葉は、グラントール国民、いや全世界の人間に恐怖を与えることだろう。魔王と人類の争いの伝説は以下のように伝わっている。
二千年前に、
それ以来、魔王は
この話は、グラントール国民にとって伝説なのか事実なのか、あいまいなところだ。ルイーズ学院長にとってもそうだった。
すると、デルゲスが腕組みをしながら口を開いた。
「最近、草原を徘徊する魔物が増えているのも、魔王復活の可能性に関係があるのだろう」
「預言者たちは、なぜ『魔王が復活する』などと言い出したの?」
「
デルゲスの口調はふざけていない。息子のボーラスはバカ同然の少年だが、この男は体格に似合わず、頭が切れる。
今度はディーボ・アルフェウス少年が口を開いた。
「ルイーズ学院長、
「……少年少女、国民の心身の育成のため……じゃないかしら」
「綺麗ごとを言っては困りますよ、ルイーズ学院長」
ディーボは挑むような口調で言った。
「あなたはわかっているはずです。
「そ、それは」
ルイーズ学院長は、くっ、と息をついた。
「ま、
ルイーズ学院長の言葉に、ディーボはニヤリと笑った。
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