1 クラスメイト
「ツッコミソードを手に入れたよ」
へなへなのハリセンを手に、
「あはは、
「いや、なんか、俺が恥ずかしい感じ…… うわ、はるきくんも叩かれてんじゃん! 髪ぺしゃんこ!」
ふわふわとした金髪が不自然に潰れている。後頭部に触れて、ほんまや〜と笑う彼は、クラスメイトの
「気づかなかったの? オレも叩き起こされたよー」
「
もそもそと机に伏せって頭を引きずってきた彼は、
「あはは、おはよ〜。編集に夢中やったから気づかんかったや〜」
「おお…… 次の配信?」
その中でも段々UP!は専用チャンネルを用いて、動画配信を頻繁に行なっている。彼とその相方と、二人だけで作り上げているのだから驚きだ。
後ろから覗き込んでいれば、ふっと平べったい影が落ちた。
「えいっ」
「痛っ! いやただの暴力! ツッコミですらない!」
「ツッコミだよ。ナルは存在がネタだからね」
「今度は言葉の暴力!」
クラスを回り終えた芧だ。るんるんとハリセンを振り回し、鳴の頭をぺしぺしする。その光景に噴き出し、はるきは二人に向き直った。
「でもびっくりしたよ。夏休み明けたら、まさか鳴くんが鷺山くんとユニット組んでるとは思わんかったもん」
「あ、オレも思った。仲良さそうとは思ってたけど」
「おれもビックリです……」
相変わらず襲い掛かるハリセンを手で払い、鳴はぐったりと項垂れる。嬉し恥ずかし、なんとなくいたたまれないのだ。
「ほーや、今度ハヤラスのみんなでうちのチャンネルに出演せん?」
「えっ、ま、まじで……!」
思わぬ進言に、鳴の目が一瞬にして輝く。ネット配信、興味はあるのだ。ただ、自分が被写体となると考えると想像はできない。ちらりと横に視線を送れば、芧はお見通しかのように微笑んだ。
「ネット配信か。楽しそうだね。ハヤラスの名前を売るにしてもいいかも」
「段々UP!先輩の胸をお借りします…… あっ、でも
「OKだって」
「早い」
とんとんとハヤラス組が進める中、はるきは自身のスマホをいじっていた。ハヤラスの紹介ページだ。翔も一緒に覗き込んでいる。
「へえ、月末にハヤラスのライブあるんだ。見に行こうかなあ」
「ほやったらちょうどええんやない? 一緒に宣伝できよるし。決まりやね!」
正式に事務所を通したわけではないが、主催であるはるきから下された決定に、鳴は泡を吹くように目を白黒とさせた。
「あわわ、ソッコーで決まってくやん……」
すかさず芧がハリセンを振り落とす。
「イヨ弁移っとるやないか」
「お前もやないか」
「それはイヨ弁やないと思うよ」
「配信絶対見るけんねー!」
「翔くんまで……!」
不安定な訛りの連鎖を聞き届けながら、鳴は心を弾ませた。
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