殺人探偵のペットになりました。

@KingMatsuo

第1話 岩甲山天文台

「ハァ...ハァ...伝えないと...止めないと。土淵川先生犯人はあなたです。」


 呪い-人または霊が、物理的手段によらず精神的あるいは霊的な手段で、悪意をもって他の人や社会全般に対し災厄や不幸をもたらせしめようとする行為。

 全ての人間は呪われている。それは、家族からなのか友達なのかはたまた赤の他人からなのかそんなことは分からない。しかし、一つ言えることがある。それは、「世の中は呪いであふれてる」

 それはこの子も例外ではない。超国民的アイドル‟加藤坂47”のエース猫ノ宮華子ねこのみやはなこ

 -3年前-

「今週の週刊ステップ読んだ?呪いだって本当にあるのかな~」

「そんなの嘘でしょ。」

「いやー意外とあるのかもよ。妙に信憑性あったし」

「あるよ絶対にね」ボソッ

「ねえねえ華子は実在すると思う?」

「知らないわよ。そんなことよりファンのみんなが待っているわ。今日のライブも成功させるわよ。」

「はーい」×3 

 銀色の廊下を進む。ファンの声が聞こえる。体を熱気が包む。

「華子今日も成功させるわよ。もっともっと人気にならないと。」と自分に言い聞かせた瞬間。体の奥底が熱くなり、視界が黒に染まった。「ファンが待っているのに、今日も成功させないといけない...の...に...」

 -ピンポンパンポン-ファンの皆様にお知らせです。今日のライブ猫ノ宮 華子は体調不良のため出演しません。急なお知らせで申し訳ありません。

「華子どこに行っちゃったの」


 -現在-

 場所は山奥の岩甲山天文台がんこうざんてんもんだい。壁がマジックミラーになっており、新鮮なことから人気を誇っている天文台だが、昨夜の大雨で道はぬかるみ流石の警察も来れない環境。絶対殺人おこるだろうと読者の皆様も思ったと思います。はい、やはり殺人は起こりました。観測ドーム内で取材に来てた記者森岡 信政の射殺体が発見されました。手元には拳銃。室内は内カギがかかっていて完全密室。記者以外はみんな外でBBQをしていました。これは自殺なのか?殺人なのか?警察は来れない、殺人なら犯人はきっとこの中にいる。こんな状況怖くて寝れません。こんな時は、ペルセウス座流星群を観にこの天文台に来てた主人公を呼びましょう。土淵川光世つちぶちがわみつよ先生ーー

 ここで土淵川先生の経歴を紹介します。

 土淵川 光世 23歳 職業:名探偵・死刑囚(特級危険犯罪者) 特技:難事件解決

          備考:事件解決率100%。検挙率0%

 さあ主人公の紹介が済んだところで、事件の解決をしましょう。

「犯人は館長あなただ」

「へ?なぜ私なのですか?動機だってないし皆さんとBBQしてたんですよ?」

「動機は大方10年前の事件についてでしょう。その事件もこのような感じでしたね」

 10年前

 観測ドーム内は血の海になっていた。二人の射殺体と銃を持った一人の気絶者。警察の捜査により完全密室だったことから犯人は気絶していた‟尾崎信順”《おざきのぶゆき》

 尾崎 信順 当時25歳 職業:岩甲山天文台清掃員 特技:部屋の角の掃除機掛け備考:清掃中後ろから殴られ気絶、気が付いたら銃を持っていたと無罪を主張。

   判決は覆らず、拘置所で自殺をした。


「本当に残酷な事件です。彼を雇った私にも責任があります。しかし今回は手元に銃があります。これはどう考えても自殺でしょ。」

「この人の所持品をみた。この人は森岡 信政なんかじゃない。この人の本名は

‟尾崎信寿”《おざきのぶひさ》」

 !!!!!!

「お、ざ、き?」

「他にもこんなもんがあったぜ。」

土淵川のポケットから出てきたものは、写真だった。

「この写真に映っている人たち、右は今回死んだ信寿さん。そして、こちらは自殺した信順さんだ。おそらくこの二人は兄弟だった。」

 室内がどよめく

「兄の無念を晴らすために事件の解決をしようと思ったのでしょう。そして、この観察ドームは密室なんかじゃないことに気が付いた。」

「どういうことだ?」ドーム内がざわつく。

「屋根だよ。この開閉式の屋根ここから外に出たんだ。」

 「へ?」失笑があふれた。

「ははははあー面白すぎておなか痛い。ここの屋根は低い位置でも10mはありますよ?こんなの普通の人間が登れるわけないじゃないですか。」

「普通わね。」土淵川の奇妙な笑い声が響いた。

「あんた呪われてるんでしょ。大方身体強化とかかな」

みんな唖然とした。笑い声が聞こえるまでは、

「あはははっははは呪いのこと知ってるんだ探偵さん。」

 館長の笑い声とともに聞きなれない音が響く。ぐち、びり、館長の皮が破けていく。中から一回り二回りでかい何かが出てきた。

「そう俺様は狩人の家系でな狼の呪いに呪われている、生まれた時から狼男。人間の姿でいるのは肩がこるぜ。だははははは」あまりに急なことで誰も言葉が出なかった。一人を除いて。

「やはり呪い人だったか。これなら今までの事件すべて証明できる。早く自首でもするんだな。この快楽殺人鬼。」

「自首?そんなの誰がするんだよ。狼の身体能力なめるなよ。捕まることもない。俺様は逃げ続けるよーだ」

天井が開き月の光が入る。

「勝手にしな。捕まえるのは私の仕事ではない。事件解決までが私の仕事だ。ただ、一つだけ質問させてくれ。呪われて幸せか?」即答だった。

「幸せに決まってるだろ。最高だぜこのチカラー」

叫びながら狼男が屋根を飛び越えようとしたその瞬間

「bad 私は赦さない。」ぼそっと放たれたその言葉は室内を異様な空気で包んだ。その刹那、屋根に上っていた狼男は転げ落ちていく。ぐしゃんぐしゃん音を立てて転がっていく。腕が普通では考えられない方向に曲がり骨が飛び出ている。さっきまであんなに騒いでいた男がピクリとも動かない。死んだのだ。

なぜ死んだのか?昨夜は大雨が降っていた。不運でこうなったのかそれとも...。

あまりの人間が話についていけず思考停止し、唖然としている中、土淵川はズボンのポケットから土淵川光世様へと書かれた封筒を出した。

「10年前の事件は終わってないか...私を呼び自らが犠牲になって解決させようとしたのか。馬鹿だが信寿さん、君はelegantだった。兄と君の無念は私が晴らした。」

 もう一度手紙をポケットにしまい、帰り支度を始める。

 ピーポーピーポーパトカーのサイレンが近づいてきた。

「やった警察が来た。」「やっとこの悪夢から解放される。」

 周りの人間が安堵に包まれる中、土淵川は思った。

「なぜ、拳銃を使ったのか?あんなに自分の呪いを好んでいた人間が、人の首など軽々折れるはずなのに、なぜだ。銃を購入できるほど財力があるようにも思えなかった。なにか引っかかる。何者かが糸を引いてるような...」

バンッ ドアが開かれる音がした。

「呪捜だ!!土淵川 光世呪術使用及び殺人容疑で逮捕する。」

 衝撃を残し事件は幕を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る