「ベットの上は百合色に」

それはあまり昔のことではない…

ある日、飲み会の帰り…僕の家の前には一人の少女が座っていた…

何だこの少女は…可愛い//そ、そんなことはいいんだよ。なんでこんなところに、家出にしてはこの辺では見ない顔だけど、

そんなことを考えているうちに、目が合っていたらしく、こちらをのぞき込むように見ていた。

僕は、いつの間にか立ち止まっていたらしい。あまり考え事はするもんじゃない。

「あ、あのーこの家の人ですか?」

「そうだけど、入る?」

なんでそんなことを聞いてしまったのか…そんなことは考えなくてもわかる、僕が一目ぼれをしてしまったからである。

少女が「うん」っと頭を振りながらたちあがった。

ドアを開け…え?鍵が開いてる…締めなっかったけ?そんなことを考えていると、「私が来た時には空いていました。」と、少女が驚いているのを見かねて私を覗き見るように言った。

そうはいっても開けていたのは確かだ、何か取られてるかもしれない。急いで中に入ると…

「な、ナニコレ…」

見るも無残に散らかっていた…わけではない。むしろその逆で…

「き、きれいになってる…」

自分でいうのもしゃくさわるが、本当に空き巣に入られた後のような部屋だったのにも関わらず、引っ越す前よりも、綺麗になっているのではないかと思うぐらい、綺麗になっていた…

もしかしてと、後ろをふと振り返ると、少しかしこまったように口を開いた。

「開いていたので、少し掃除させていただきました。悪いとは思ったんですけど…き、汚かったので…」

少しこちらをちらちら見ながら、話す少女。怒っていないか、窺っているのだろう。その姿はまるで、少し人に怯えた子猫にも見えた…

そんな目で見られたら、怒るにも怒れないじゃないかよ…

そもそも怒るつもりもないが…

「まずは、ありがとう。」

少し…いや、とても驚いた様子で口を開けている少女に少し苦笑し、話を続ける。

「鍵が開いたのを見かねて玄関前にいたこと、それと…部屋を片付けてくれたこと。」

少し、顔を赤くしているのと感じ、苦笑する。

「でも、鍵が開いているからって、勝手に部屋に入ってはいけません。わかましたか?」

少ししょんぼりする少女…その姿は…まるで…今にも消えちゃいそうなほどに、切なくて、愛おしくて、抱きしめてあげたいと感じた。

これが親心というものなのか?いや違うな…これは「恋」かもしれない…

そういえば、あまりの衝撃すぎて忘れてたけど、この少女はどこから?

「ね、ねえ彼方どこから来たの?」

「…」

下を見きながら沈黙のまま…

「何のためにここへ?」

「…」

「わかった、この質問は保留ね。」

少しほっとしたのか、顔が少し上がった気がした…

「じゃあ、お名前と、年齢を教えてくれる?名前はフルネームじゃなくてもいいよ」

夜桜よざくら琴美ことみです…歳は19です…」

「琴美ちゃんね、とりあえず、抱き着いてもいいかな…?」

少し動揺しながら、頬を赤らめきょろきょろした後、覚悟を決めたような面持ちで小さくうなずいた…

その姿を見て、僕は小さく頼りない、体を抱き寄せた…その体は思っていたよりも冷たく、まるで今にも倒れそう…

そう思った瞬間。琴美から、全身の力が抜けていった…

「ちょ、琴美ちゃん!?しっかり!」

声をかけても返事がない…と、

フ―…スー…フー…スー…

小さな寝息が聞こえた…

なんだ、ずっと外にいたから、疲れたんだろう…少し休ませておかないとな…

寝室に連れて行こうと、僕の体に寄り掛かるように寝てしまった琴美を抱っこし、寝室へ向かう。琴美の体はとても軽い、なにをしたらこんなに軽くなるのか知りたいぐらいだ…

そんなことを考えているうちに寝室についた。

琴美をベット寝かし、部屋を出る…

「今日は、ソファーで寝るのか…明日が心配だな…」

そんなことをつぶやきながら、自分のバックからノートパソコンを取り出し、仕事を始める…その時ふと思った…

「あの子、なにも持ってなかったよな…家で?それとも…」

少し気になり、仕事ではなく、googleを立ち上げ、検索バーに「夜桜琴美」と入れる…だが、なにもヒットされなかった…

「とりあえず、怪しい子ではないか…」

ついでに捜索願も調べたが、なにも出てこなかった…考えられるのは、二つ…僕に偽名を名乗った、もう一つは…「家族から放り出された」の二択だ…

19歳でも未成年。親が捜索願を出さないわけない…もし後者の場合なら…

変な妄想をした自分に苛立ちを覚え、自分の頬を軽くたたいた…

ガタン…

寝室のほうから物音がした。起きたのか…そう思いながらドアの前まで行くと…

「う、うわぁ!あの人のベット…いいにおい!幸せ…」

おいおいおい…ちょっと待てよ!?何だよこれ…聞いてねーぞ…ま、まさかな。そんなことないだろ…

そんなことを考えていると…

バン――いった…

「あ…すみません…」

「いいのいいの!」

びっくりした…

彼女がドアを開けたことを気づかずに額をぶつけてしまったらしい…額を抑えながら顔をあげる、僕より少し小柄で少し強く握れば折れてしまいそうな手足…透明感のある肌…アニメのキャラクターのような顔立ち…すべてが完璧…先ほど僕の布団に潜り込んでいたからか、少し頬が赤くなって入る…

「ちょ、ちょっと⁉何しているんですか?」

気づいたら抱きしめていた…厳密にいうと倒れ掛かる感じで…

「一緒に寝よっか…」

「ね、寝ぼけてるんですか!?」

そこからの記憶はない…疲れていたのかそのまま寝落ちしたのだ…

これは疲れからくる幻想にすぎない…睡眠をとれば消えてしまう…それでもいい、この数時間とても幸せだった。目の前が暗くなり、夢へといざなわれる…


朝起きたら目の前は…


――肌色でした――

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