題13話 不思議な先生カール
ファッションに少しでも興味のある人が、「カール」という名前を聞けば、
必ず「カールラガフェルド」を思い出すのは当然だ。
あの有名な「カール」が、この学校で教えていると言ったら、誰が信じるだろうか?
その上カールは去年亡くなっているのだ。
実はこの学校で、「自分はカールラガフェルドだ」と信じて疑わない先生がいる。
彼は自称、「福岡のカール」だとみんなに公言している。
午前中は、そのカールの授業だ。
彼は一年生と二年生にファッション・イラストレーションを教えている。
カールが教壇に立っている時は、いつもパミュと「カールの噂」に事欠かない。
「カール、どげん見ても日本人よね」
「あのちょっと太めの丸顔は、日本人以外にはおらんやろ?」
「それに鼻も低くて丸かし」
「背も低いしね」
「あのピチピチのシャツが、破れそうな腹のでっぱりも、『日本のオヤジ』って感じせん?」
「フランス人やったら、もうちょっとエレガントに腹が出てるような気がせん?」
「わたし、フランス人見たことなかけん、どげんも言えんばってん」
「うちも見たことないけど、でもあのパリの街並みに、あの出っ腹は合わんやろ?」
「そげんかもしれんね」
「やっぱり、カールは、どう見ても日本人やね」
「うちもそげん思う」
「でもカールに似てるのは、サングラスと、ポニーテールと、あの指が切れた黒のドライビング・グラブだけやもんね」
「そうやね」
「そうそう、誰かがカールの出身地は、鹿児島やって言っとったけど」
「かごしま?」
「どう考えても、あの変なアクセント、鹿児島弁やないやろ?
たまになんか意味わからん言葉喋るけど。
あれ、フランス語やないん?」
「でもパリっち言うよりは、鹿児島の西郷隆盛って言う方が、すんなり来ん?」
「そうそう、西郷どんの銅像に、サングラスかけて、ポニーテールさせて」
「それにドライビング・グラブ着けさせてから、薩摩犬持たせたら、そっくりやね」
「そうやね!」
「もしかしたら、カールはむかし、祖先が鹿児島に移民したフランス人かもしれんね?」
「でも本物のカールはフランス人やないよ」
「えっ、そげんね?」
「そう、あの人ドイツ人ち」
「へー、知らんかった」
彼の風貌とは別で、カールは自称「福岡のカール」と言うだけあって、ファッション・イラストレーションはすこぶるうまい。
以前にネットでカールラガフェルドのドキュメンタリーを見たが、なんとフリーハンドで全く同じ絵を描くのだった。
その時、カールが二人に教壇から声をかける。
「桜! 西田!」
二人はカルーからうわさ話を見透かれたのかと身震いをした。
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