第4話

中学に入ってまず感じたのは、勉強は小学校の比にならないくらい難しく、内容量が多いこと。

部活も決めなくてはならず、全てをこなすのは、至難の技だった。

小学校の感覚では到底追い付かない。

明日香の周りも、今までとは違い、皆が忙しく動き回っている感じを受けた。

初回のテストは、内容も小学校の復習やら基礎的なもので、点数を取るのは、それほど難しくはなかった。だから、気がつかなかったんだ。

次のテストは、急に難しくなり、教科数も増えた為に、初回同様にはいかなかった。

この時、軌道修正出来ていれば、問題はここまで大きくはならなかったかもしれない。

明日香の毎日が変わっていったのはこの辺りだったのでは?

と後に後悔する事になるとは、この時点ではあまりイメージ出来ていなかった。


家で勉強をする、部屋が無いのでリビングでやるしかなく、最初は頑張ってやっていた。明日香の勉強法では、根本的に効率が悪いと父、康隆は言っていた。

が、中々素直に聞けなかった。

母の早苗が声をかける。

「明日香、私はキッチンにいるから、何かあったら声かけてね。頑張って。」

そうして、部屋から母も父も出てくれて、部屋をあけてくれた。

それでも、その頃には、大半の時間をゲームに費やし、動画を見て、隙間に勉強をするような感じになっていた。

当然のごとく、成績は伸び悩み、追い付くのが難しくなっていた。


「明日香、このままじゃどうにもならなくなるよ。その前に何とかしなきゃ、だめなんじゃないのかな?」

母の声にイライラが抑えられず、

「わかってるよ!!だったら、集中出来るように、部屋作ってよ!」

明日香の言葉に早苗の表情が曇る。

「それは出来ないよね。ごめんなさいね。ただ、それをいいわけにしてても、良いことは無いよ。明日香の人生はこれから明日香自身が掴みとって行くものだから。」


明日香の生活はどんどん乱れて行った。

昼夜逆転し、学校に行く時間は起こしてもらってギリギリ。

遅刻する日もあった。

それでも、ゲームも動画も止められず、毎日の生活はついでのようで、まるでゲームの中が自分の現実生活のように錯覚して行った。

明日香だって、気がついていた。

このままでは駄目になるって。でも、ドップリと嵌まり込んだ生活を抜け出して来るには、明日香は、幼すぎた。

毎日の生活を見て早苗も、康隆も心配して優しく声をかけたり、時には強めに叱ったり、手を変え品を変え明日香に伝えていたが、明日香がそこから抜け出せる日は来ないままだった。

そんな日々のなか、ある日国が指定する健康診断の実施がされるとの事で、早苗に連れられ明日香は、病院に行く事になった。

その病院は、小学校の時の通学路に指定されていたあの大きな病院だった。

その日の健診は、内科健診が最後だった。

担当の先生が渋い感じの先生だったのだが、切れ長の目元が誰かに似ていると明日香は思いながら、でも誰に似ているのかが思い出せずにいた。

名札を見ると、「西田」と書かれていた。

西田先生か…。

そうこうしてるうちに、健診は全て終了した。

やはり、明日香は、この病院に来た事があるような気がして、ならなかった。

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