第2話
学校に行く途中に、大きな病院がある。
明日香は、家から歩いて15分くらいの小学校に通っているのだが、その中間地点くらいに病院があって、その病院には、いろんな場所から研究資材が運ばれて来ている。
6年も通うと見慣れた景色になっているが、いつも、朝から忙しそうな人の出入りを見ていると何か不思議な気持ちになるのだ。
心がざわつくとでも言うか…。
その気持ちの根底が何なのかは、明日香にはわからないのだが、何かドキドキして足早に通り過ぎるようにしている。
スロープを通り抜けると学校に続く道に出るのだが、そこまでには綺麗な花が咲き誇る花壇があり、咲き始めた花の香りがふわっと風に溶けている。
病院のスロープの途中に病院の関係者らしき人達が立っていて、学生らに挨拶をしてくれる。明日香も声をかけられ、
「おはようございます。」
と返す。
病院の中庭のスロープを抜けて行くのが指定の通学路となっていた。
明日香が丁度小学校に上がる年に出来た病院なので、明日香は、6年間この病院のスロープを抜けて学校へ通っている。
学校に着くとみっちゃんがにこやかにこちらへ来た。
「明日香、昨日のテレビ見た?」
みっちゃんは昨日のドラマの話をしていた。
ご飯から帰って来てから明日香も見ていたので、話に入って行けた。
「見たよ。何か怖くなかった?」
みっちゃんは、笑って
「えー?そうかな?」
みっちゃんの優しい感じや、時に強さがある所に明日香は、憧れ、救われる。
「そうだよー。私には怖かった。」
ドラマは、サスペンスだったのだが、人が消えて行くというような内容だった。
謎の失踪、神隠しなどは、漠然と怖いと感じる。なぜなのかわからないけれど、すごく恐怖を感じるのだ。
何か、記憶を刺激されるようなそんな気がする。
みっちゃんと話しているうちに先生が教室に入ってきた。
朝は、先生が入ってきたら、朝読書の時間で、1時限目が始まるまでの15分が朝読書の時間に充てられている。
明日香は、朝読書の本を開いてから、ぼんやりと考える。
最近、自分の生活であれ?これ前にもどこかで同じ事があったような?
という既視感を抱く事が多い。
先生と話をしているとき、みっちゃんとはなしてる時。そのあたりは、毎日話しているからなのかもしれないけれど…
何度も同じシーンを繰り返しているような気がする時があって、いつだったのか、深く考えようとすると、頭の芯がズキッと痛むのだ。これ以上考えるのをやめろ、と警告されている感じがして、それ以上は思い出せないまま。
登下校時に通る大きな病院に対しても、何か不思議な感覚に襲われる時がある。
あの病院、私行った事があるような気がするのだ。
実際には、そんな事実は無いのだけど…。
明日香は、ぼんやりと外に目を向ける。
窓の外では、グランドで体育をしているクラスが見えて、自分のクラスの1時限目が何だったかふと考えて机の中から教科書を用意するのだった。
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