エキセントリック青年BOYS in クレイジーキャラバン

@samidarekagetsu954

1-0 前文……いつも通り代わり映えの無い乾いた空だけど何故か心に沁みてくる

 あたしってホント馬鹿。

 ルシールはよく思う。スィラージのアニメネタではない。


 かつて先生は言った。

 「魔法は万能ではない。大切なのはバランスだ」と。

 今ならわかる。

 強い力を持つ者こそ、謙虚な気持ちが大切だと。力を恐れる心が必要だと。何の為に力を使うのか、理由を明確にする必要があったと。認識と覚悟と決意、それがあたしには不足していた。

 

 抗う気持ちは今も辛うじてある。

 追い詰められた時は心を鎮めようと熱い珈琲にレモングラスを振った。ツンと鋭い清涼感があり、適量を見極めるのが少し難しい。入れすぎると簡単に調和を壊してしまうがもう慣れた。


 生きるために名を変え、瞳の色を変え、髪の色を変え、家族から逃げた。


 どこで間違えたんだろう。

 答えは既にある。身の丈に合わない力を得たせいだ。しかし自分の母親を助けたいと思うのがそんなにダメなことなのか。

 もう一度、同じことがあれば、また母さんを助けるだろうか。もうわからない。後悔しているかと言うとそうでもないが、何度でも助けると言うにはあまりに辛いことが多すぎた。

 自分の才能を過信していたのだろうか。

 魔法に不可能は無いと傲慢だったのだろうか。

 未来からの警鐘には耳を塞ぎ、過去からの悪夢には目を逸らし、とにかく今日という日をやり過ごす。考え始めると人生に絶望する。諦観それから孤独。それがあたしの日常だった。



 だから今は……少しだけ楽しいかな。ひたすら歩くのはきついし、くだらないことしか話していないけど。どうかしてるとしか思えない馬鹿アブノーマルな連中だ。

 神様に出会いを感謝する気持ち? 正直微妙。


 代り映えのしない風景の中、延々歩いていると思考が内へこもってくる。けっこう疲れた。

 

 それを遮ってくれるのは緊張感の無い朗らかな声。

 見守ってくれるのは落ち着いた眼差し。

 苦笑させられるのは子供のように無遠慮で下劣な物言い。


 あたしの名はルシール・デュランザルフ。とりあえず北に歩いている。渇いた風に柔らかく舞う熱砂。いや熱砂というほどには熱くないかな。

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