猫の昇華

 何年か前に受けた英検の文章題で、猫は液体であるという研究に関する英文が載っていたのが記憶によぎった。

 半分も読めなかったが、じゃあ、凍らせたら固体猫になって、蒸発させたら気体猫になるのか、と思ったことを覚えている。なぜ覚えているかというと、そのあとすぐに固体猫に遭遇したからだ。

 英検の2か月後、英検が2月のことだったから4月の、たぶん新学年が始まる前か始まってしばらく経ちひと段落ついたころだったと思う。玄関先で寝ている飼い猫のココアを起こそうとして、その体が硬くなっていることに気付いた。

 溶けたのか、ココアの身体は窯に入れるために箱に収められたときには柔らかくなっていた。だけれども、その体はさっきまで凍っていたのを示すかのように冷たかった。ココアの体はそのまま箱ごとペット用の火葬窯に入れられ、きれいさっぱり燃え尽きた。前年の12月にもらってきてから3カ月ほどの短い滞在を経て、ココアは我が家からいなくなった。

 今、私の頬をこすった暖かい風。窓から吹き込んできた春の風。あれはココアだったのではないだろうか。気体となって世界を駆け巡り、我が家に帰ってきた、ココア。


《お題:猫の風 必須要素:英検 制限時間:30分》

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