妨げ盗賊

 盗人親方は激怒した。必ずやかのメロスを除かねばならぬと決意した。

 盗人親方には正義が分からぬ。盗人親方はシラクサ近辺の盗賊をまとめ上げそのあがりを吸い上げて暮らしてきた。だが、儲け話に関しては人一倍敏感であった。

 メロスが三日のうちに帰ってくるとの誓いを知った盗人親方は、メロスが帰ってくると信じる神官長と賭けをした。盗人親方はもちろん帰ってこない方に賭け、神殿の所有する葡萄園を丸ごと手に入れる手はずであった。

 メロスが妹の結婚式で妹とその婿に別れを告げたと知った盗人親方は地元の山賊に足止めを命じた。おのれ、あやつめ逃げ出すものと思っておったのに。これだから阿呆は厄介だ。とはいえ、途中の川も大雨で橋を押し流したと聞いて、盗人親方は胸をなでおろした。

 その後どうなったかは読者諸氏もご存じのとおりである。盗賊どものあがりは賭けの結果として神官長のものとなった。


《お題:汚いゲーム 必須要素:太宰治 制限時間:15分》

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