第30話 準備は万端

さぁ。今日は待ちに待った魔法道具解禁日です!!

ふっふっふ。

私はこのために頑張ったのですよ!


舞踏会後、リュシアスと話を詰めて作成に取り掛かった。

前回同様、実家の商会にも依頼をして物資調達に余念はない。

魔法道具作りの楽しさに、リュシアスとの話し合いにもつい熱がこもってしまった。

仕組の考察に時間はかかったが、想像通りの形に仕上げることができて感動した!!

前世で使っていたものが、こんな風に自分の発案で再現できたことに心が震える思いだ。


リュシアスに構想を話したところ、専用部屋を用意してくれた。

このため、子どもたちには秘密にしてこっそり作業を進められた。

完成してからも、子どもが使うものであるため、安全確認を万端に行った。

そう! ばっちり私が使いまくりましたとも!

楽しかった!!

いや。安全確認のために使ったのです。楽しむのが主目的ではなかったのです。誓って。


魔法道具が完成し、安全確認もばっちり済ませ、準備万端整ったのが昨日。

やっと子どもたちに公開できる日がやってきたのだ。

そのため、そわそわと喜びを隠しきれず、朝からテンションマックス状態なのである。


「とても嬉しそうだね。ティアーナ」


ふいに後ろから声をかけられ振り返ると、今日もさわやかに微笑むリュシアスの姿があった。


「おはようございます、リュシアス様。

もちろんですよ! これをするために頑張ったのですもの!!

お子さま方にも、きっと喜んでもらえると思うんです!

ふふ。二人に見せるのが楽しみで仕方がないですわ!」


溢れんばかりの笑顔で返事をする。


「そんなに楽しそうな君を見られれて、とてもうれしい。

もちろん、ラファもマルティも喜んでくれるさ。

いろんなことを考えて、努力をしてくれてありがとう。ティアーナ。」


少し驚いたような顔をしながらも、リュシアスも嬉しそうに目を細めて微笑む。


「いいえ! リュシアス様がいたからこそ、完成したものですもの。

私の方こそ、魔法道具を作っていただいてありがとうございました。」


「はは。お安い御用だよ。

それに君の発想はとても面白い。また何か考えついたら、私に教えてくれ。

また一緒に魔法道具を作りだそう。」


確かに、魔法道具を作ってる間、リュシアスはとても楽しそうにしていた。

どんどん話が盛り上がり、大掛かりなものをつくってしまった。

仕事でもあるのに、熱中するほど魔法道具づくりが好きなんだと改めて知った。

また子どもたちのために、何か一緒につくれたらいいな。


「はい。かしこまりました。何か考えついたら、また形にしてくださいね。」


「あぁ。なんでも張り切って作るよ。」


ふふ。何気ないやり取りも、今日は楽しくて仕方がない。

ふわふわ飛んでいけそうなくらい、心が弾んでいる。

さて、二人は喜んでくれるかな?


「では、後で時間をみつけて様子を見に行くよ。きっと二人は楽しんでくれるはずだ。

ティアーナも子供たちと一緒に楽しんで。」


優しく微笑むリュシアス。


「はい!子どもたちの楽しむ姿をぜひ見に来てくださいね。お待ちしています。」


「ふふ。そうだね。ティアーナの顔も見に行きたいから、必ず行くよ。

また後でね」


リュシアスが優しい手つきで頭をなでていく。


いつもとまた違った行動に、すっかり固まってしまった。

去っていくリュシアスの背中をじっと目で追い続ける。



……子ども扱いされてるのかしら?

うーーん。まぁ、がんがん攻めてこられるよりはいいのかな……?

でも、なんだかこそばゆい。

頭を撫でられるなんていつぶりだろうか。

労いの意味も込められていたのかもしれないし。

嫌な気はしなかった。

……むしろ、嬉しかったかも。

あぁ。ダメだな。どんどんハマっていく。


何気ない行動だった。

なのに、愛おしんでくれているのが伝わってくる、優しい動作。

もうどうやっても、この気持ちに蓋をすることはできないのだろうか。

まだ……まだこのままでいさせて。



*****



「今日はお二人に新しい遊びを提案したいと思います!」


「新しい遊び?」

「何をするんですの?」


「今日は体を動かして遊びます! すごく動き回るので、まずはお着換えをいたしましょう。」


「「はーい」」


今日も天使な二人です。かわいい。

でも今日は動き回るので、かわいく着飾った服は脱いでいただかなければいけません。

少し残念ですが、万全に遊ぶためには致し方ないのです。


そう。魔法道具を作ると同時に、お子様方の服も準備していたのです!

ばっちりですよ。

動ける服といっても、乗馬服やら簡素なシャツ程度しかなかった。

それでは少し生地が破れたり、動きづらかったりするだろうと思い、商会で服の相談をした。

うん。これもなかなかの出来栄えなのです。

意外と前世っぽいものって、この異世界でも製作可能なのだなぁと感心するばかりだ。


では。まずはラファエル様のお着換え。

上衣は襟つきの薄い水色のポロシャツ。

下衣は白の半ズボン。

その下に黒のタイツを着用する。ただし、足首までのものにしてある。

靴下はなし。裸足のまま遊びますよ。

さわやかテニス少年な衣装ですね!

テニスラケット持たせたい。


次にマルティアリスさま。

上衣は襟付きの薄いピンク色のポロシャツ。

下衣はプリーツたっぷりの白色スカート。

ただし、ズボンもセットになって付いているスカートなのでめくれても問題なし。

ミニスカは、この世界ではあまり見ることができないのでとても貴重です。

そのため短すぎても問題だろうと思い、膝上程度にとどめた。

その下に足首までの長さの黒のタイツ着用。

髪の毛が長いので、下の方でお団子を二つ作って結った。

マルティアリスちゃんもテニス少女風!


やっぱり双子はお揃いコーデがいいよねっ!

めっちゃかわいいっっ!!!!!


「見慣れない衣装だね……」


「これで正解なんでしょうか……」


初めての衣装に不安な様子で伺ってくる二人。

まぁ、そうですよね。


「私が考えて作ってもらった衣装なんですよ!

動いてみれば、その良さを分かってくださると思います。

お部屋の中でしか着ませんから、心配なさらなくても大丈夫ですよ。」


「まぁ。ティアーナさまがそう言うなら。」


「せっかく作ってくださったものですもの。一度試してみましょうね。」


うむ。妥協してくれるようです。

年少者さまたち、さすがの大人対応です。


「ふふ。ありがとうございます。私も同じように着替えてきますね。」


「ティアーナさまも着るの?」


「お揃いですか?」


「私もお二人と一緒に遊びたいので、しっかり準備しなくてはいけませんからね!

ふふ。お揃いですかね。お楽しみに。

では少々お待ちくださいね。」


さぁ。着替えて、始めましょう!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る