先祖の恨み

C.U-yu*[ゆうゆ]

第1話

「ここは何処ゴブ?」

現代・月影の森から青い光の中に入ってしまった3匹のゴブリン。

緑色と青色と土色のゴブリン。

彼らの名前は『ゴブスターズ』

青い光に吸い込まれながらこう言った

「だーかーらー!そのぐるーぷ名はダサくねー?」


ところ変わってここは古代・ケルリの道。

時の塔のすぐ傍にいるだけあってものすごく禍々しい気配に満ちている場所。

「相変わらずここは空気が重いなぁ。」

そんなことを言いながら通りかかったのはアルド一行。

時の塔での戦いを思い出しながら塔の上を眺める。塔の内部は機能が停止しているといえど、なお生きているかのような外観である。

パルシファル宮殿にいるラチェットにお遣いを頼まれていたアルドは目的の花を見つけて採取しようとしていた。

「早く持って行ってあげないとな。」

そう言ってアルドがしゃがもうとした瞬間、近くで何やらコソコソ話し声が聞こえる。

「これで未来はオイラ達の世界になるゴブ!縄張りの中で肩身の狭い思いをしなくても済むようになるゴブブっ!」

アルドは自身の耳を疑った。

「なんだって!?」

目的の花を急いで採取した後、アルドは声のする方へそっと近づいてみた。

なんとすぐ近くに現代で見た3匹のゴブリン達がいるではないか。

「どうしてここにゴブリンがいるんだ?」

アルドが首を傾げた後、

「悩んでも仕方ない、話を聞いてみよう。」

アルドはゴブリン達に更に近づいた。

当のゴブリン達はゴブリンが支配する未来を想像して話に花が咲いてしまい、アルドの方に全く気が付かない。

「なぁ、お前達。」アルドは腕を組んだ姿勢でゴブリンに声をかける。

「ゴッブッブ!」「ゴッブブブー!」「ゴブッゴブッ!」尚もゴブリン達は妄想にふけって笑いが止まらない。

「なぁ、って聞こえてるのか?」

アルドがもう一度声をかけると、ゴブリン達は我に返って振り返った。

「ゴブっ!?」少し時間が止まったような間があった。

先に口を開けたのはゴブリンの方だ

「こうげきのゴブ」

「ほじょのゴブ」

「かいふくのゴブ」

「我らの名前はゴブスターズ!」

一応、決めポーズもそれなりに決まったようだ。

「やっぱりダサくね?」

「前にここではぐるーぷ名は変えると言ってたゴブ!」

「決める時間がなかったゴブ!」

たちまち喧嘩が始まってしまった。

「話しかけたのはいいが、喧嘩になるなんて思ってもなかったぞ。」

びっくりしたアルドをよそに喧嘩は続く。

「だいたいご先祖さまのところにたまたま来られたからっていい気になったのがダメなんだゴブ。」

「ご先祖さまに大舟に乗ったつもりでなんて言ったのはどこの誰ゴブ?」

「ご先祖さまの代わりに敵の弱点を考えてやっつけるとかムチャすぎるゴブ。」

ゴブリン達の喧嘩は止まらない…が、

「なんでここに俺らの時代のゴブリン達がいるのかだいたい分かった。」

アルドが呆れながらため息混じりに一言。

これをゴブリン達は聞き逃さなかった。

「んん?なんで分かったゴブか!?」

「本当に分かったゴブか?」

ゴブリン達は喧嘩の時に自分達が何を喋ったのかちゃんと覚えていない。それ故にアルドに疑いを掛けている。

しかし、アルドははっきり聞いていたので

「要するにお前達はたまたまこの時代にやって来て、そこで会ったご先祖さまの代わりに宿敵の弱点を調べて退治しようってことなんだろ!?」と、さっきの喧嘩で聞いた内容をまとめて返した。

これにゴブリン達は驚いた。なぜなら、ご先祖さまから聞いた宿敵というのが今まさに目の前にいるアルド一行なのだからだ。

たちまちピンチになってしまったゴブリン達だが、何も用意していなかった訳ではなさそうだ。

「今こそオイラ達の歴史に変革をもたらす時だゴブー!止めたければ来てみろゴブっ!」

ゴブリン達はアルドに威嚇をするような素振りを見せてデリスモ街道付近に逃げていった。

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