順風満帆…?
「なあ君達。差し支えなければ、各自のギルド証を見せて貰えないか?」
周りがドン引きするのも構わず悪魔の遊戯が如何に素晴らしいか滔々と論じ、ひとしきり満足した後、ジャッカルは唐突にそう切り出した。
曰く、探索ギルド以外のものも一応確認しておきたいとのこと。
……大丈夫、だよな?
「構わんぞ。ほれ」
首に下げた
表面には傭兵ギルドの紋章、裏面には名前と識別番号の刻印が施された小さな金属板。
確か、紋章の色が傭兵としてのランクになってるんだっけか。
「俺様達は新入りだから赤字、下級傭兵だな。黒が中級、銀が上級、んで金色が特級だ」
「ふむ……構成人員十万以上、且つ複数国家に根を張る傭兵ギルド全体でも現在該当者二名のみの生ける伝説。ひとまずそこを目指すワケだな?」
「おうよ! 巨獣だの悪魔だのドラゴンだの倒せば任命されるらしくてな! 血が騒ぐってもんだぜ!」
「…………すやぁ」
握り拳を突き上げるシンゲンに対し、無関心な態度で座ったまま寝入り始めるハガネ。
我が道を往く個人主義者様は、階級云々への興味が薄い様子。尋ねれば、きっといつものように「どうでもいい」と返すのだろう。
「商人ギルドはカード型ですよぉ」
まだ見ぬ怪物との決戦に胸躍らせるシンゲンが落ち着いた頃合いを見計らってカルメンが胸元から引っ張り出したのは、細い鎖で腰の金具と繋いだ、やはり金属製の白いカード。
シンプルな傭兵ギルドの
「うーむ。縁取りまでしてあって豪華だな」
「偽造防止目的だと思うが。何せ傭兵ギルドと商人ギルドでは、ギルド証の存在理由が異なる」
一方、商人ギルドで発行されるカードは、ギルドの息がかかった地域で商売を行うにあたっての許可証でもある。
街角で提示を求められた時、本人のものか偽造ではないか、そういう確認が可能な程度の情報量は不可欠なのだ。
「探索ギルド発行のギルド証は何故か腕輪でな。邪魔にならないのはいいんだが」
左手に嵌めた鈍色の腕輪を撫でつつ、ジャッカルが俺を見る。
「キョウも商人ギルドだったな。特徴記述欄が気になる、拝ませてくれ」
心臓が早鐘を打ち始める中、どうにか平静を装う。
大丈夫、大丈夫だ。パッと見、カルメンのカードと何の差異も無かった。
ポケットに突っ込んであったギルド証を手渡す。こう、できるだけ自然な仕草で。
「……? む、君のはカルメンよりランクがひとつ上だな。店を持ちたいのか? しかし当分は方々を巡るんだ、流石に気が早過ぎるぞ」
――そのランクの紋章のデザインが好みだっただけだよ。
「あ、分かりますぅ。可愛いですよね、猫さん」
「猫かこれ? 俺様は犬に見えるんだが」
精一杯の言い訳を皮切りに、やれ猫だ犬だ熊だ虎だと喧騒が始まる。
結果オーライ。助かった。
つか、カピバラだろ。それ。
「……クハハッ。何やら、面白そうな匂いがするじゃないか」
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