驚愕の真実
――あ、アンタ……女だったのか!?
目を疑った。スマホの画面を五度見した。
だがしかし『性別:女』。幾度見直そうと、この表記が変わることは無かった。
「嘘だろ、俺様ちっとも気付かなかったぞ!?」
俺と同じく、シンゲンも驚きを隠せぬ様子。
逆にカルメンとハガネは、何故か全くの平静。
寧ろ、狼狽える俺達を訝しんでいた。
――あれ。二人とも、まさか知ってた?
「いえ、あの、知ってるも何も……私としましては、キョウくんとシンゲンさんが何故そんなにびっくりされてるのかが分からないんですけどぉ……」
するだろ普通、びっくり。
いくら中性的な容姿の持ち主とは言え、この一週間、疑いもせず男と信じてた奴が女だったとか。
「部屋割り、ジャッカルさんは私達と一緒ですよねぇ……?」
…………。
確かに。俺とシンゲンが二人部屋、残りが三人部屋って割り当てだわ。
今の今まで疑問にすら感じてなかった。
「お風呂の時もジャッカルさん、普通に女湯に入ってましたよねぇ……?」
「お? ……おぉ!」
確かに確かに。シンゲンと揃って手を叩く。
「…………馬鹿、なの?」
半眼で俺達を見ながら零したハガネの心無い呟きが、胸に刺さる。
馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ。
――いーや待て、そう簡単には信じない! アンタ達が三人で俺達をからかってるんだろ!
「そうだそうだ! インテリはすぐ嘘をつくから信用ならん!」
「ええぇ……そんなことして私達に何の得があるんですかぁ……」
俺とシンゲンの指摘をカルメンは否定するも、猜疑は晴れない。
すると、溜息混じりに肩をすくめたジャッカルが、静かに席を立った。
「よろしい。君達、ちょっと部屋まで一緒に来たまえ」
二階へ続く階段を指すジャッカル。
なんのつもりか尋ねると、不敵な笑みと共に、こう返された。
「疑うのならば、証拠を見せるまでだとも」
………………………………。
……………………。
…………。
――すいませんでした。
「まったく、申し訳ない」
カルメンとハガネが待つ一階の食堂へ戻った後、俺達はジャッカルに深々と頭を下げた。
ああまで動かぬ証拠を晒されては、疑いの余地など残る筈もなかった。
服の下、結構グラマー。着痩せするタイプなのね。
「分かってくれればいいさ。オレの振る舞いに紛らわしい部分があったことも否定できない」
改めて考えれば、部屋割りや風呂以外でも引っかかる点は多々あった。
手とか全く骨張ってないし、喉仏も出てないし、ピアス付けてるの右耳だし、一昨日とかレディースデーの割引もして貰ってたし。
「しかし、だったら、なんで男みたいな格好と言葉遣いなんだ? 趣味か?」
単刀直入に放り込むシンゲン。
躊躇無しかよ。もしデリケートな問題だったら、どうする気だ。
「長く地元の劇団に所属していてな。あそこは役者が女ばかりだったこともあって、オレは男役を多く回されていたんだ。役作りに励むうち、今のキャラクターがスタンダードな位置に落ち着いたのさ」
暇潰しにはちょうど良かった、と椅子の背に寄り掛かって笑うジャッカル。
思いの外、浅い理由。そして成程、だからか。普段の言動が、どこか芝居がかってるのは。
厨二病プラスまさかの宝塚系女子。属性、欲張り過ぎ。
「無論、やろうと思えば――普通に女らしくも振る舞えるわよ?」
唐突に和らぐ雰囲気、高く穏やかなものとなった声音。
加え、表情や仕草の調整によって、瞬く間『中性的な美形』から『垢抜けた大人の女性』へと変貌を遂げた面差し。
役者って凄い。
だけど、いきなりは心臓に悪い。
「……ん? そう言やお前、ステータスに書いてあった身長、随分低くないか? カルメンよりタッパあるだろーよ」
「オレの足元を見ろシンゲン。十三センチのピンヒールを履いてる」
座ると小さく見えたり、やけに体重が軽かったりしたのはそのせいか。
つか、よくそんな靴でアグレッシブに森を歩けたな。カルメンなんか何度転びかけてたことか。
やっぱりコイツも普通じゃねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます