4-9

 控え室に行くと、龍聖が寝ていた。

「龍聖、余裕だな」

「疲れたってさ。ソッコウ寝ちゃったよ!」

「まぁ、疲れるよな。あれだけ歌えば。

ってゆうか、役員面接って何?」

と、俺は聞いた。

「木村さんが言うには、ただ単に顔合わせだって言ってたよ。

俺らまだ、契約の時に話した数人しか会ったことないからな!」

と、大輝が言った。

「ふーん」

「何か審査されるわけじゃないから、気楽にしてていいって木村さん言ってたよ」

と、瞬も言った。

「そっか」


トントンとノックして、木村さんが入ってきた。

「そろそろ参りますか?」

「木村さん、ちょっとだけ待って!

龍聖起こすから」

「はい。龍聖さんお疲れですね」

龍聖に声をかけると、意外にパッと起きた。

「行くよ!」

「了解!」

「木村さん、お願いします」

「はい。では、参りますが、特に緊張なさらなくて大丈夫ですので」

と、笑った。

エレベーターで15階まで行った。

初めて行くフロアだ。


トントン

「失礼致します」

木村さんの後ろから、失礼しますと一礼して一列で入った。

広っ!!

20人くらいの人たちが、コの字型にセットされたテーブルに座っていた。

その中には、事務所の副社長もいたし、コンテストの2次試験の面接の時にいた他の3人もいた。

まぁ、偉い人だろうとは思っていたけど。

正面、真ん中にいるのが、社長かな?若いな!40代くらいか?

まずは、こちらから自己紹介をした。

これ、何回やってるのかな。


「Realリーダー、ドラムスの大輝です。

よろしくお願いします」

「ピアノとギター担当の瞬です。

よろしくお願いします」

「ボーカルの龍聖です。

よろしくお願いします」

「ギターの桂吾です。

よろしくお願いします」

「ベースの悠弥です。 

よろしくお願いします」


「ありがとうございます。どうぞ、お掛けください。

代表取締役社長の村上です。

あなた方に会えるのを楽しみにしていました。 コンテストの様子は、ビデオで拝見しました。

あなた方が、我が社のコンテストにエントリーしてくれたことは、素晴らしいご縁だと思います。ここにいるのは、我が社の重役たちなので、そうそう会うことはないかもしれないですが、最大限あなた方をバックアップしていきますので、よろしくお願いします。

頑張ってください!」

はりのある力強い声だった。


端から1人ずつ、自己紹介していった。

面接にいた他の3人は、サウンドクリエーター室長、営業戦略部長、クリエイティブ総括部長だって!

何をやる人なのか、さっぱりわからない肩書き。

それ以外の人たちも、広報部長、販売促進部長、楽器メンテナンス部長、楽曲管理室長とか……

俺ですら覚えられないんだから、悠弥なんて、最初の社長だけしか覚えてね〜だろ。

まぁ、いろんな部門の人たちにお世話になるってことだな。

全員の自己紹介が終わり、


「営業戦略の田名部から、ご連絡いたします」と、立ち上がり話始めた。


「ちょうど、1ヶ月後になりますが、2月13日に、昨年11月に行われた第1回バンドコンテストのグランプリでデビューいたします、Realのお披露目パーティーが予定されています。

関連各社にはすでに連絡済でございます。

テレビ局の取材班もくる予定です。

お披露目ということで、Realにはグランプリ曲を含め、6曲演奏していただきます。

なお、明日グランプリ曲YO.I.Nをレコーディングすることになっており、CD発売をお披露目パーティー翌日の14日としております。

各部門連携して進めてまいりますので、よろしくお願い致します」

 

大きく頷き、社長がまた口を開いた。

「Realの皆さん、弊社は毎年多くの訓練生を採っています。

ルピアーノネクスト養成所で、進捗状況を確認しながら、実力が上がった者にデビューしてもらうというやり方をずっとしてきました。

今回、Realは初めてのコンテストからのデビューということで、少々段取りが遅れてしまっていて、君たちには迷惑をかけてしまい申し訳なく思っています。

段取りが遅れていると言いましたが、厳密に言うと予定よりもデビュー時期を早めているので、バタバタしてしまっています。

君たちが、予想以上に即戦力だったので、半年後に予定していたCD発売を急遽早めました。  なので、君たちには、次の日の予定も急に変わってしまうような感じになってしまっていて、申し訳ない。

我が社として、各部門連携してやっていきますので、よろしくお願いします」

社長が直々にこんな丁寧に説明してくれるとは。

面談は18時に終わった。


「木村さん!いつも、確認します!って言ってたけど、マジで次の日の予定も決まってない感じでやってたんだ!俺たち」

エレベーターの中で、悠弥が木村さんに言った。

木村さんは、ハンカチで汗をふきながら、

「あ、そうなんですよ。皆さんを不安にさせないようにと言われていましたが、不安でしたよね〜? 

すみません。

私もマネージャー業を20年やってますが、こんなこと初めてですよ。アハハ」

「すみませんね〜木村さん!」

「いえ、それだけ私にとっても大役ですよ。

あなた方のマネージャーを任されたのは」

「木村さん、それで今日って、このあとは?」

俺が聞いた。

「事務所に戻って、打ち合わせをします。

だいたい1時間くらいですね」

「そのあとって、まだありますか?」

と、瞬が聞いた。

「いえ、今日はそれで終わりですね」

「じゃ、スタジオ使えますか?もう少しピアノ弾きたいんですけど」

「あっ、大丈夫だと思います。

狭い部屋で良ければ、ピアノだけ弾ける部屋もありますし。どこかは使えると思います」

「あ!じゃ、俺も、曲作りたいんで、どっか部屋借りれますか?」

「ピアノ使いますか?」

「どっちでもいいです。ギター弾ければ。 

マンションの部屋では弾けないので」

「あれ?桂吾さん、マンションの地下に多目的スペースってあるの知ってますか?」

「えっ?知らないです」

「あ、そうなんですね?

住人なら、ネット予約できるんですけど、防音なので、フィットネスとか運動に使ったり、カラオケなんか出来るスペースが地下にあります。

ギターだけで曲作り出来るのなら、そちらをネット予約したら便利かもしれないですよ」

と、木村さんが説明してくれた。

「そうなんですね。知らなかった。今日帰ったら、見てみます。

とりあえず、今日は瞬と一緒にやってこうかな」

「承知しました。確認しますね」




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