4-8

 午前中の雑誌と新聞社の取材は、だいたい同じような内容だった。

質問されることも。

だから、同じように答えた。 

逆に、違うこと答えたらマズいしな。


今回、両方ともインタビュー中のスナップショットくらいの撮影で衣装に着替えたりもしなかった。

俺は、今日はサングラス。

目は赤いし、腫れぼったくなっちまった。

ちゃんとした撮影じゃなくて良かった。

午後の役員面接までには、戻るかな。

取材は、予定時間よりもだいぶ早く終わった。

早めだったけど、スタジオに直行してもらった。

 

行ってみると、ちょうどRay−zarがレッスン中だった。

モニタールームで見ていていいと言われたから、聴いていた。


「やっぱし、うまいよな〜!」

悠弥が言った。

「あぁ」

「あれさ、副社長さ〜、結局Ray−zar何がいけね〜って言ってたんだっけ?」

「慢心だって話だろ?」

と、俺が言うと

「あぁ、マンシンな〜!アハハ!

イマイチわかってね〜んだよな〜!

上手は上手だけど、礼儀がなってないみたいなこと言ってたんだっけ?」

「そうじゃなくて、俺らのこと、他のバンドのことを認めることが出来ないことが慢心だって言ってたんだろ!

自信過剰でおごりがあるってことだ」

瞬がちょっとイラついた感じで言った。

「あ〜そうか!で、俺は、Ray−zarを誉めたから、誉められたんだ!

でも、マジでうまいもん!俺らより?ってのはわかんね〜けど。対等かと思うよ〜」

そうゆうところ、悠弥は素直だ。

変なライバル意識はない。

Ray−zarのレッスンが終わったから、俺らもモニタールームから出た。

 

通路で、鉢合わせになった。

「おっ!これはこれは、Realさん!俺らを偵察っすか?」

完全にヤンキーがからんでくる時の感じ。

「は?俺らが、おまえら偵察する意味ある?」

大輝がキツイ言い方をした。

カチンときたんだろうな。

「あーー?」

一触即発な感じだった。


「いや〜上手だな〜って、聴かせてもらってたよ!

おんなじ事務所に入ったんだし、仲良くしてこうぜ!俺、桂吾!名前教えて?君は?」

「れん」

「君は?」

「たいが」

「君は?」

「こたろう」

「君は?」

「しょうた」

「君は?」

「りくと」

「誰、リーダー?」

「俺」

「おっ!ギターのりくと君がリーダーね!

ボーカルのれん君。 

ベースのたいが君。

キーボードのこたろう君。

ドラムのしょうた君ね!

よろしく!

今から俺たち練習するけど、良かったら聴いてって!じゃ〜またね〜!」

そう言って、手を振って、スタジオへ入った。


「桂吾!さすがだな〜!あれ、お手本みたいなベストな対応だろ!」

龍聖が感心したように言った。

「ケンカしても意味ね〜からさ〜!」

「意外に平和主義だよな!桂吾って!」

「ってか、一瞬で名前と顔覚えたんかよ?あと、パートも!」

「あぁ、俺そうゆうの得意だから!アハハ」

「グッと心をつかんだな!」

「まぁ、そんなことどうでもいいんだけどさ!

早くやろうぜ!時間もったいねー!」


明日が、YO.I.Nのレコーディングだというので、今日はYO.I.Nだけの練習。

何回かやってみた。


「完ぺきじゃね〜!」

「録音したのを聴きて〜な〜!」


ここへ到着してから、木村さんもちょっと外しますって行っちゃったから、このスタジオの勝手がわからない。

きっと、どこかを押せば、録音できるんだろうけど、わからないから、とりあえずスマホで録音した。


それを聴いてみて感じた、

「瞬!最初のイントロのピアノソロの部分、今の倍くらいに長くしたいんだけど、どうかな?」

「倍?」

「うん。今の楽譜だと、物足りないような気がする。

そもそもライブで演奏するのを前提で作ってるから、前奏が長すぎちゃいけないと思って作ってるけど、CDにするなら、最初の部分、ピアノのインストロメンタルかってくらいにピアノソロでまず完結させたい」 

と俺が言うと、うんと頷いて、

「桂吾の言わんとしてることはわかった。

じゃ、いいよ!とりあえず、書いてみて!」

と、瞬は言った。 

「じゃ、30分くらい、俺らは休憩にするわ!」と、大輝が悠弥と出て行った。


大胆に、サビの部分から、大きくピアノソロで弾き始め、ラストに向かって小さく優しく、そして今までの最初の部分につなげる。


「龍聖の歌い出しまで、3分半。

重すぎるかな?」

「いや!確かにこれは、ライブ向きではないよ!でも、劇的にドラマチックになったと思う。

CDで聴いてくれる人が、映像も思い描けるような、そんな感じになったんじゃないか?

最初の部分に繋げる繋げ方も自然だし、歌い始めるポイントは一緒だから、龍聖も歌いやすいんじゃね〜かな。

ただ、だいぶ待たされる感じになっちゃうけど」と、瞬が龍聖を見た。

「いや!いいよ!いいと思うよ!今、聴き惚れたわ!瞬のピアノはいつまでも聴いていたいって思うもん!

前奏でこのくらいのボリューム感あっていいと思う!」

「龍聖、サンキュー!じゃさ、桂吾!何か所か、半音上げて弾きたいところあるんだけど、ちょっと聴き比べてみて。じゃ、弾くよ!」


♪〜〜〜

「と、」

♪〜〜〜

「どう?」

「あっ!あとの方が全然いい!じゃ、書き直して!」

「はいよ!」

大輝と悠弥が戻ってきた。

「どうだ?」

「できたよ!前奏3分半あるけど!」

「ながっ!」

悠弥が笑った。

「じゃ、龍聖の歌い始めのところまで、瞬やってみて」

と大輝が言った。

「了解!」

瞬が弾き始めた。

「お〜〜!!すげーいいじゃん!」

「じゃ、通しでやってみようぜ!

前奏の部分以外は、今までと一緒でいいんだな?」

「うん!一緒!」

「じゃ、またスマホで録って。瞬のタイミングで始めてくれ」

と大輝が言った。

「了解!」


7分半

録音したのを聴いてみた。


「はぁーー!!」

大輝が大きく息をはいた。

「なぁ!!超いいじゃん!!一気に深みが増したな〜!!」

と、大輝がデカイ声で言った。

「だな!」

俺も笑って答えた。

「じゃ、これで明日レコーディングしようぜ!」

「了解!俺、もう少しピアノ弾いてるわ!」 と、瞬が言った。

「俺も、楽譜の手直ししてく」

と、俺も言った。

「じゃ、俺らは、控え室行ってんな!5時から役員面接だから、45分には戻って来いよ!」

「了解!」

瞬と2人で声を合わせた。

楽譜に書き込みをして、瞬に声をかけた。

「瞬!話してもいいか?」

「あぁ、いいよ!」 

瞬は、ピアノを弾く手は止めずに答えた。

「アルバムの一曲さ〜、バイオリンとピアノだけにしたい曲があるんだけど、そうゆうのありかな?」

「ん?インストロメンタルってこと?」

「あ、ううん。じゃなくて、龍聖の歌はあるけど、演奏は俺らだけで」

「あぁ、そうゆう意味ね!

いいんじゃね!アルバムの一曲なら。

それで3人でデビューするって訳じゃないんだし。

いろんなテイストを入れてみたらいいと思うよ。とにかく、初めてなんだしさ」

「サンキュー!でさ、あのマンション、防音じゃないよな〜?」

「そうだな〜」

「バイオリン弾いたらマズいよな〜?」

「マズいな!あっ!自宅で曲作りできないってことか?」

「そうなんだよ!そのことに昨日気づいた」

「田舎と違って、騒音問題になるからな〜!

そういや、すぐ近くにカラオケあんじゃん!

あそこでやるとか。

こうやって、スタジオ使えれば借りてやるとか、なんか考えてかね〜とだな!

俺は、電子ピアノにヘッドホンつけて、音出ないようにして弾いてたりするけど」

「あっ、そうなんだ?じゃ、俺も曲作りする時、ギターじゃなくて、電子ピアノとかにしようかな〜!」

「それでいいなら、とりあえず俺のやつ貸すからさ、試しにやってみなよ!」

「ありがとう!じゃ、今夜マンション帰ったら貸して!」

「はいよ!」

♪〜〜〜〜〜〜

「さてと、そろそろ行くか?」

「あぁ」





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