3-8

 魚料理って看板に書かれてるお店に入った。

入ってすぐに大きないけすがあって、魚が泳いでいた。

半個室みたいな感じの部屋に通され、メニューを見たら、旨そうなのがいっぱいあった。

海鮮丼を食べにきたけど、海の幸てんこ盛りみたいな海鮮御膳に目移りして、2人でそれを頼んだ。


「これ、旨っ!!」

「ほんとだ!旨いな!」

と、龍聖も言った。

「長野県民、海産物好きだよな〜!海なし県で、飢えてるんだな!ハハハ」

「桂吾が、長野県民って、なんか似合わねーな!」

「そうか?でも、もう15年くらい住んでるぜ。龍聖、生まれはどこだっけ?」

「俺、神奈川。親が転勤族だったから、3年くらいで転々としてきたよ。

岡山、北海道、千葉、高知、長野。

高校からは、もう親と移動すんのやめたから、俺も長野が一番長くなったな」

「お互いに、長野にいなかったら、出会ってなかったんだな〜。

もっと言えば、大輝に誘ってもらってなかったら、みんなとバンドやることなんてできなかった。すげー出会いに感謝だよ!」

「俺は、入学式の時から、桂吾は気になってたよ!」

龍聖は、食べる手を止め、じっと俺の顔を見た。

「えっ?俺?」

「茶髪で、短ランでいかにもヤンキーって感じでさ〜!アハハ!

瞳が茶色くて、すげーキレイだな!カラコンかな?って思った」

「えっ?そんなに目立ってた?学年280人もいたのに?」

初めて聞く話で、ちょっと驚いた。

「断然、桂吾は目をひいてたよ。クラスも違ったけど、あの人なんて名前だろう?って、チェックしたもん」

えっ?

「5月だったよな。部室でみんなが顔を合わせたのって。

入ってきて、わっ!須藤桂吾だ!!って思ったもん!アハハ」

と笑った。

「アハハハハハ!フルネームかよ!

俺は、龍聖と瞬には、はじめましてって挨拶したよな」

「そう!それもびっくりした!須藤桂吾、ちゃんと挨拶できる人だったんだ!って思ったもん!」

「アハハハハハ!ひで〜な〜!そんな風に思われてたなんて、結成10年目のカミングアウトだな!

俺もその時の、龍聖は印象的だったよ。

デカっ!って思った。イケメンだな〜って。

でも、俺らのことは気に入らないんだなって、その時は思ったよ。

無表情でさ。なんか怒ってる?って。

でも、あぁ、こうゆう人なんだって、あとからわかったけど」

「アハハ。俺、だいたい第一印象悪いって言われるよ。初めての人とは喋れないし、無表情になっちゃう」

「でも、1ヶ月で慣れたな。にこって笑ってくれた」

「桂吾と悠弥のやりとりが面白くてな。まだ、声出して笑えなかったけどさ。

ふざけんな!って、いちいち瞬は怒ってたけど、そのやりとりがまた面白かった」

それを思い出して、2人で大笑いした。

「瞬は、超真面目君だったからな!

なんでこの人、軽音だよ?って思ってたよ」

「中学は、吹奏楽部で、高校でも吹奏楽に入ろうと思ってたって言ってたな。それを軽音に引っ張ってくるんだから、やっぱスゴイんだよ!大輝!人選がさ!」

「それな!とにかく、俺と悠弥、いちいち瞬に怒られてたな〜!

雑巾の絞り方は、そうじゃない!こうだ!とかさ〜!どうでもよくね〜って!

懐かしい。もう、10年前かよ!」

「10年な〜!初めて、桂吾が詞を書いてきた時、衝撃をうけたよ」

「なんの衝撃だよ?そんなに、酷かったか?」

「凄い感性だな!って。

こんなにいつもふざけてて、ヘラヘラしてんのに、すげー才能だな!って思ったよ」

えっ?

「へ〜〜。そうゆうこと、その時に言ってくれよ!」

「いや、それ言うと、調子にのると思ったからね!アハハ!」

「確かに!確かに!アハハハハハ!」

「たぶん、瞬もそうだったと思うよ。

ピアノとギターの練習量一気に増やしたからね!桂吾に危機感感じたんじゃね〜かな〜。

そう思ったね」

「へ〜!瞬は、ストイックだからな!」

「負けず嫌いだよ。まぁ、うちのバンド、みんな負けず嫌いだけどね。だから、上を目指して行けるんじゃないかな」

「いいこと言うね〜龍聖ちゃん!」

「アハハハハハ!」

「こんなに、笑うようになったし!」

「それは、桂吾の前だけだよ!」


海鮮御膳をペロッとたいらげて、追加で焼き魚とアサリの酒蒸し、バイ貝の煮たやつとかを頼んだ。

どれもこれも美味しかった。


彼女と海に来た時にも、こんな美味しい海の幸を食べれば良かった。

美味しいって笑う彼女の顔が目に浮かぶようだった。

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