2-13

 4月20、21、22日の3days。

oneの30周年の記念ライヴだそうだ。

7000人収容できるホール。


サポートギターなんて呼べるほどじゃないけど、俺は、3曲やらせてもらえることになって、その為のリハーサルを何回もやった。

会場のホールの設営のお手伝いもさせてもらえることになった。

とにかく毎日が刺激的だったし、楽しかった。

裏方さんも含め、100人以上のスタッフが係わる。

チームで作り上げていく様子を見れて、本当に勉強になった。


本来、oneのメンバーなんて、雲の上の存在で、日本からきた何の肩書きもない俺が、言葉を交わすことさえ難しい存在なんだと今ごろ気づいた。


紹介してくれたハリスにも、受け入れてくれたジョージとoneのメンバーにも感謝しなきゃ。

とりあえず、ライヴが成功するように、俺ができることを精一杯やろう。


 ここ最近、ハリスがスタジオに来る回数が増えた。

俺を心配して様子を見に来てくれてはいるんだろうけど、それを口実にジョージに会いたいのかな?とも思っていた。


「ハリス!ジョージとよりを戻せば?」

「あらっ!桂吾にそんなこと言われると思わなかったわ!」

口元に近づけたコーヒーのカップの湯気の向こうで微笑んだ。

「よりを戻すには、もう遅すぎるわね。こんな、おばさんだもの」

「そんなことないよ!ハリスは、十分魅力的だよ!

それに、ジョージだってオッサンだもん!

お互いに年とって、お互いに今1人なら、何の問題もないじゃん!」

「アハハハハ。桂吾、優しい子ね。こんな優しい子に育ててもらって、日本のおじいちゃん、おばあちゃんにマリアは感謝しなきゃいけないわね」

「話をすり替えんなよ!」

「桂吾 ありがとね。私は、今のままでいいのよ。

一ファンとして、ジョージの昔の友人として、遠くから見守ってるわ」

そう言って、コーヒーを飲み干した。


エレンが言ってたタイミングって言葉が、頭に浮かんだ。

うまく事が進むタイミング。

うまく事が進まないタイミング。

それは、当事者しかわからないことかもしれない。

でも、お互いに後悔していて、お互いに今も想い合っているのなら、うまくいってほしい。

そう思った。




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