第一章四話 追うものの正体
【まえがき】
本ページを開いて頂き、誠にありがとうございます。
今回の話にはきつい性的描写が含まれます。そういったものが大丈夫な方のみ、読み進めてください。
また、苦手な方向けに別で今回のあらすじを載せます。次のエピソードに掲載してあるので、そちらまでお進みください。
それではこの先より本編です。お楽しみいただければ幸いです。
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「ちーちゃん、寝ちゃいましたね」
少し前の演武、そして直前の袴を着用したときver.の撮影会。どれもちーちゃんには疲労が溜まること。寝ちゃっても仕方がない。まぁ、撮影会の原因は私なんだけどね。
「今日の演武は気迫が凄かったし、それだけ体力も消費してるもんね。寝かせといてあげよう」
撮影会の共犯者である栖原さんは、それ自体が無かったことのように演武だけに言及した。
この人、できる。私もちーちゃんが起きたら無かったことのようにしていたずらしよう。
「じゃあ私はそろそろ行くね。他の合気会のサポート要員頼まれてるから」
「はい。良い演武、期待してますね!」
栖原さんはそれを聞いて軽く笑いながら畳の方へ向かっていった。
演武を見ていると、同じ人が何度か演武に出ていることがある。
「一つの道場だけじゃ練習が足りない人とかが、色々な道場に顔を出して練習してたりするんだよね。私も初段の審査の前は色々なところで体動かしてたよ。それで、よく別の道場に行く人とかは演武でそっちの道場としても出ることがある。私の相手の栖原さんは色々なところに顔出してるから、私以外の相手もするんじゃないかな」
演武前にちーちゃんがそんなことを言っていた。合宿もあったりするみたいだし、結構合気会の繋がりは深いのかもしれない。
*
あの人の演武は力強い。けれど、実際力は全然入れてないように見える。例えるとしたらブレーキの壊れたダンプカーのような。けれど、どこかやじろべえのような感じもする。受けの人はそのバランス感覚に付いていっている。
あれは……腕をつかまされてる……?受けの人が掴みに行こうとするように見えない。取りの人が誘導して掴まる場所を設けている。
演武が行われる度に、畳の色が変わって見える。受け取り交代をしても変わる。見る場所によっても変わる。目まぐるしく変化していくそれらは、私に多くの情報を与えてくる。その一つ一つが流れ込んでくる。流れ込んできては、私の頭の中にかかった霧を押し流していき、より鮮明に見えるように、感じるようになっていく。違う、流れ込んでくるのではない。演武をする人の世界に引き込まれているんだ。その一点に、世界に、飲み込まれていく。そうして何人もの世界を体感した。
どの演武も凄く引き込まれる。けれど、一番好きで心地よかったのはやっぱりちーちゃんの演武だった。私自身がちーちゃんのことをよく知っていて、ちーちゃんのことを体現した、そんな演武だったからっていうのもあるんだろうけど。そうじゃなくても、ちーちゃんの演武を選んだかもしれない。
そうしてちーちゃんの演武を思い出したとき、ようやく集中力が切れた。それと同時に尿意に気が付いた。集中してるとトイレに行きたいのも忘れちゃうの、我ながら凄いと思う。
「すいません、トイレに行きたいのでちーちゃんの上体ちょっとだけ起こして貰っても良いですか?」
気が付けば私の肩を枕にして寝ていたちーちゃんの体を起こすために、ちーちゃんのお母さんに協力を求めた。一応、行く場所も言っておいた方がいいだろうと思って。
「場所はわかる?」
「はい、大丈夫です。いってきます」
立ち上がると、予想以上にトイレが近いのが分かった。小走り気味で出口まで行き、一礼してから足の回転速度を一気に上げた。
「えーっと、トイレはそこの角の所だよね……」
トイレの場所を頭の中で確認して、そちらの方向に目を向けると列が見えた。
「まさか……トイレ待ちの人?」
立っているのは全員女性であり、そのほとんどが道着だった。
今日は演武大会ということもあり人が多い。しかも女性は有段者でなくとも袴が履ける。無論、袴を脱がなければ用はたせない。さらに言えば、一つ一つが個室のため男子トイレほど数を多く設置できないのだ。それらの要因によって、武道場近くの女子トイレは大盛況となっていた。
「ほかのトイレ行かないとだめかぁ……」
口の中でそうぼやくと同時に、足先は既に別の方向へ向けていた。
とりあえず地図を見よう。ちゃんと建物の構造把握しておけばよかった……。今はそんな後悔してる場合じゃないけど!
入るときに見かけた地図を思い出して入口まで戻ってくる。そこで見つけた女子トイレは人目につかないようなところにあった。地図を見ないで館内を走り回ってたらずっと見つからなかっただろう。地図を覚えてたことが不幸中の幸いだった。
そして、猛ダッシュ。「動かすと寧ろ漏れそうになる」など言ったりもするが、今はそんなものに付き合っている暇はない。それぐらいなら早く着いた方がマシだと思うほどに切羽詰まっていた。まるで、何者かから逃げるように走る。追われているとしたらそれは尿意以外の何物でもない。
「あった!」
ようやくトイレをその眼中に捉える。しかし、安心するのはちゃんと用を足してからだ。トイレに足を踏み入れてその間取りを見たとき、すぐに安心しなかった自分を褒めたくなった。そこはトイレと更衣室の一体型だった。着替えるスペースが手前、トイレが奥といった感じでトイレまではだいぶ距離がある。実際には大した距離ではないが、心理的な距離は50m程に感じた。
50m、その距離が突如として1km先まで引き延ばされた。気付けば後ろから何者かに肩を掴まれれていた。
「ごめんね~。ちょっと待って貰えるかなぁ」
後ろを向くと道着を着た中年程の男性が私の肩を掴んでいた。
「……ここは女子トイレですよ。男性の方はお帰りください」
どうにか絞り出した声は自分でもびっくりするほど震えていた。それが恐怖と尿意、どちらによるものかを判断する分の脳のリソースは既に無く、今の状況を判断することに全て使われていた。少なくともこの男性が普通でないことだけはわかる。女子トイレに侵入し、そこにいた未成年の肩を後ろからつかむ。それだけでも手首にお縄が掛かることだ。それにも拘らず、この人の口角は上を向いていた。
「うーん、今の状況が理解できてないのかな。それとも、気が強い子なのかな?だとしたら私の好みだなぁ。ほら、気が強い子が泣き始めるのって可愛いじゃん?それに良いスタイルしてるね。どんな風に遊ぼうか?」
私が何かを言う前に、どんどん話を進めていく。しかも私で遊ぶことを大前提として。
尿意にだけ追われている、そう思っていた時が天国のように思えてきた。実際にはこんな化物に追われていたのだ。
「あなたのような人にスタイルを褒められても嬉しくありません」
出来る限り弱さを見せないように強く言い放つ。しかし、そんなことをしても何の意味もなかった。
「やっぱり気の強い子だね。いいねぇ、本当に好きなんだそういう子は。けれどお嬢ちゃん、君の脚はガクガクに震えているよ?どうしたのかな?」
私の尿意は既に限界を超え、脚が痙攣し始めていた。今は「この人の前で漏らすのだけは絶対に嫌だ」という僅かなプライドのみで耐えている。
よし、油断している今のうちに……
「きゃぁぁぁぁあっんぐ…っ…………」
私は「大声を出す」という切り札しか持っていなかった。しかしそれも瞬時に口を塞がれ、ここにいる人以外の耳に届くことはなかった。
「まったく、油断してたらこれだよ。わざわざ人目のつかないトイレを選んだ自分を恨むんだね」
私はもう睨みつける以外、なす術がなかった。それとは逆に、私自身は座り込んでしまった。
もう無理……漏れる……。けれど、この人の前だけは絶対に嫌だ!
そんな小さなプライドでどうにか手を使ってでも抑え込もうとする。しかし、その行為が目の前の男性の心を搔き立てた。
「あぁ……。座り込んだのにまだ強い目してるから何かと思ったら、おしっこが漏れそうだったのか。」
本当は最初から漏れそうなこと理解してるくせに。追いかけてたならわかるでしょう。
そう口にしようとしたが既に口にはガムテープを付けられており、まともに口を動かすことなど不可能だった。
「っ……!……~~~っ!」
代わりに口から出る音は必死に我慢している私の惨めな喘ぎ声だけ。その声が目の前にいる人物の興奮材料になるとわかっていても、それを止めることは出来なかった。
「どうする?そのまんま漏らしちゃう?それとも脱いでからにする?私はどっちも好みだなぁ。服が濡れていくのもいいし、出てきているところを見るのも好きだ。そもそも、失禁というシチュエーションが凄く好きなんだ。こう、我慢してたのに出てきちゃうって一種の萌えだよね。他には……顔にかかるのも気持ちいい気だろうなぁ。そう考えると脱がす方が良いかもしれないね。けれど私の道着が濡れると困るし、脱いでおこう。いいか、私が脱ぐまで絶対に漏らすんじゃないぞ」
既に股間に盛り上がりを付けていたこの男は、その原因を晒すべく服を脱ぎ始める。その間私は、喘ぎ声を漏らしながらも今できる最善のことを考えた。
とりあえず、服をおしっこで濡らすのは個人て
「んんっ……!」
きにしたくない。だから服は脱いじゃおう。そこは必要な犠牲だと思おう。あとはこの男がどうやって私にこの
「~~~~っっ!!」
事を喋らせないようにしてくるか、だよね。今スマ
「……んっ~~~!」
ホを取り出したところを見ると、たぶん撮影をする気でいる。その動画をどうするか、みたいな感じだ
「~っ!」
と思う。けど、この男が他の子に同じことをするのを私の動画の流出だけで止めら
「んっ……!!んん~っ!」
れる可能性がある。それなら私は犠牲になっても構わない!無事に帰れる
「んぁっ」
かはわからないけど、帰ったら即刻警察に相談す
「っ!」
る。そうしよう。
漏らしそうなことに思考を邪魔されないように、下腹部辺りの感覚は全て脊髄販社のように声に出して考えた。それを聞いている目の前の男が明らかに嬉しそうな顔をしてもそれだけで済むならお安いものだった。
「いい声をありがとうね。おかげで脱いでるだけでも退屈しなかったよ。じゃあ、早速脱がしていこ……おや、自分で脱ぐなんてとんでもない痴女だな。これは考えてもいなかった」
座り込んだ状態でどうにかパンツまで一緒に下ろす。たとえ痴女と罵られようが、服を濡らすのだけは嫌だった。
これは、ちーちゃんと一緒に買い物に行ったときに買ったものだから。それだけは穢させたくない。今がどんな屈辱だろうと、大切な友達との思い出を持ってさえいれば私は大丈夫。
そう自分に言い聞かせて私は脱いだ服をできる限り遠くへと投げやった。
「反抗的だったり、突然服を脱ぐ痴女になったり。面白い子だなぁ」
感慨深げにつぶやくと同時に、強引に私の足を開こうとしてきた。
「……自分で服を脱いでおきながら抵抗するとは、ますます意味が分からないな」
服を脱いだからといって、漏らそうなどとは微塵も考えていない。もしものことがあった時、あの服だけは汚したくなかっただけだ。
「いいかい、合気っていうのはこういうのもだよ」
そう言うと、曲げてあった膝を上から押してきた。反射でその力に反発してしまう。すると、一瞬で横方向に足が広げられた。
「人間は一方の力にしか反発できないんだ。そして、受けた力に対して反射で反発してしまう。つまり上方向から力を加えてあげれば、簡単に開くって訳だ。うん、良い陰毛の生え方じゃないか。これを閉じておくなんて勿体ないよ。それに……。我慢してて内側にきゅっとなってるその姿、凄く可愛いじゃないか」
「~~~~っ!」
やばい、もうホントに限界……っ!いや、まだ……。どうにか手で押さえて……。
体を1㎜でも動かせば漏れそうで動かせなかった手を、勇気を出して動かす。
「~っ!?」
一滴だけ出てしまったが、どうにか手で抑え込むことに成功する。
「おや、ついに出てきちゃったみたいだね」
男はまるで今が人生で一番の楽しみだと言わんばかりに声を上ずらせ、私の恥部の位置まで顔を下ろしてきた。
七月十一日 合気道演武大会のエピソード その3
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