ガチ恋していたバーチャルアイドルが顔バレしてその正体が幼馴染だったので、全力で再起の応援をします
フォトンうさぎ
第1話 バーチャルアイドルから連絡が来ました
『ほわああああああ!? なんでそれが来るのさああああああ!! プレイミスっだああああああ!!』
「ふふっ」
『……あ゛っははははははは!! あははははははは!! うぁははっ、げほっ! げほっ!』
スマホの画面に映る女の子の叫び声や笑い声がおかしくて、つい笑い声が漏れてしまった。
俺、
見ているこちらまで笑ってしまうパワフルな笑い声が特徴で、笑うたびに褐色髪がふわふわと揺れ動く。
皮ジャケットを着たクールそうに見える姿が笑い声や性格とアンバランスで、誰もが一度動画を見てみれば夢中になってしまう。
俺は暇さえあれば、隣家ゆめの動画に夢中になる日々を過ごしていた。
突然の大きな声に少しびっくりするのが難だが、趣味であるイラストを描く時の作業用BGMにもしているくらいだ。辛い箇所を描くときに彼女の笑い声は元気をくれる。
『やめてえ゛えええええ!! このぉ! 煽りゆるさねぇえ゛えええええ!!』
「うはははっ」
ネット対戦で煽りプレイをされている彼女の反応に、笑みがこぼれた。やっぱり、彼女の元気な声を聞くとこっちまで元気になってくる。貰った元気を燃料として、動画を見終わった後にファンアートを描こう。
最近はSNSに彼女のファンアートを投稿し、お礼を貰うことが癖になっている。本人からお礼を言われるのは本当に嬉しい。
『どやっ! 煽りプレイヤー倒しました! どやあああああ!!』
彼女が煽りプレイヤー相手に勝利をもぎ取った時、スマホの画面にメールの通知表示が出た。誰だ、もうそろそろ彼女の動画が終わるといういいタイミングで。
もしかするとイラストの有償依頼かもしれない。そう、俺は依頼サイトでイラストを受け持っているのだ。
俺は彼女との別れを惜しみつつ、スマホを操作してすぐにメールを確認。返信をサボって遅れてしまうと、依頼者との信頼に関わってしまうしね。見慣れたメール文面は斜め読みし、サイトにアクセスして差出人を確認する。
ふむふむ、差出人『隣家ゆめ』さん……。
「はっ?」
一度画面から目を離し、眉間を強く押してからもう一度差出人を確認する。いや、嘘だろ、おい……。
再び確認しても、差出人が『隣家ゆめ』であることに変わりはない。いや、待て。この展開は隣家ゆめの名を使った別人による依頼だろ? 期待させておいてそういうパターンなんだろ? 知ってる。
あふれ出る期待を落ち着かせ、依頼内容を確認。有償でイラストを描く際に、依頼内容を読み間違えると書き直しなんて事態に陥ってしまう。ここで調子に乗り過ぎないように注意だ。
「依頼内容、動画のサムネとして使用する画像の作成……。マジで?」
本当にあの笑い声を出すような本人なのかと思うような真面目な文章が続く。
自分の絵を描いてほしいこと、それを動画の宣伝に使用したいこと、納期の交渉、いつもイラストを楽しみにしていること……。マジか、本人だ。本人が俺に依頼してきたんだ。
震える指で画面をスクロールしていく。依頼文を最後まで読み終わった瞬間、俺の喜びはダムが崩壊するように一気に噴き出した。
文章が隣家ゆめ以外の第三者によって入力されたかなんてもうどうでもいい! 俺は心の底から喜んだ!
隣家ゆめは俺がSNSに載せたイラストに対して機械的な返事をしているんじゃなくて、喜んでそれに返事をしてくれていたことがわかった! こんなに嬉しいことがあるか!?
人気バーチャルアイドルから、直接だ。個人に直接依頼が来たんだぞ!? 公式な依頼だ!
「やっ……たぁぁぁぁあ……!」
大声を出してしまうのを抑えるのがやっとだった。ベッドに座り込んで何度も片手でガッツポーズを作り、目をぎゅっと強くつぶる。天にも昇る気持ちというのはこのことだろう。
というところで、スマホが今度はSMSの着信を知らせる。人が喜んでいる時によく届くな……。開いてみれば、そのメールは隣に住んでいる幼馴染、『
内容は、今週末の放課後に勉強を教えてほしいとのこと。そんな暇はないんだけどな……。だけど、よく笑って楽しむ可愛い幼馴染の頼みだ。無下に断るわけにもいかないよな。
幼馴染の友香は隣家ゆめと同じように、一緒にいると元気が出るというタイプだ。
おそらくその元気さと活発さが作用して、友人と一緒に勉強してもついつい皆で遊ぶという方向に気持ちが向いていってしまうんだろう。それをセーブして一緒に勉強できるのは俺くらい。
イラストを早く描いてしまいたいけど、可愛い幼馴染の頼みとなってはしょうがない。
友香に『OK。金曜日の放課後に俺の家で。土日は予定があるので無しで』と返事を返し、俺はすぐ机に置いてあるPCへ向かう。
友香に時間を取られてしまうから、なるべく早い内にイラストを描いてしまわなければならない。
隣家ゆめからの初仕事。意気込んだ俺は噛り付くようにPCに向かい、力の入った手でペンを掴むのだった。
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