LESSON*6 土曜日
「いつまで寝てるの」
「……きょーすけ?」
土曜日。
なぜか恭介に起こされる。
「おばさんに、起こしてくれって頼まれたのよ」
「なるほど」
スマホをみると、昼の12時を過ぎたところだった。
昨日、なかなか寝付けなかったからなあ。
その原因である恭介は、いつもどおりに見える。
よかった。
「顔、洗ってきなさいよ」
「はーい」
恭介を待たせると怖いので、急いで階下に行き、洗顔する。
「
「はいはい」
恭介信者の母に適当に返事をしながら、適当に朝食をつまむ。
ていねいにコーヒーを入れて、いそいで部屋に戻った。
「今日は、全身脱毛するわよ」
コーヒーを飲み終えた恭介が、レディースシェーバーを手に、宣言した。
「全身?」
「パジャマを脱ぎなさい」
「え!?」
「なに?」
不機嫌そうな恭介の声に、自分が大声を出したことに気づく。
いや、その、反論したわけではなく。
「ちょっと、恥ずかしいというか」
「これでも抱いて、
恭介が、私の顔にクッションを押しつける。
「はやく」
恭介を怒らせると怖いので、後ろを向いて、パジャマを脱ぐ。
キャミとショーツとクッションだけとは、なんとも防御力が低い。
あごでベッドを示されたので、おとなしく座る。
恭介は、私の腕、わき、足とシェーバーを滑らせていく。
その手つきは、まったくいやらしさを感じない。
まるでエステティシャンだ。
そういえば恭介って、女友達枠だっけ……。
自意識過剰だったかも。
恭介が、ふと顔を上げた。
「アンダーヘアの手入れはしているの?」
サラッと聞かれ、素直に答える。
「まったくです」
「でしょうね。寝転がって、片足を立てて」
そういうと、私の体を押した。
え? と思う間もなく、背中がベッドに沈む。
恭介が、ショーツのクロッチ部分を指でずらす。
さすがに恥ずかしく、起きあがろうとしたが、身動きがとれない。
「動くんじゃないわよ」
「え、きょ」
「血を見たくなければね」
私の
シェーバーの電子音が響く。
恭介は皮膚を指で伸ばしながら、丁寧にシェーバーをあてていく。
恭介のことは信用しているが、急所に刃物を当てるのは、少しこわい。
それから、小刻みに振動するシェーバーの動きに、おなかがむずむずとしてきて、なんだかおかしい。
きわどい場所を見られていると思うと、頭が
だきしめたクッションがつぶれるほど、力を込めた。
「ぬるぬるして、
「ひんっ!」
恭介の指が、ショーツの中に侵入してきて、割れ目をなぞった。
へんな声が出たにもかかわらず、恭介は、何も言わない。
いつもなら、すぐにディスられるのに。
「そんなかわいい声、出して」
「……きょー、ちゃん?」
なぜか、『恭介』と呼ぶのがためらわれ、『きょーちゃん』と口が動く。
『きょーちゃん』と呼ばないと、大変なことになるような気がした。
何が、とか、わからなかったけど。
「『女友達』の名前を選ぶほど、危機感を感じたのなら、正解」
恭介が、私の腕からクッションを
色素の薄い瞳から、目を
「でも
かすれた声は、どこか苦しそうで、どこか嬉しそうに聞こえた。
「ようやく俺を、男として見たな」
そっと触れるだけのキスをされる。
真剣に見つめてくる茶色の瞳に、心臓が飛び跳ねた。
「志摩のクソ野郎でもいいなら、俺なら大歓迎ってことだろ」
不敵に笑う恭介は、いつもの自信たっぷりな彼だ。
やっぱり恭介は、そのほうが似合う。
フッと、笑みがこぼれた。
「なんか文句あるか?」
「……ないよ」
その返事に、恭介は破顔する。
晴れ晴れとした笑みで、いきなり私を抱きしめた。
「よっしゃー!! 有紗、おまえはもう俺のものだ! もう我慢も遠慮もしないから!」
「んん? それって、どういう」
恭介の手が背中にまわり、とたんに呼吸が楽になる。
胸がひやりと外気にさらされ、ブラのホックを外されたことに気付いた。
恭介が、センスのいいシャツを、無造作に脱ぎ捨てる。
がっしりとした男の体に、目が釘付けになる。
「いいな?
おおいかぶさってきた恭介は、誰よりも男らしくて、かっこよかった。
その衝撃と長年のクセがあいまって、私は知らない間に、コクリとうなずいていた。
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