2 サキュバス


「会長?」


会長--生徒会長【夢先(ゆめさき)カヌレ】。

彼女が、僕の部屋で、エッチなコスプレ姿で寝ている……?

コスプレ……見た目は『悪魔』かな?

頭に二本のツノを生やし、先端がハート型ヒョロリとした尻尾。

胸元なんかドーン開いてて、その下品さが素晴らしい。

このコンセプトは、まるで--


「ぅぅん……」


と。

会長が寝苦しそうに身をよじって……パチリ。

目を覚ました。

ボーーーーーーーーー

数秒間、天井を見つめ、コテンと頭を横にし、僕を見た。


「………………え?」


目を見開く会長。


「ウカノ、君?」

「カヌレ会長、だよね?」

「え、あの、その……アッッッ!?」


彼女は自身の格好に気付くと、バッと手で胸元を隠す。

短いスカートから白のパンツが見えてるのにはまだ気付いてない。


「会長、なんで僕の部屋に」



「か、会長じゃないよ!!」



「……ん?」


顔を真っ赤にしてそう叫ぶ会長(仮)。


「か、会長とか知らないっ。誰かと勘違いしてない?」

「でも、声も同じで」

「に、似たような声の人なんて一杯居るから!」


なら何故そこまで焦るのだろう。


「じゃあ、君は一体?」

「え、ええっと……」


キョロキョロと辺りを見渡した少女は、テーブルの上にある【きら◯日常系四コマ漫画】に目を止めると、「そ、そう!」と顔を上げ、


「ま、魔族だよ!」


なんて、言い放った。


「……成る程」


僕は肯き、


「サキュバスかい?」

「……え? サキュ?」


耳馴染みの無い呼ばれ方なのだろうか。


「悪魔の一種だよ。魔族と同じカテゴリーなのかは分からないけどね。夢魔ともいって、人の夢に入り込む悪魔なんだ」

「そ、そう! それそれ!」

「じゃあ、僕の名前を知ってたのも、部屋に侵入出来たのも、悪魔パワー?」

「そうだよ! な、納得してくれた……?」

「うん」

「するんだ……」


どこか腑に落ちない顔のサキュバスちゃん。


「因みに、お名前は?」

「え? え、えーっとねぇ……じゃあ【アンドナ】で」


じゃあ?

言い方が気になったが、まぁいいや。


「いい名前だね、好きな響きだ」

「そ、そう? (照れ)」


僕の好きなアンドーナツっぽいし。

僕ァ苺大福だのクリームあんみつだの、和と洋のコラボ感スイーツが大好きなのだ。

アンドーナツに限っては、今も『テーブルの上』にあるし。

ここで、僕はようやく、手に持っていたコンビニ袋を床に置いて、


「なんか食べる? ゼリーとかあるよ」

「え? じゃ、じゃあ、貰おっか、な?」


フルーツゼリーとプラスプーンを渡し、


--さて、そろそろ本題だ。

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