異世界転生のテンプレートに従って。

タコ君

第1話 まずは様式美。



 異世界転生。


 それは妄想しがちな年頃の心を持つ者が、一回くらいは憧れる夢の世界。


 僕だって憧れることくらいはした、だけれども僕は異世界転生モノのライトノベル……というかそもそもライトノベルを読んだことなんてあっただろうかいやないっ。とにかくとにかく異世界には縁がない男であった。




________ハズだった。




 異世界転生モノのライトノベル、読んだことは無くともネットを触れたら情報くらい入ってくるものだ。トラックかなんかに轢かれて突き飛ばされ死んだと思ったらよくわからない世界に飛ばされ現世の知識や異世界固有のシステムを味方につけて活躍をする_____。五億回くらい見た。



ま、轢かれたんですけどね。


 今日も帰ったらゲームしてクソして飯食ってひっくり返えるだけだと思っていたらこれだ、すっげぇ痛かった、

「あー死んだ死んだぜってぇ死んだもう知らん」と、思ったが死んでいない。びっくり。



 異世界転生モノのライトノベル、読んだことは無くともネットを触れたら情報くらい入ってくるものだ。大体中世くらいの世界観で、魔法とかそういうファンタジーなものが機械の代わりをしていたりするもんで、神とかそういうのがうっじゃうじゃいる魔境。______五億回くらい見た。



ま、目の前に神のおっさん居るんですけどね。


「死んだねお主。」


「軽いっすね」


「まぁあるあるだし。」


「あるあるなんすね」


「うむ。」


「僕どうすればいいんです?死んどく?」


「これ以上死人増やすと最近増えてる自殺者とかその辺と現世の人間の生まれる数合わなくなっちゃうから死んじゃダメ。だけど魂って間髪入れずに同じ世界で使うと疲弊しちゃうからクールタイムが要るわけ、だから異世界行ってらっしゃい。」


「ありがとうございま~す」


「待って。」


「なんすか」


「ここ行くならコレあげる。」


「なんすかこれ」


「のり」


「のりィ!?」


「うん、のり。海苔じゃないよ糊の方ね」


「のり…のり……のりねぇ…」


「しょうがないじゃん、渡せる能力って数が決まってるの。火とか水とかレベルアップ機能とかスライムとか命令出すのとか色々あるけどもう出払っちゃってさ?だから残り物で悪いんだけどさ、のり。」



 貰ったのはのり、糊。工作とかに使えるのりだ。これを自由に生み出したりするのが僕の能力になるんだそうだ。中継点の神ってこんなに軽いおっさんなのかと僕は迷ったが、こんなもんなんだろう。



 異世界転生モノのライトノベル、読んだことは無くともネットを触れたら情報くらい入ってくるものだ。この後はなんかTUEEEEEEEEして行くものだったと思う。確かね。あいにく知識はスマホで調べた時に一番上に出てくるサイトから得られる知識だけだ。



ま、どうにかなるでしょう。














____________________



「で、なんなんだお前?」


「ですからなんなんだと言われましても…」



 どうにかならなかった、神も降ろす場所を考えて欲しいものだ。目の前の兵士は所謂プレートアーマーを着ているし、見渡せばレンガの壁やら石の壁やらという感じでここは何処かの王国かなんかの城か砦と言った所であろう。



「なんなんだと言われましても、じゃないだろう。ほらもっと何か~ほら、あれだ、自分の国で取った身分証明書とか、ギルド商業課の通行手形とか、無いの?無かったら帰って貰わないと困るんだよ」


「こっちも気付いたらここに居たんです、好きでこんなところ居ませんよ。」


「あ~…そう、もっと早く言えよ……」


 3回くらいもう言ってたんだけどね。



 どうやら彼処は小さな砦だったらしく、兵士に摘ままれ開けた場所へ抜けるとこれまた小さな町があった。馬っぽい生物が荷を引き通り過ぎて行った。これからどうしてやろうか、と考える暇の無いのが如何にもそれっぽい世界だ。言っておいてやるかテンプレート。



____ここは、何処なんだ。

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