第26話『八十神と手間山の赤猪』


誤訳怪訳日本の神話・26

『八十神と手間山の赤猪』    






 末の弟のオオナムチに兄弟全部の荷物を背負わせた八十神たちは意気揚々とヤガミヒメの家に着きました。



 八十神たちの面白いところは、末の弟オオナムチを団結してイジメますが、自分たちは仲たがいはしません。


 というか、没個性的な神々で、一人一人の描写がありません。もし、マンガかアニメにすると顔がノッペラボーのモブキャラになるでしょう。


 八十神を目の前にしてヤガミヒメはにこやかに宣言します。


「……ということですので、わたくしヤガミヒメは、あなたたち八十神の荷物を背負ってやってくるオオナムチの妻になります。悪しからず(^▽^)/」


「「「「「「「「「「「「「そ、そんなあ(;゚Д゚)!」」」」」」」」」」」」」


 オオナムチをイジメたことに弁護の余地は無いのですが、八十人まとめてコケにされるのは、ちょっと気の毒。


 八十人も居るのですから、中には多少はオオナムチに同情的な者もいたのかもしれませんが、十把一絡げにされます。


 記紀神話にはモブキャラがいっぱい出てきますが、高天原の神たちは名前の付いている者が結構いて、天岩戸の下りは個性的な神々が一杯いて、描写が生き生きとしています。それに比べて、いくら悪役とは言え個性無さすぎな感じがします。


 いっそ八十という名前の一人の神であったほうがスッキリします。西條八十という古関裕而の相棒だった作詞家もいたではありませんか。


 とりあえず、八十神の十把一絡げにこだわります。


 世の中は、この十把一絡げに満ちております。


 たとえば『日本人』といいう十把一絡げ。昔は眼鏡をかけた反っ歯で、どこに行くにもカメラを首からぶら下げているオッサンというイメージでした。日本人を説得するには「みなさん、そうなさっています」と囁けばいいと言われておりました。


 オタクと言えば、自分の趣味やテリトリーのことは人の都合も考えずに口角泡飛ばすくせに、オタク以外の話には聞く耳を持たないキショク悪い奴らという括りで、たいていは運動オンチなブ男、たまに女子がいるとBL専門の腐女子なんぞと言われたり描写されたりします。


 学校の先生というと、みんな日教組で偏向教育ばかりやっていて、独身率が高くて、C国やK国の味方ばかりしていて朝日新聞の読者という括り方をされます。


 大阪人なら、みんな声が大きくて、吉本みたいなギャグをとばしてばかりで、阪神ファンでたこ焼きばかり食っているやつら。


 ……考えたら、このサンプルに挙げた属性に、わたしは全て含まれます(^_^;)。


 

 とにかく、ヤガミヒメは、そう言い放って、八十神全員を袖にしてオオナムチを婿に迎えることにします。



 プリプリ怒ってかシオシオとうな垂れてかは分かりませんが、八十神たちは帰り道に、やっと追いついたオオナムチに出会って、こんな意地悪を言います。


「よう、俺たち、これから帰るとこなんだけどよ、途中の伯耆の国の手間山(てまやま)ってとこによ、赤い猪が出てくるっていうんだわ。家の土産にしたいから、おまえ先に行って掴まえとけ」


 どこまでも兄たちに従順なオオナムチは、疑問にも思わず(こういう馬鹿正直なところに白兎はイラっとくるんでしょうねえ)手間山に向かいます。


 さて、赤猪はどこにいるんだろうと様子を窺っていますと、山の上から何かが駆け下りてくる音がします。


 ドドドドドドドドド!


「来た! 赤猪来たああああああああ!」


 オオナムチは健気にも両手を広げ、関取ががっぷりと四つに取り組む姿勢で赤猪を受け止めます。



 ジュウウウウウウウウウウウ!



 なんと、赤猪は真っ赤に焼けた大岩だったのです。


 というか、先回りした八十神たちが大岩を真っ赤に焼いて待ち受けていたのです。


 オオナムチは大岩を離すこともできずに、全身大やけどで焼け死んでしまいました(-_-;)。



 つづく


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