第16話『天岩戸(あまのいわと)を開く!』 


誤訳怪訳日本の神話・16

『天岩戸(あまのいわと)を開く!』 






 天の安河原の会議のつづきからです。




 高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の息子である思金神(オモイカネノカミ)が提案します。


「どうだろう、天照大神よりも偉い神さまにやってきてもらうというのは?」


 なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? 


 一同息をのみます。


「バカなこと言うなよ、アマテラスさまは最高神であられるのだ、アマテラスさま以上に偉い神さまなんているわけねえだろーが」


「一芝居うつんだよ。じつはな……かくかくしかじか」


 プランを述べるオモイカネ。


 テレビのヤラセ番組のようなことを言いますが、日ごろから思慮深い知恵者として有名なことが幸いしたのか、一同は賛成することになります。


    




 まず常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集めて鳴かせます。


 いかめしい名前ですが常世長鳴鳥とはニワトリのことであります。


 夜明け直前にコケコッコーと鳴くニワトリは「太陽を呼んでくる目出度い鳥」ということになっています。


 のち、五世紀ごろに作られた前方後円墳の前方部と後円部の境目にはニワトリの埴輪がよく置かれています。


 前方後円墳の主体は墓地である後円部にあります。前方部は会葬者のためのスペースです。


 だから、後円部の方が尊いので前方部の方が高くなっています。前方部は会葬者が儀式がよく見えるように、末広がりになって、後ろに行くにしたがって高くなっています。劇場の構造に似てますね。


 後円部に大王などの被葬者が埋葬され、埋葬した夜は跡継ぎの皇太子や皇子が守をします。


 一晩被葬者の守をしたあと、夜明けとともに後円部から降りてきて帝位や族長の地位を継いだことを宣言します。


 つまり、ニワトリの埴輪が置いてあるところが、黄泉の国と常世の結界になっており、ニワトリが日の出を招くことになぞらえているのです。つまりつまり、夜と朝の境目を超えて新天皇や族長の権威の再生を現わしているのです。


 身も蓋もなく言えば、ニワトリが鳴いたことで夜明けが来たぞ=アマテラスに代わる新しい太陽神が来たというフェイクをかますわけですなあ。


 しかし、ニワトリはきっかけに過ぎません。あれ? ニワトリが鳴いた? とアマテラス「あれ?」と思わせるだけです。


 そこで、神さまたちはヤラセの大宴会を催します。


 天宇受売命(アメノウズメノミコト)がお立ち台に立って舞い踊ります。


 ヤラセとは言え、本当にエンジョイして楽しくならなければフェイクであるとアマテラスにバレてしまいます。


 アメノウズメは日本で最初のストリップをいたします。


 神懸(かみがか)りして裳の紐を陰(ほと)に垂らしまして……古事記にあります。


 トランス状態になって、着物の紐を解いて陰(ほと)とありますから、えと……エロゲでなければ表現できないようなところまで下ろして……つまりストリップであります。


 それを見て、神さまたちはノリノリになったわけであります。


 この大宴会の中には男神だけではなく女神もおりました。今の時代に女性も参加する宴会でやったら完全にセクハラをとられます。日本では男女共々大らかであった時代があったのですね。


 まあ、本気でお楽しみの大宴会を催したんですなあ。自分たちが本気でなければ騙せません。


 その甲斐あって、いったい何事か? アマテラスは岩戸をちょっとだけ開いて様子を見ます。


 それに気づいたウズメが猥褻物陳列の姿のままでお立ち台から岩戸にジャンプ!


「あんたよりマブくて尊い神樣がおいでになるんでよろしくやってんのよ!」と、かまします!


「な、なんと!?」


 すかさずアメノコヤネの命とフトダマの命とが、鏡をさし出してアマテラスの前に掲げます。


「な、なに、なによ、このイカシた女は!? めっちゃ美人過ぎるんですけどおおお!!」


 アマテラスが動揺したところを、天手力男神(タヂカラヲノカミ)が引っ張り出して、天岩戸はしめ縄を張ってもどれなくします。


「ま、その、あ、あんたたちが、それほど言うなら(#^_^#)、言うならあ、戻ってあげなくもない……かな?」


 ということで、高天原にも地上にも光が戻ってくるのでありました。




 ちなみに天宇受売命は芸能や芸能人の神さまに、天手力男神は相撲取りの神さまになりました。

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