第15話『天岩戸(あまのいわと)』


誤訳怪訳日本の神話・15

『天岩戸(あまのいわと)』   





 日本史上はじめての引きこもりです。



 スサノオの乱暴にブチギレたアマテラスは天岩戸に引きこもり、固く入り口を閉ざしてしまいます。


 やってられっかあああああああああ!!


 すごい怒りで岩戸を閉ざします。現代の引きこもりのような湿っぽさは微塵もありません。いじけた様子もありません。


 湿っぽくいじけたようになってしまったのは、岩戸の外の世界です。


 なんといっても、アマテラスは名前の如く太陽神で、それが隠れてしまったのですから世の中は真っ暗です。


 疫病や天変地異の災いが頻発し、高天原でさえ院隠滅滅のありさまです。




 こういう危機的な状況には英雄が現れ、艱難辛苦の果て、多大な犠牲を払った上で解決します。RPGで勇者や姫騎士、魔導士などが活躍するパターンですね。危機的状況=英雄出現フラグであります。


 ところが、記紀神話では困じ果てた神さまたちが天の安河原(あめのやすのかわら)に大集合して対策会議を始めます。


 なんとも日本的な景色ですなあ。和を以て貴しとなすであります。


 日本は緊急事態になった場合、往々にして出足が遅れます。和を以て貴しとなすために容易に結論が出ません。時間がかかり審議審議で時間ばかりがたって、ようやく決まった時には時間遅れだったり、変化した状況にあわず失敗することもあります。頭のいい奴が「これでいこう!」と提案しても「前例に無い」「共通理解に至らない」とかで却下されてしまいます。欧米的に「そいつにかけてみよう!」には、なかなかなりません。従ってドラマにもRPGにもなりません。


 東日本大震災のおり、いち早く米軍が救援の手を挙げて『ミッショントモダチ』で助けてくれたのは記憶にも残っていると思います。


 阪神淡路大震災のときも米軍は神戸沖に空母を派遣して物資輸送やヘリコプターの展開の拠点にしようと提案しましたが、時の政府はあっさりと断っています。会議と情報収集の繰り返しに時間がとられ、本格的な救援活動はあくる日にずれ込んだという体たらくでした。


 しかし、いったん話し合いで結論を出し行動にうつすと世界に類のない力を発揮します。


 万博やオリンピックなどの国家的なプロジェクトが概ね上手くいったのは、そういう国民性の現れなのでしょう。


 近代国家には学校教育が不可欠!


 そう決まると、一心不乱に制度と学校を作り、二十年もかからずに世界に冠たる義務教育とそれ以上のハードとソフトを整えてしまいました。


 例えば、国内の小中高の学校でプールの無い学校はありません。


 これは、世界的には非常に珍しいことなのですが、昭和何年だったかに、水泳教育は必須であるということに決まり、決めたことによって、予算化され設置計画が立てられ、きわめて短時日の間に成し遂げてしまうのです。


 横道に入り過ぎました、次回は天の安河原の会議と天岩戸解放作戦の中身に触れたいと思います。





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