第7話『ヨモツヒラサカ 女は怖い! その②黄泉醜女』
誤訳怪訳 日本の神話・7
『ヨモツヒラサカ 女は怖い! その②黄泉醜女 』
石室の中のイザナミの腐り様は簡単に言えばゾンビですなあ。
神さまのゾンビなので、体のあちこちに雷が付いて稲妻が走っていて、キモイというよりは危険であります。
「見たなあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「イ、イザナミ……(;'∀')」
「あれだけ覗いちゃいけないって言ったのにいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ゾンビを相手に話し合いもなにもあったものではないので、イザナギはひたすら逃げます。
イザナミは黄泉軍(よもついくさ=死の世界の軍隊)と黄泉醜女(よもつしこめ=死の世界のブス)たちに追いかけさせます。
まあ、ゾンビの大群です。
ちなみに、ここに出てくる黄泉醜女は、日本の文献史上初のブスであります。
このくだりの主題は、とても恐ろしいものが追いかけてくるということです。今の時代ならゾンビとかゴジラになりますが、記紀神話の昔では女であります。
女は怖いというメッセージの他に、女は強いというメッセージがあるように思います。
日本は、他のアジア諸国に比べ女性の力が強かった……と言うと疑問に思われるでしょうか?
話が逸れるようですが、夫婦別姓から考えてみたいと思います。
結婚して女性の苗字が変わるのは差別だと言う考えがあります。その論拠に「中国や朝鮮半島では夫婦別姓だぞ!」というご意見があります。
たしかに姓だけを考えれば別姓なので、中国や半島の方が進んでいるように思えますが、事実は真逆です。
中国や半島の古代では、女性は結婚しても、極端な言い方「家族とは認められない」のです。だから姓は変えられないのです。
日本では鎌倉時代あたりまでは女性の相続権が認められていました。荘園や領地の相続に女性が名を連ねていることもありました。
昔は「三下り半」で、女は離婚させられたという言い方がされますが、これも逆の言い方ができます。
男は離婚する場合「三下り半」を女性に渡さなければならなかったという方が実際であったように思います。
もちろん、今の時代から比べると女性の地位が低かったのは事実です。
が、その時代の世界的な状況の中で見ると、女性の地位は高かったように思います。幕末にやってきたペリーなどの外国人たちも「他のアジア諸国に比べると女性の地位が高い」と評しています。
「三下り半」に戻ります。
「三下り半」を出す男は、女性に相応の財産分与をしなければなりませんでした。また、三下り半があれば、きちんと離婚したということで、その後女性は再婚することができます。
つまり、離婚するにあたっては、男も、それなりのことを女性にしてやって、その後の女性の自由を保証する、そのシルシが「三下り半」であったわけです。
一言で言えば「昔の日本は、それほどひどくはなかった」ということと「女性は、けっこう元気だった」ということであります。
日本の中世までは「うわなりうち」というものがありました。
亭主の浮気が分かった時、正妻は浮気相手の住まいまで行ってボコボコにする権利がありました。
歴史上有名なものでは源頼朝があげられます。頼朝の浮気を知った北条政子は武装して侍女たちを引き連れ「うわなりうち」をかけ、家をむちゃくちゃに壊しただけでなく、女を鎌倉から追放、頼朝はなにも反論できませんし、社会も「政子が正しい」と判断しました。
だから、イザナギを追いかけるのは黄泉醜女たちなのです。黄泉軍は最初に出てくるだけで、イザナギの逃走中は黄泉醜女ばっかりです。
足の速さだけでは黄泉醜女からは逃げられません。
この、イザナミとヨモツシコメの恐ろしさは、アニメの『ノラガミARAGOTO』に今風にうまく描かれています。
イザナギは三つのマジックを使って逃げおおします。マジックフライトと言いますが、次項で触れたいと思います。
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