(仮題)天高く、馬落ちる恋
HR
第1話 天の馬と春の香り
彼は普通の一軒家に住んでいる普通の高校二年生だ。
両親は仕事が忙しく、家に帰る事は殆どない。
一年に一度帰ってくればイイ方である。
彼の名は=安藤 天馬=。
彼が通う都立光華高校。
五月…何とも風が気持ちいい季節である。
今日もイツモの如く登校していると空から鳥のフンが天馬の制服に落ちる。
天馬 「ゲッ…。(空を見上げて)あの鳥…何か俺にウラミでもあんのかよ…。」
ソコを運悪く、友達の=大空 大地=に見られていた…。
大地 「くぷぷぷぷ…。」(必死で笑いを堪えている)
天馬 「だ…大地…。」(しまったという顔をして)
大地 「ぷ…ぷぷ…。」(後ずさりしながら)
天馬 「ま…待てよ大地…。」
大地 「爆笑必至!!」(ダッシュで学校へと向かう)
天馬 「待てやコラァァァァ~~~ッ!!」(慌てておいかける)
暫く追いかけるが異様に足が速い大地に追いつけずに立ち止まる。
天馬 「吐きそう…。」(ゼェゼェ言っている)
千枝 「朝から大騒ぎですね…天馬センパイ。」
天馬 「(顔を上げる)ち…千枝ちゃん。」
この女生徒は=紅葉 千枝=。
一年生で、天馬が所属する部活(演劇部)の後輩である。
天馬 「み…見てた?」
千枝 「ハイ。バッチリ。」
天馬 「お願いだから誰にも言わないで…。」
千枝 「私が言わなくても…。」
天馬 「忘れてたっ!ち…千枝ちゃんまた後で!!」(走り去る)
千枝 「部活で!!」(天馬の背中に声をかける)
そして天馬が教室に入る頃には学校中にウワサが広まっていた…。
そして…ウワサにありがちな、話が大きくなるという現象も起こっていた…。
男A 「知ってるか?A組の安藤天馬。コレで三日連続でフン当てられたらしいぜ?」
女A 「ねぇねぇ、A組の安藤って人、制服に鳥からフンひっかけられて上を向いたら今度は顔にひっかけられたらしいよ。」
男B 「むしろ安藤は喜んでるらしいぜ?」
教師A 「オイシイ奴だな。」
こんな具合である。
そのウワサは、天馬が密かに想いをよせる、三年の=藤沢 春香=の耳にも当然入っていた。
天馬 「オイ大地…。」
大地 「ひぇぇぇえ!!」
天馬 「テメェどんだけ広めたんだ?」
大地 「イヤ…ちょっと言ったら…。」
天馬 「ウソつけよ!俺、さっき『フンを見れば何の鳥のフンか分かるらしいな』とか 意味不明な事言われたんだぞ!?」
大地 「そ…そう熱くならないで…。」
天馬 「今日という今日は許さないからな。」
大地 「俺達『天地』の仲じゃん♪」
天馬 「勝手にオマエがそう呼んでるだけだろうが!」
雅美 「おーい。安藤~。」
天地 「んだよ!」
雅美 「なに勝手にキレてんの?一年の紅葉ってコが来てるよ?」
大地 「ホラホラ!お客さんだよ!」
天馬 「おぼえとけよ…。」(千枝のもとへ)
千枝 「天馬センパイ。」
天馬 「どした?」
千枝 「部活…行きますよね?」
天馬 「今日は何も予定ないからね。」
千枝 「一緒に行きましょ♪」
天馬 「あぁ、もう部活が始まる時間だっけか。」
そして二人は並んで活動場所の資料室へと歩き出す。
演劇部は通常の活動は資料室で行い、演劇の予行演習等で体育館を使う。
とは言っても、最近では大会に出る事はほとんど無く、資料室も単なる溜まり場と化している。
天馬がこの部活を選んだのも、サボリやすいというのもあったからである。
この光華高校は全生徒が必ず何かの部活に所属しなければならないのである。
千枝 「センパイ…部活…ツマラナイですか?」
天馬 「何で?」
千枝 「だってセンパイ…あんまり来ないから…。」
天馬 「そうかな。」
千枝 「私は楽しいですよ。」
天馬 「それが何よりだね。」
千枝 「ハイ。」
そして二人は資料室へと入っていく。
天馬 「チワーッス。」
千枝 「こんにちわ。」
信人 「おう。」
優子 「今日は私と千石センパイ二人だけかと思ったわよ…。」
天馬 「春香センパイは?」
信人 「さぁ。そのうち来るだろ。」
天馬 「真弓は?」
優子 「いくら私と真弓がクラスメイトだからって、イチイチ行動を把握してるワケないでしょ?」
天馬 「コリャ失礼。」
暫く話していると春香がやって来る。
春香 「ゴメーン…遅くなっちゃって…。」
信人 「まぁ遅くとも早くとも活動らしい活動は無いんだけどな。」
優子 「それ言っちゃオシマイでしょ…。」
春香 「天馬君…聞いたわよ?」
天馬 「な…何をっスか?」
春香 「今日鳥にフンひっかけられて、アタマに来て鳥めがけて石を投げたら真上に投げたもんで自分に当たってタンコブ出来たんだって?」
天馬 「ち…違いますよ!クソ…大地絶対許さないからな…。」
春香 「あれ?そう聞いたけどなぁ…。」
天馬 「た…確かに…フンはひっかけられましたけど…。そんだけです。」
春香 「ホントにぃ~?」
天馬 「ホ…ホントです!」
暫くしていると全員揃った。
しかし、例によって活動らしい活動は何も無く、ただ喋っていた。
そして、それぞれは帰宅した…。
千枝 「ねぇ陽子…。」(帰り道)
陽子 「なぁに?」
千枝 「天馬センパイってさぁ…。」
陽子 「『カッコいいよねぇ~』でしょ。」
千枝 「う…。」
陽子 「もう聞き飽きたわよ。」
千枝 「えへへへ…。」
陽子 「ったく…。ドコがそんなにイイんだか。」
千枝 「教えてあげよっか?」
陽子 「結構です。長くなるから。」
千枝 「ちぇ…。」
陽子 「でも、何回も言ってるけどさぁ…。」
千枝 「分かってる。天馬センパイは春香センパイの事が好きだって。」
陽子 「ソレでもイイわけ?」
千枝 「見てるだけで幸せなのよ。」
陽子 「…。」
千枝 「ココに入学して初めて会ったハズなのに、そんな気がしないのよねぇ…。」
陽子 「はいはい。」
千枝 「なによ。」
陽子 「でも、こうは考えないの?」
千枝 「?」
陽子 「春香センパイよりも自分に惚れさせようって。」
千枝 「ムリムリ。だって春香センパイってアタマもいいし、綺麗だし。私なんか敵わないよ。」
陽子 「ソコだけかしら?」
千枝 「何が?」
陽子 「天馬センパイ…。春香センパイのソコだけに惚れてるワケじゃなさそうなんだけどなぁ…。」
千枝 「…。」
一方天馬は…。
天馬 「…明日は…どんなウワサになってんだろ…。大地…絶対許さないからな!」
彼等の恋のハナシは始まったばかり。
人が人に恋をする。
自分も人ならば相手も人。
その多種多様な心模様がどんなストーリーを産み出すのだろうか…。
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