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過去と現在、時空を超えたチーム編成についての話を聞きながら歩いていると、二人はいつの間にか重右衛門の長屋に来ていた。気が付けば、丁度、彼の家の近くだ。折角なので秀之進の顔でも見ていこうということになる。そして玄関先まで来てみると、中からなにやら威勢の良い男の声が漏れ伝わって来るではないか。その声を聞いて、何処かで聞いたことがあるような気がした菊乃が、不信に思いながら引き戸を開けると・・・。
「おぅ、お菊! どこほっつき歩いていやがった!?」
いきなり怒鳴られて、お菊は首をすくめた。
「お、お父さ・・・ おとっつぁん、何してんのさ、ここで?」目を丸くした菊乃が、慌てて江戸言葉に戻す。
「何言ってやがる! 一人娘が行方知れずになってんだ。家で黙って指くわえて待ってろってか? 冗談言っちゃいけねぇや!」
確かに心配させたに違いない。それは申し訳なく思う。
「ごめんよ、おとっつぁん。心配かけちまったね・・・」
「あったりめぇじゃねぇか。俺ぁもう心配で心配で・・・」
史人は涙を堪えるかのように拳で目を擦った、と思ったらいきなり顔を上げた。
「こうして秀坊と楽しくやってたってわけよ! なぁ、秀坊! がははは」
「はい。楽しかったでございます」
相変わらずおちゃらけた父親だ。照れ隠しのつもりなのだろうが、こちらが真面目になればなるほど相手を茶化す。それは判っているのだが、毎度のことで・・・。こちらの機嫌が悪い時など、首を絞めてやろうかと思うほどに腹立たしい。
「あぁそうですか。そりゃ良かったわね・・・」
時には、殺意が芽生えることも有ると言っておくべきだろうか。ため息交じりの菊乃に、秀之進がはち切れそうな笑顔で言う。
「お姉ちゃんのお父上が、お菓子の作り方を沢山教えてくれました。大変ためになりました」
「えぇっ、本当に? ゴメンね。教えてくれって私が頼まれていたのにさ」
しかし、そこに割って入った史人が会話の主導権を強奪しゆく。
「おぅ、秀坊。誰かさんとは違って、お前はスジがイイぞ。この分なら商いをやっても、成功間違いなしだ」
「本当でございますか?」
「あぁ、この俺が保証するさ」
「はいはい、スジが悪うございますよ~だ」
祖父と孫のような二人が仲良くやっている姿を見て心が和んだが、菊乃は改めて感じていた。この裏稼業、やはり楽しいことばかりではないのだということを。我々がやっているのは、命の受け渡しなのだということを。
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