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重右衛門が秀之進の待つ自宅に向かって問屋街を歩いていると、数間ほどの距離を保ちつつ、それを追う者の姿が有った。それは町人風の風情で帯刀はしておらず、着物の裾の後ろの部分を帯の中にたくし上げた、いわゆる尻はしょりの身軽な格好をした男だ。曲がり角や
程なくして例の追っ手も路地に進入する。しかし男がその先に見たものは、板塀によって遮られた袋小路だ。しかもそこに重右衛門の姿は見当たらず、突然の侵入者に驚いた野良猫が、ピョンと塀の上へと跳び上がる姿のみであった。
「!!!」
慌てて振り返った男は、直ぐ背後に立つ重右衛門の存在を認めた。しかもその手は既に腰の刀に添えられており、重右衛門にその気さえ有れば、とうの昔に斬り捨てられていたことを物語っていた。
「しれ者め。俺がそこもと(お前)の稚拙な追跡を察知できぬとでも思ったか?」
「うぐっ・・・ くそっ」
「聞こう。何者だ? そして
そう言って鯉口を切る(
追い詰められた男は「うぁーーーっ!」と大声を発したかと思うと、脇に立てかけてあった木材や竹材をバタバタと重右衛門に向かって押し倒す。さすがの重右衛門も、この意表を突く反撃を予期してはおらず思わず退いた格好だが、それは二人が抜き打ちの間合いから外れたことを意味し、距離を取ることに成功した追っ手に有利な状況を作り上げた。しかも
ガラガラガラ・・・
「くっ、くそっ・・・」
両腕を使って、
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